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北欧発の家具ブランドinnovatorが教えてくれること。

liloの古谷です。


今回は、北欧発の家具ブランドinnovator(イノベーター)の思想をご紹介しつつ、今、大量生産大量消費の世の中において本当に大切なものとは何なのか考えていきたいと思います。

イノベーターとの出会いは私の両親がイノベーターの家具が好きで、インテリアにイノベーターの家具たちをチョイスしているところにあります。
30年近くが経っても現役で生活に寄り添ってくれている家具達が生まれてくるところの思想は私にたくさんのことを教えてくれています。その一部をご紹介できればと思います。

スウェーデン発の家具ブランド、innovator(イノベーター)とは。

“北欧家具”といえばシンプルで優しく、そして機能的なデザインが特徴です。日照時間の短い北欧の人々にとって家の中の時間はかけがえのないもので、暮らしの中に心地良さを提供してくれます。

そんな北欧はスウェーデンで1969年、イノベーターは生まれました。

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引用:https://metrocs.jp/item/4305/

ヨハン・ホルトとヤン・ドランガーという二人の若いデザイナーによって立ち上げられたイノベーターですが、創立の翌年、”スタンスチェア”という椅子を開発し、一躍脚光を浴びます。
このスタンスチェアが、今までの家具の概念を大きく変える名作となるのです。

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引用:http://clips.kite.ne.jp/innovator/
超名作、スタンスチェアです。芯がありつつ柔らかい座り心地の素晴らしい椅子です。一般の椅子より少し幅が狭く、持ち運びも便利です。


それまでの良い家具とは重厚感があり、置物のようにそこに鎮座しているという価値観でした。現在でもそうなのですが、リビングと食卓と外にそれぞれ別の椅子を用意して楽しんでいました。
しかし、ヨハン・ホルトは”リビングでくつろぎ、気が向けば外に運び出して効率的に楽しむことができる椅子”という彼自身が欲しいと思った椅子を開発します。

単一機能=豊かさの象徴という価値観を、一つのものに複数機能を持たせることで、合理的かつ効率的に楽しもうという提案を椅子を通じて行って行ったのです。

そして、イノベーターのものづくりのもう一つの特筆すべき点は世界に先駆けた環境配慮を行っていた点です。
1960年代はベトナム戦争の泥沼化や中国文化大革命など、激動の時代でした。そこから、反戦運動が広がりヒッピーカルチャーの流行など、新しい価値観が広まっていきました。
世界経済が上向いていく中で大量生産大量消費が広まり、各国で環境を顧みない生産による環境問題が表面化してきた時期に差し掛かります。
その中で、イノベーターはいち早く環境配慮型のものづくりを一貫して行いました。
その動き出しは、単にリサイクル素材を使用したり、セカンドハンド品の販売というものではなく、非常に本質的なものでした。


1. カバーリングシステムの導入。
それまでのソファーや椅子の張り替えは高価で、専門の技師によってなされていました。しかし、イノベーターは全てのファブリック製の製品をファスナーで簡単に脱着が可能な仕組みを導入。
気軽に色を変えたり、素材を変えることができ、長く愛用できるものを作りました。もちろん全てウォッシャブルで、独特のハリのある生地を使用しています。

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引用:http://home.e-catv.ne.jp/kiss/innovator.htm
名作balluff(バルーフ)です。ファスナーで脱着可能かつ、様々な色展開で着せ替えを楽しめます。"ジーンズのハートをもつ家具"というキャッチコピーが有名で、カジュアルにインテリアを楽しもうというイノベーターの思いを感じます。

2. 何回でも組み立てられる機構の採用。(ノックダウン)

組み立て式の家具は一度組み立てたら分解するのは困難です。しかし、イノベーターの家具は最小点数の部品から構成されていて、全て非常に簡単に分解が可能です。これは、スタンスチェアの哲学がとても強く息づいていて、
分解し持ち運び、また組み付けることでどこでも楽しむことができました。そして、しっかりとした作りとは裏腹に非常に軽量に仕上がっていて、大きなソファでも女性が軽々持ち上げられるような仕上がりです。

3.  手頃な価格と組み替えが可能。
極限までシンプルなデザインと脱着可能な各部によって低価格を実現。また、人数によって組み替えられるユニットタイプのソファなど、家族の人数に合わせて自由に買い換えることなくサイズを変えることができます。

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赤ちゃんの時の私とballuffです。この時は3人掛けソファとして繋げて使っていましたが、今は分解し2つはリビングに、1つは歯磨き用のソファとして洗面の近くに居ます。30年近く経ちますが、全くへたらず、沈み込み過ぎない本当に良いソファです。

環境に配慮した素材を使うことは前提で、生活を楽しむ道具としてどのようなことが大切なのか。ただ売れれば良いだけではなく、お客様の元で長く愛されることで、環境にアプローチするという非常に素晴らしい思想を持っているブランドです。


その哲学は今も息づいていて、発売から50年余りが経過したスタンスチェアの替え部品は今もずっと提供し続けられています。

innovatorの精神が教えてくれること

そんなイノベーターには、創業当時から大切にされている精神があります。
既成概念にとらわれることなく、常に自分らしいライフスタイルを創造する。」というものです。

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イノベーターの第一作目スタンスチェアは創業者ヨハン・ホルトが自分が本当に欲しいと思った椅子を形にしたものでした。
それは今までの家具は重厚なものという既成概念にとらわれず、真に自分が欲しいと思ったものを極限までこだわって作ったというものです。

この既成概念にとらわれないという感覚こそ、情報が大量に押し寄せてくる現代社会ではとても大切なのではないかと強く感じます。

現代社会では、様々なものが溢れ、私を買うとこんなに良いことがあるよ!とアピールをしてきます。しかもそれは、街を歩いていると強く感じるように、たいていは相手の方から歩み寄ってくるものです。
駅の広告やアドトラック、スマートフォンで調べ物をしている時ですら、常に広告が視界のどこかに存在している状態です。
その中で、真に自分が欲しいと思ったものではなく、あれ?必要な気がしてきた。。。という流れで購買行動を起こしている場合があるのではないでしょうか。
ものをお金によって評価しお金によって生活が可能になっている現代では、それは当然のことなのですが、それが行き過ぎてしまい真に自分が必要としているものが見えなくなってしまっていることが多々あるのではないかと感じます。

そんな世の中だからこそ、既成概念にとらわれることなく、常に自分らしいライフスタイルを創造するという精神を一本自分の中に立てることの大切さを痛感します。

夏目漱石が著書の中に”私の個人主義”というものがあります。
第一次世界大戦勃発直後に学習院大学などで講演を行ったものを編纂したものなのですが、西欧化が流行している時代背景で、”西欧の人が良いと言ったから良い”という他人本意な価値観が広まっていた日本で、西欧人の価値観に流されずに自分の意見を臆することなく表現することの大切さを説いている章があります。


これを”自己本位”だと彼は話しているのですが、この自己本位的な考え方は行き過ぎてしまうと今でいう自己中になり、権力の乱用につながると警鐘を鳴らします。
そこでどうするべきなのか。一つの答えとして、他人の自己本位も尊重するべきだと続けます。人は他人と関わって初めて自分という人格を確認できる、社会性の動物だからこそ、他人を尊重し理解することで初めて自分の個性を尊重されるというのです。

イノベーターの思想とmixして考えてみると、他人が作った既成概念にリスペクトを持って自分と照らし合わせる。そうすることで、真に自分が欲しいものや、やりたいことが見えてくるのではないかと考えられます。

イノベーターの精神に私は感動し、実家においてある家具たちを使うたびに、この家具達が私に色々なことを教えてくれているんだなと感じます。
そんな素晴らしいイノベーターの家具たちをぜひ、家具選びの一考に加えてみてはいかがでしょうか。


私がデザインを担当しているliloは、滋賀県信楽で生まれた土でできたダッチオーブンです。食の本質的な喜びと日本の手仕事の素晴らしい技術を日用の道具として日々何気なく感じていただきたいという思いから、こだわり抜いて製作しました。
下記リンクより、ぜひご覧ください。

https://li-lo.jp/


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