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拝啓、まっしろな毛玉のきみへ

きみが我が家にやってきて、今日でちょうど一か月になりました。
もう随分と前からうちにいる気がします。一か月前より体が大きくなり、歯も生えそろってきましたね。心なしか、そのまっしろな毛もモフモフしてきた気がします。

きみが生まれたのは岐阜県の田舎町、私たち夫婦の友人の実家の庭先だと聞いています。君と同じくまっしろなお母さんは、きっとわかっていたのでしょう。この家なら自分の子猫を保護してくれる、と。普段は空き家のその家に、飼い猫を伴った友人が、東京からたまたま帰省していたのですから。

だんだん寒くなってくる秋口に、きみはほかの3匹の白い兄弟と、この世に生を受けました。きみはお母さんのおっぱいを独占するくらい、たくましい子だったと聞いています。そして、きみは兄弟の中でも特に腕白でいたずらっ子でした。おまけに、甘えん坊の兄弟たちと比べて、比較的なつきにくい子だったそうですね。隙あらば膝に乗ってきて、ゴロゴロと猫エンジンを吹かす今の姿からは、全然想像できませんけどね。

4匹のまっしろな子たちは、徐々に里親が見つかっていきました。1匹は近所のおばさんが、もう1匹も近所に住む友人のいとこが、そしてもう1匹は友人がそのまま飼うことになりました。ですが、なかなかきみの里親が見つかりませんでした。どうしようかと途方に暮れて、友人がダメもとで相談してきたのが私たち夫婦でした。

きみを引き取るために、予定していた引っ越しのスケジュールを数か月早め、ペット可の賃貸を探しました。でも、実はなかなか物件が見つからず、友人には並行して岐阜での里親探しを続けてもらっていました。そしてやっと、12月に引っ越しのめどが立ち、きみは正式に我が家に来ることが決まりました。

1月、きみは初めて会ったおじさんに連れられて、東京までの長旅を耐えなければいけないことになりました。おじさんはしばらく岐阜に滞在し、きみと仲良くなりました。3か月を共に過ごしてきたお姉さん猫と兄弟と、離れて過ごす練習もしました。でも、東京へ行く日、きみはたくさん鳴いて嫌がっていたそうです。おじさんは、やっぱり連れて行くのはやめてお前がこのまま引き取ってくれ、と喉まで出かかった言葉を飲みこみました。

バスに揺られ、新幹線に乗って、きみは東京の家にやってきました。鳴き疲れて眠っていたきみは、到着するなりすぐに部屋の中を探検し始めたので、本当にたくましい子だと思いました。最初こそ、兄弟を探すそぶりを見せていましたが、ストレスで体調を崩すこともなく、おじさんと私はほっとしましたよ。

それからひと月、いたずらの神様から取って名付けられたきみは、ますますたくましく、そして甘えん坊さんに成長しました。おまけに、どうやらとってもお喋りさんです。帰宅したりお風呂から出てくると待ち構えていて、ニャーウと長く鳴きます。遊んでほしい時や抱っこしてほしい時はギャーと押しの強い鳴き方ですね。大好きな猫じゃらしを出してもらうと嬉しそうに高い声でキャーンと鳴いて飛びつきます。私たち夫婦が話していると、ニャウと絶妙な合いの手を打ってきます。そしてウンチの後は、ごきげんなゴロニャンがトイレから聞こえてきます。

キッチンペーパーで作ったボールで遊んで、ゲーセンで取ったニョロニョロのぬいぐるみを蹴り蹴りして、ヒーターの横のクッションでお昼寝するきみが大好きです。お日様のにおいがするモフモフなお腹も、偶にグルーミングができていなくて黄色くなっている長いお尻尾も、小さなクリームパンのお手々も大好きです。

うちに来てくれてありがとう。
どうか、これからも健やかに、長く穏やかで安心して暮らせますように。

#エッセイ #日常 #猫 #ペット #猫のいるしあわせ #夫婦

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