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#2 高IQのテスト結果に号泣す。

テストの後に、推定のIQが告げらた。

テストを担当してくださった臨床心理士に、アンダーアチーバーという言葉の意味などを説明してもらった。高いIQが学校の成績には結び付かなかったことについて「本来持っている脳の機能をうまく使いこなせずに空回りしていたのかもしれませんね」という言葉に、私が幼少期から感じていた感覚を端的に言語化してくれたと感心した。

ちなみに「アンダーアチーバー」とは、簡単に言うと「本来出せるはずの成果を出せていない人」という意味。逆に、能力以上の成果を出せた人をオーバーアチーバーというらしい。小学校高学年以降の成績に高いIQはほとんど反映されていなかった私は、見事なまでに絵に描いたようなアンダーアチーバーだった。



検査をした部屋を出る前から、私は激しい動揺からすでに半分泣き出していた。



その動揺にはいくつかの理由があった。


・「私が長年抱いてきた疑念や感覚は、ただの思い込みではなかった」と証明されたこと。

・そして45年もの間誰にも理解してもらえなかった脳みそが空回りをしているようなあの感覚を端的に言語化されたこと。世の中には、この状態を理解できる人がいることへの驚き。

・ずっと抱えてきたこの苦しみには理由があり、きちんと説明できるものだったという安堵、解放感。

・しかし、どうして私の周りには、その能力に気付かず、むしろ抑え込み自信を奪い、芽を摘むような人しかいなかったのかという疑問や怒り、悲しみ。

・人と何かが違うという孤独感から逃れるために「普通」を求めて必死に人に合わせてきたが、努力してどうにかなるものではなく、これからもその違いは埋まることはないという事実。

・人に合わせて普通になることも、自分が興味を持っていたことに突き進み突き抜けることもできず、どちらにも振り切れなかったことの悔しさ。

・「45歳の今になってそんなことを言われても、いったいここから何ができるのか」という思い。




とにかく色々な感情が入り混じり、それと同時に過去のたくさんの出来事や思い出が蘇ってきた。

多くの思い出は、「私がおかしいから、頭が悪いから」というフィルターを元にした解釈による記憶だったのだが、そうではなかったという新たな切り口からの理解が頭や心のレベルで自動的に開始され、駐車場の車に乗り込んだ私は溢れ出たその波にすっかりのまれ、涙を止められなくなっていた。


また、大多数の人たちの「普通」からはズレているという意味では、「私はおかしい(=人と違う)」という理解の仕方はあながち間違いではないなとも思った。そのズレが数字を持って証明されたことで、どう頑張ったところでどうにも埋められないギャップがあるという事実にあらためて傷ついた。



車の中では、経験したことがない猛烈なスピードで頭の中が回転していた。


ありとあらゆる時代の苦い思い出と、その時の辛さや惨めさなど様々な感情が一気に頭の中に噴出し、それらに対して今までとは異なる切り口から新たな解釈が生まれ、理解し、腑に落としていくという作業。45年分のそれらが一気に同時進行で新しい理解に書き換えられていき、新たな引き出しに片付けられていく。

自分の意思を超えて自動運転のようにその作業は行われ、私自身はそのスピードと情報量と付随して思い出される感情に圧倒された。頭の中は勝手に整理されていくが、整理を必要とする45年分の情報や味わってきた苦しみはいくらでもあり、その作業が終わることはあるのだろうかと気が遠くなり、私はただその様子を眺めて、溢れてくる感情を涙で流していくことしかできなかった。


その圧倒的なスピードのおかげか、その駐車場から車で5分のところにある喫茶店に到着する頃には、母親に具体例を挙げて説明をするのに必要な情報量は整理されて揃っていた。

ただ、心や気持ちはそのスピードに追いつかず、ひたすらに涙が流れ続けた。



第1話

第3話


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