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『敵は、本能寺にあり!』

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“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。 戦国最大のミステリー“本能寺の変”の『真実』と、信長の隠し子が辿る戦乱の世の悲しき運命……。 幾つ屍を越えようとも、歩む道の先には骸の山が…
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#可成

『敵は、本能寺にあり!』 【最終章『黒幕と真相』】 第二十一話『忠誠の陽の蜂、月に舞う蝶』

『敵は、本能寺にあり!』 【最終章『黒幕と真相』】 第二十一話『忠誠の陽の蜂、月に舞う蝶』

 岐阜城を離れ、琵琶湖の東畔に新しく築いた安土城へ発つ日――。

 家督を継ぎ岐阜城主となった信忠へ、信長は大切にしてきた愛刀 “星切の太刀”を贈る。
秘蔵の名刀は金銀を散りばめた太刀拵えが輝き、凛々しい信忠に良く映えた。

「なんとまぁ立派なお姿――。母の誇りにございます」
養母となり信忠を育て上げた帰蝶の瞳に、精悍な愛息が滲む。
帰蝶は美濃・尾張の統治を任された信忠の側近に、自身の弟 利治を付

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『敵は、本能寺にあり!』 第十二話『天魔が来たりて……』

『敵は、本能寺にあり!』 第十二話『天魔が来たりて……』

 勝家を信長のもとへ走らせるよう手筈を整えた可成は、交通の要所である坂本の街道を封鎖。浅井・朝倉の進軍を妨害する策に出た。
しかし、続々と届く悲報に愕然とする――。

「坂本に進軍して来た浅井・朝倉の兵は、およそ三万かと」

「止まらぬか……。このまま奴等が摂津へ向かえば、信長様が挟み撃ちに遭う。…………。
否、――しかし、『戦に勝るかどうかと、兵力は必ずしも比例せぬ』……これは信長様のお言葉じゃ

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『敵は、本能寺にあり!』 第十話『怯者の裏切り』

 ―1570年―
 将軍 義昭の亡命を手助けしたにも拘わらず、己の緩慢により見限られてしまった越前の朝倉家は、着々と名を揚げる信長に焦っていた。
そして隣国 若狭の属国化を狙い、若狭大名 元明を拉致。傀儡として間接支配を遂げる――。

 だが、元明は“将軍の甥”……。幽閉された過去が重なる義昭は、甥の境遇を不憫に思い、又も信長を頼るのだった。

 結局、元明救出を引き受けてしまう信長に、家臣 可

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『敵は、本能寺にあり!』 第八話『月の掩蔽』

『敵は、本能寺にあり!』 第八話『月の掩蔽』

 上洛戦の労を慰撫する宴が、東寺で催された。
丹念に手入れされた庭園を眺むれば、真朱の粧いを凝らす楓が彩り、月の光に照らされた瓢箪池の水鏡には、五重塔が揺れる。
そんな美しく心和む雰囲気に皆、赤く染まった頬を緩める中、家臣 勝家だけは不服顔を崩さない。

「将軍 義昭様からの『副将軍に任命したい』との申し出を、信長様は何故断られたのですか!」
酒の力を借りて詰め寄る勝家を、信長は冷静に諭す。
「権

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『敵は、本能寺にあり!』 第七話『戦巧者の将たる器』

『敵は、本能寺にあり!』 第七話『戦巧者の将たる器』

 ―1568年―
 極めて迅速な動きをみせる信長は、動座僅か二ヶ月で、将軍候補 義昭を奉じ上洛戦を開始する――。

 岐阜城を出立し関ケ原を越え、湖東、湖南、山科を抜ければ京だ。
しかし湖東には、信長の上洛を妨害したい六角氏が陣取る。
信長軍は同盟国 三河の家康と、妹 お市が嫁いだ北近江の浅井を援軍に付け、総勢六万の軍勢で攻戦に入った。

 出陣前の軍評定で信長は、六角氏が持つ安土の山城の内、本城

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