見出し画像

おまもり

12月は、年末年始の帰省計画を立てたり、転職活動をしたりしていたので、ちょっと疲れてしまった。
悩んだけれど、結局帰省はしないことにした。この時期の飛行機代はとんでもなく高い上に、実家で心をボロボロにされるのが今年の私には許せなかったからだ。それから、無事に転職が決まったので、それまでは自分の心に波風を立たせたくないという思いがあった。

帰省しない旨を母親にLINEすると、もちろん怒られたし失望された。すぐに電話がかかってきて、40分ほど怒鳴られた。恋人がちょうどお風呂に入っているタイミングだったので聞かれずに済んでよかったが、電話を切った後の私の顔を見て「どうしたの」と心配していた。話さなければならない時までは親のことは黙っているつもりだったけれど、今がそれかもと諦めて、かいつまんで話した。

彼はびっくりしていたし、一緒に悲しんでくれた。でもやっぱり取り扱いに困っている様子だった。私は彼を困らせてはいけないと思い、話したことを後悔した。
「うちの母はたしかにおかしいところがあるけれど、決して私が嫌いなわけではないと思うの」
とか、わけのわからない弁解をした。
ただ、自分が人間関係において認知のゆがみがあること、変わりたいけどどういうふうに変われば良いかわからなくて模索していること、ここ数年特に悩みが大きくなっていること、だから実家とはなるべく距離を置きたいことは伝えておきたかったので、理解してもらえるようお願いした。

彼は
「自分の気持ちを一番に考えていいんだよ。やりたいことをやればいいし、やりたくないことはやらなくていい」
と言ってくれたので、正直に
「本当は、帰省したくない」
と言った。
「よくできました。今年は帰省しなくてもいいと思うよ」
という言葉をもらった。

私は、親の意思に反することをするのは大変勇気がいるので、実は今でもびくびくしている。でも、誰のための人生なんだと思った時、私は自分のための人生にしたいと思った。自分と、自分の大切な人を愛する人生にしたい。
人生の最期、あたたかなベッドの中で思い出すのは、愛する人と一緒に笑っている自分でありたい。

「こんなに良い子に育ってるのに、お母さんは何が心配なんだろうね」
と彼が言った。一緒に生活をし始めてまだそんなに日は経っていないので真実味は薄いけれど、私は嬉しかった。内心、
「内面を知っている母曰く私は悪い子らしいし、彼の前では外面を取り繕っているだけではないだろうか」
と思った。でも、彼がその時そう思ってくれたのならば、それで良いのではいかと思いこむようになった。


今日からは彼の言葉をお守りとして胸にしまっておくことにする。きっとそれはたまに取り出して眺める宝石のように、きらきらと輝いて私を喜ばせてくれるだろう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?