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『敵は、本能寺にあり!』

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“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。 戦国最大のミステリー“本能寺の変”の『真実』と、信長の隠し子が辿る戦乱の世の悲しき運命……。 幾つ屍を越えようとも、歩む道の先には骸の山が…
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2023年4月の記事一覧

『敵は、本能寺にあり!』 第三話『隠密の子』

『敵は、本能寺にあり!』 第三話『隠密の子』

「帰蝶様、その後お加減はいかがですか」
家臣の伝五と共に訪ねてきた光秀は、帰蝶の前に土産の干し柿や蒸かし芋を並べ、ふっくら丸々とした赤ん坊と彼女を交互に、優しい眼差しで見遣った。

「ええ、まずまずです」

「あれから信長様は――」

「それはもう大層お喜びで。『鼻は儂に似ておるの、目は帰蝶かの』と、いつまでも腕に抱いておいででした。『吾子とはこれ程可愛いものか』と目を細められ。『名は鳳蝶じゃ』と

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『敵は、本能寺にあり!』 第二話『愛し子の岨道』

『敵は、本能寺にあり!』 第二話『愛し子の岨道』

 事の発端は、三年前に遡る――。

 ―1553年―
 父が他界し、一年後――。
冬枯れの山に小さな春が訪れる頃、鹿狩りを楽しんでいた信長の背に向け、突如矢が迫る。

「――!! 信長様――!」
平手は咄嗟に、矢の前に飛び出した。

 ――?!

「じいっ――! おいっ! しっかりしろ!!」
自身の背後で倒れた平手を慌てて抱きかかえる信長を、平手は虚な目で見上げる。
そして身を挺して守った愛しき若

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