ハロウィンに甚平を着た息子
10月31日はハロウィン。
5歳の息子が通うこども園でも、「ハロウィンパーティー」が行われた。
当日は”好きな格好で着ても良いですよ”というお達し。
毎年、女の子はプリンセスになり、男の子はマリオやトイ・ストーリーのウッディになっている。
わが家では特にそういったものを用意していなかったので、普段着でいいやろ、と思っていた。
そして当日。
「この間西松屋で買った、恐竜の長袖着ていけば?」という私に
「うん!そうする。」と答えた息子。
「ズボンは昨日着とった緑のがいい!」
「えっ、乾いてないよ。他のにしようよ。」
「やだやだ!あれじゃなきゃ嫌や!」
えー、困ったなぁ。他にもズボンはあるが、息子が気に入っているのは緑のズボンなのだ。
*
「じゃあ、甚平着ていく!」
「は?甚平?寒いじ。しかも季節外れやから、おかしいよ。」
「なに着ていってもいいって言われたもん。甚平でもいいやん。おかしくないし。」
「いや、絶対おかしいよ。あれ夏やん。もう秋やよ?明日から11月ねんよ?見とるこっちが寒いわ。」
「いいやん、いいやん。ケンは寒くないもん!」
ああでもない、こうでもないと言い合っているうちに出発の時間が迫る。
「もう、じゃあ勝手にしまし。甚平、ほら。」
そう言って、夏用の服が入った段ボールから甚平を取り出して、息子に投げた。
「いぇ~い!」
嬉々として甚平を着始める息子。
紐を結ぶのもまだ難しいのに、なんとか自分でやろうと頑張っている。
そこまでして着たかったのか…。
*
そんな様子を見ていた祖父が「え?ケンちゃん、甚平着てくんか?おかしいやろ~。先生になんて言われるか…」なんて言ってくる。
私は「説得したけど、聞かんくって」と言ったものの、やっぱりちょっと心配になってきたので、連絡帳にメッセージを書くことにした。
息子は、と見るととっても満足そうだった。
めちゃめちゃ寒そうだけど。
「友達とか先生になんて言われるかわからんよ。」もう一度念を押してみたが、「いいもん!これがいいんやから!」と返された。
*
その日の夕方。
園から帰ってきた息子はまだ甚平を着ていた。
「げっ、まだ着とる。一日それやったん?」
「そうや!今日は暑かったし、ちょうどよかったよ!」
うん、確かにちょっと暑かったけどさ。
「みんなになんか言われんかった?」
「えーとね、夏祭りの格好やじ!って言われた。」
そうだろう、でも、本人はさして気にしていない様子。
連絡帳を開いてみると、先生から返事が来ていた。
はぁ。さすが先生。器が広いなぁ。
息子がみんなになんて言われるだろうとか、なにか言われて傷つくんじゃないかとか、気にしていた私。
もっと言えば、「秋なのに甚平着せてるおかしい親」と思われることを気にしていたんだと思う。
でも、息子の「やりたい」「こうしたい」って思いを一番に尊重してあげなきゃいけないのは親なのかもなぁ。とも思う。
線引きが難しいところではあるけれど。
もし、なにか言われて傷ついて帰ってきても、受け止めてあげるのもきっと、親の役割なんだろうなぁ。
とはいえ、息子があっけらかんと「自分がやりたいこと、いいと思うこと」を貫いてくれていることはなんだかたくましくも思えた。
傷ついたとしても、それがまた糧になるはずだしね。
*
後日、園のお便りにハロウィンパーティの写真が掲載された。
そこには、甚平姿で満面の笑みを浮かべた息子が映っていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?