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『敵は、本能寺にあり!』

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“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。 戦国最大のミステリー“本能寺の変”の『真実』と、信長の隠し子が辿る戦乱の世の悲しき運命……。 幾つ屍を越えようとも、歩む道の先には骸の山が…
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『敵は、本能寺にあり!』 第五話『墨染の君』

『敵は、本能寺にあり!』 第五話『墨染の君』

 吉乃は産後の肥立ちが悪く、若くして帰らぬ人となった。
そして信長から発せられた願いに、帰蝶は耳を疑う。
「帰蝶、遺された三人の子の、母となってはくれぬか」……と。

「何故私が――。何故私が吉乃の子の? 鳳蝶をこの腕に抱けぬ私が……」

「すまぬが、もう……、 鳳蝶は星になったと思っ――」

 ――!!
帰蝶の腕が空を舞い、信長の左頬を強く平手打つ。
唖然とする夫を、燃やし尽くすほど血に焼けた目

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『敵は、本能寺にあり!』 第四話『氷塊の心胆』

『敵は、本能寺にあり!』 第四話『氷塊の心胆』

 鳳蝶が伝五と甲賀の惣国に発って数日後――。
信長は帰蝶を迎えに、湖北へと馬を走らせた。

 二人は成菩提院の境内で、赤や黄に染まる紅葉の下を暫し散策しては、静かに言葉を交わす。

「鳳蝶は息災に暮らしているでしょうか……」

「あぁ、健やかに過ごしておるはずじゃ」

 何の根拠もない慰めが、帰蝶の心を騒つかせる。
「……。鳳蝶との別れの日、どうして来てくださらなかったのですか」

「光秀に任せて

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