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『敵は、本能寺にあり!』

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“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。 戦国最大のミステリー“本能寺の変”の『真実』と、信長の隠し子が辿る戦乱の世の悲しき運命……。 幾つ屍を越えようとも、歩む道の先には骸の山が…
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#伝五

『敵は、本能寺にあり!』 第三十一話『夢幻の蝶』

『敵は、本能寺にあり!』 第三十一話『夢幻の蝶』

「実は……」と言い掛けた伝五に、皆は息を呑み待った。先程から明らかに怪訝しい彼の様子に、誰もが気付いている。

「……帰蝶様から頼まれ、松姫殿を武蔵国の金照庵へと逃がしました。信忠様の側室 寿々様への焦りは感じるものの、戦に於いての恨みなどは露ほども。
ただ……、その、護衛に付いておられるのは、――鳳蝶様にございます」

「何!? 帰蝶様は、その事を御存知なのか……!?」
皆から責められる覚悟をも

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『敵は、本能寺にあり!』 第三十話『冴え昇る月に掛かれる浮雲の』

『敵は、本能寺にあり!』 第三十話『冴え昇る月に掛かれる浮雲の』

 譜代家臣 佐久間――筆頭家老にまで登り詰めた男の零落は、家臣団の心に『明日は我が身』との激しい動揺を誘った。

 彼は光秀や秀吉の献身の裏、天王寺砦の城番という立場にありながら本願寺に対し戦も調略もせず、また信長に報告や相談すらもせず、五年もの時を怠惰に過ごした。
ところが窮地に陥ると縋り付き、信長の蓄積された怒りが爆発。
『苦しい立場になって初めて連絡を寄越し尽力の素振りを見せるのは、甚だ言い

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『敵は、本能寺にあり!』第二十九話『末吹き払へ四方の春風』

『敵は、本能寺にあり!』第二十九話『末吹き払へ四方の春風』

 ―本能寺の変、三ヶ月前―

 伝五、左馬助、利三は光秀に呼ばれ、丹波亀山城を訪れていた――。

「見事な枝垂れ梅。大層雅やかですな」
縁側の左馬助が満面の笑みで、庭に咲き誇る梅の花を見渡す。

「二条新御所は如何でございましたか」
勘の良い伝五は、二条新御所から戻った光秀が直ぐに皆を集めた事に、何となく不穏な空気を感じ取っていた。

「誠仁親王殿下は、信長様について『どのような官でも任ぜられる』

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