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夏に忘れてきたモノ

ワタシの部屋
机の引き出しの中
忘れていた

一緒に出来なかったから…

水滴が額に浮かぶ
ウナジを滑るように流れ落ちる雫

そんな夜の出来事…

こと座の一等星とわし座の一等星が
ワタシの頭上で見つめ合う
はくちょう座の一等星は様子を伺うことしか出来ない…

同じ夏の大三角形なのに…

別々の場所で暮らすワタシ達3人が
久しぶりに再会した夜

雲のない夜…

ワタシが見上げて思ったように
一等星たちも空からワタシを見下ろして思ってる
たぶん…そう思ってる

ワタシの手がワタシの水分であふれかえる

ワタシの前で見つめ合う二人
ワタシは様子を伺うことしかできない…

空の上ではベガとアルタイルを天の川が遮っている
それでデネブは
たぶん安心している
ベガとアルタイルは見つめ合う事しかできない

だけど…眼の前の二人の間に川はない…
二人はワタシが側に来た事に気付かない…
見つめ合う二人…

ワタシの前でキスをした

ワタシは花火の袋を意味なく抱きしめて駆け出した…二人とは逆を向いて走り去った

どうして?
目から大粒の水滴が落ちて
乾いた地面に吸い込まれる…

どうして?
同じ境遇なのに…
同じように離れて暮らしているのに…

どうして?
同じ幼馴染みなのに…

どうして???

ワタシは急いで荷物をまとめて
その日の内に日常を過ごす場所へと帰って行った

夏の夜
一等星たちが見守る中でワタシたちの三角形は形を保てなくなった…

あの日から
花火と一緒に
しまい込んで
忘れて
無かったことにしようとしてた…

ワタシの想い…気持ち…

日が短くなって
玉のような水分が体から溶け出すことも無くなった夜の出来事…

机の中から
不意に飛び出してきた
あの日のワタシをワタシは受け止めた

近くの公園
ワタシのツレはバケツとチャッカマン

あの日と違って曇り空
空一面が雲に包まれている

あの日の一等星たちは
ワタシを見ていない

花火に火を点ける
勢い良く火の粉が吹き出して
あたりを明るく染める
と同時に…暗い影を地面に刻む

ワタシは
同時に何本もの花火に火を点けた

花火の火で花火を次々に点火していく…

両手にあふれる色とりどりの光の華
それを使って空中に書き出した文字…

「ダイキライ」
「ダイスキダッタケド」
「モウダイキライ」
「オシアワセニ」

書き終わったら
ワタシは穏やかな表情になった
見えないからわからないけれど
たぶん
そうなんだと思った

夏に忘れてきた心を取り戻せた気がした…

だけど
ワタシは淋しげでもあるんだと思った…

だって…
もう3人で過ごしたあの頃には

戻れないから…

※写真、文章のイメージと違いますが、許して下さいm(_ _)m

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