仁王立ちミルク

コンビニの年齢確認で激昂する高齢者がいると耳にする。

たしかに、明らかに未成年とは思えない外見で実際にお年を召している方々にとってみれば、おかしなルールだと言われるのも無理はないかもしれない。

ただし、万が一、というものがある。

未成年に酒やタバコやブラックコーヒーを販売してしまうと、それが店側の責任になり得るのだから、万全を期す意味で確認を取るのは間違ったことではない。

何にせよ、激昂するだなんてのは行き過ぎなのであろう。(歳を取ると脳の機能が衰えて感情を抑制しにくくなるとも言うが…)

そんなことを考えながら、ワシはコンビニに到着した。

ワシはコーヒーが飲みたい気分だった。

入店するなり一直線にレジの前へ、そして仁王立ち。

そしてまぶたを閉じ、そのまま店員さんに話しかけた。

「……………………い。」

キョトンとする店員さん。

「…はい?」

ワシはここで、カッと目を見開く!

「コーヒーが飲みたい気分なのでここに来ましたからコーヒーをください!」

「あ、はい、コーヒーですね。39,800円になります。」

ワシはお金を差し出した。

このコンビニは店員さんがコーヒーを入れてくれるタイプの店だ。

できあがるのを待っていると、店員さんが言った。

「ミルクとお砂糖はお入れしましょうか?」

「ワッ…ワシが…」

「ワシが!ミルクと砂糖を入れないタイプの人間にでも見えるというのか!?おい!貴様!!」

ワシは激昂した。

「えっ!い、いえ、そういうことではございません!念のため全てのお客様にお尋ねしておりまして…」

「クソみたいな言い訳をするな!!ワシはクソみたいな言い訳をする奴が割ときらい!」

「すみません、すぐにミルクと砂糖を入れますのでどうかご勘弁を!」

「まったく。わかったらさっさと入れろ!ミルクと牛乳を…満タンだ!!」

「えと、ミルクと…」

「砂糖だわ。」

ワシは甘いコーヒーを手に入れ、コンビニを出ようとした。

しかし、別のレジから老人の怒鳴り声が聞こえてきた。

「おい!どう見ても未成年なわけなかろうが!くだらんマニュアル対応ばっかりするなよ小僧!」

どうやら未成年確認に対して老人がキレているらしい。

ワシは、やれやれと老人に歩み寄り、買ったばかりのコーヒーを老人の頭に注いだ。

「うわぁ!あぢぢぢぢぢぢ!」

慌てふためいている老人にワシは言った。

「なぁじいさん。店員さんの事情も考えろや。お前さんがやってることは甘くて熱いコーヒーを頭から飲もうとしてんのと同じことだ、ちったぁ落ち着けや。」

ワシはそう言うと、「どういう意味?」という老人の言葉を背に退店した。


相手の立場になって物事を考えること、思いやり。

それが現代人には欠如している。

悲しいけどそれが現状。

ワシは次の一手を考える。

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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。