初恋の相手に、思い切ってメッセージしてみた
私の初恋の相手は、保育園から一緒だったM君。
背が高くてスポーツ万能、頭もよくて明るくて、学年1の人気者だった。
いっぽう私は、大人しくてあまり目立たない小学生だった。
そんな私にも、M君は気さくに声をかけてくれた。
*
忘れられない思い出がある。
小学校3年生の、夏休みのある日のこと。
私は母に買ってもらったノースリーブのワンピースを着て、友達のうちに遊びにでかけた。
この、”ノースリーブのワンピース”は当時の私にはとても恥ずかしかった。
いつもズボンがキュロットスカートしかはかない私に、”ノースリーブのワンピース”はあまりに女子力が高すぎたのだ。
「友達以外には誰とも会いたくないな」と思いながら歩いていると、横断歩道の向こう側にM君が歩いてくるのが見えた。
よりによって、なんでこの日に!と思った。
信号が変わり、M君とすれ違う。
「星野じゃん!よおっ!」
せっかく声をかけてくれたのに、私は恥ずかしさのあまりに下を向いてすたたたーと通り過ぎてしまったのだ。
そのあとも、M君とはまともに話をすることがなく、小学校を卒業した。
*
月日は流れ、私は2児を育てる母になった。
子育てしていると、悩みは尽きない。
どうしたら、この子の能力を伸ばしてあげられるんだろう?
この子が素直にのびのびと生きていくためには、どうしたらいいんだろう?
ふと、M君のことを思い出した。
明るくて、素直で、のびのびと毎日を送っているように見えたM君。
M君はなんであんなに「なんでもできたんだろう?」「誰とでも分け隔てなく、明るく接することができたんだろう?」
沸いた疑問が私の頭をぐるぐる回る。
そうだ、M君に直接聞いてみたらどうだろう?
FaceBookの友だちの友だちに、M君がいるのはずっと前から知っていた。
でも、自分からメッセージするなんて絶対ありえないと思っていた。
「星野?だれ、それ?ごめん、覚えてない」
なんて言われたら、ショックで寝込むかもしれない。
・・・20代、独身のころの私だったらそうだった。
でも今は違う。
結婚もして、こどもも二人産んだ。
肝が据わって、多少図太くもなってきた。
「覚えてない」って言われてもいいや。メッセージしてみよう。
*
そんな風に意気込んでみたものの、2,3日経っても、私はやっぱりメッセージできないでいた。
昔同級生だったとはいえ、仲良くもなかった人から、急にメッセージがくるなんてなんか怪しい。なにかの勧誘か?・・・なんて思われるかもしれない。
そもそも、FaceBook見てないかもしれないし。
そう、見てないかもしれないのだ。そう思ったら急に気持ちが軽くなって、ピッと送ってしまった。
「保育園、小学校で一緒だった星野です。・・・覚えているでしょうか?」
返信来ない可能性の方が高いよね。
なんて高をくくっていたら、きた。
来たのだ、返事が!
*
「覚えてますよ。びっくりしたけど。」
ひゃー!来たよ、来たよ、返事。
返事が来たら、伝えたいこと・聞きたいことは頭の中で何度もシュミレーションしていた。
M君は、保育園・小学校とずっと学年一の人気者だったと記憶しています。
勉強もできて、スポーツもできるのに、全然飾らない性格で
だれにでも分け隔てなく接してくれる。
私、目立たない子どもでしたけど、そんな私にも声をかけてくれて、とっても嬉しかったんですよ。
なんであんな風に振舞えたのかな?って疑問に思っていたんです。
どういう風に考えて行動してたのかな?って。
こどもには、自然体で育ってほしいと思っています。
私自身を振り返ると、学生時代ってちょっとひねくれちゃったり、自分を隠してみたり。素直に振舞えなくて、窮屈な思いをしていたなって思うんです。でも、M君にはそんな気配がなかったから、なんでだったのかな?って。
下書きして、何度か読み返して、送ってみた。
すると、こんな答えが返ってきた。
ざっくりと、引用させてもらう。
そんな風に覚えてもらっていて恐縮です笑
仲良い子もいたけど、あんまり一緒にいたくない子もいたな。
でもまぁいじめとかはする感じでは無かったかな。
小さい頃から塾行ってて、周りより勉強できたことは自覚してた。
身体もでかくてスポーツもできたから、そういう面で自信があったのは大きかったかなと思う。そういうのが起因して皆んなのリーダーをやりたい目立ちたがりの性格になったんじゃないかな。
なので、星野の質問の答えとしては、なんか一つでも自分の自信になる(周りには負けないと思える)ことを早い段階で身につけると、周囲と接し方に自信が出るのかな、勉強でもスポーツでも文化系の習い事でも。
中学高校になると自分より勉強できるやつはたくさんいて、学校でも半分以下の成績になったけど、バスケは続けててそこが自尊心満たしてくれてたかな。
気さくな人柄がにじみ出る文章で、「変わってないんだな」と思った。
そして、私の質問に「なるほど」という答えをくれたのが、嬉しかった。
*
息子は、夫の影響で3歳ごろからレゴをしていて、「物を造り出す」ことに長けている。
本人も「物を造ること」を心底楽しんでいるようなので、「これは伸ばすべきところ」と思っている。
レゴをきっかけに、今はロボット教室にも通っており、これもとても楽しんでいるようだ。
そっか。私がやってたことは間違いじゃなかったのかな。
「周りには負けない」と思えるものを伸ばしてあげる。それが本人の自信や、心の支えになってくれたら、親としても嬉しい。
*
今回、こんな形でM君にメッセージをした自分に、私が一番驚いている。
私も大人になったんだな。
小学生のとき、ただただM君に憧れていただけで、何もできなかった私。
声をかけられても、うまく答えられなかった私。
嬉しかったのに、なにもできなかった私。
そんな、あの頃の私を、少しだけ救えたんじゃないかと思っている。
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