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木型設計のコンセプトについて

こんにちは、外林です🙌🏻
このnoteでは少し踏み込んだLIGHTBULBについての情報をお届けいたします!

今回はLIGHTBULBの要となるフィッティングを作る『木型設計』についてお話ししたいと思います🙇🏻‍♂️

トータル・コンタクト・ラスト

〜美しく動的〜

木型は靴作りにおいて最も重要な要素です。 

足の代わりとして、靴作りの基礎となり履き心地を決めるな要素

LIGHTBULBではただ足の形を追うだけではなく、解剖学とバイオメカニクスの観点から足の『構造と動き』を捉えた木型設計を基本としています。

1人1人にむけて削り出される木型は足の造形の美しさを表現しつつ、なおかつ動的な歩行も機能として取り入れられた

『今までにない、新しいフィッテング感覚』

をドレスシューズで表現します。

私達はこの木型の設計コンセプトを『トータルコンタクトラスト』と名付けました。

各部ディテールについて

ヒールカップ

一般的な量産木型の場合、ヒールカップは深くて4㎜程度ですがLIGHTBULBでは7㎜位までを深くしています。

既成靴にはない深いヒールカップ

これは『踵の密着度』を高めるためです。
一般的な量産靴の場合、中底材にバッカーボードなど合成の圧着材を使うため立体的な形状を出しにくく採用されにくいディテールです。

しかし、LIGHTBULBでは厚みのある『革の中底』を水で濡らして形状を出す、伝統的な手法であれば素材による制約がなく木型を設計出来るため採用しました。

当然丸ければ良いというものではなく履く人に合わせて調整いたします。

またヒールカップの形状は内外で変えており、これは踵骨の形状と運動を考えているためです。

足底の軟部組織は踵の底面と中足骨骨頭底面に集中しており、踵底面の脂肪体は衝撃吸収のため働きますが、靴のヒールシートが平面で踵の木型形状が大きい場合、脂肪体は左右に分散してしまいます。

そこで、この調整により荷重時の脂肪体の分散を抑えることで踵の密着度があがり、靴の支持性が向上します。

※支持性をどこまで上げるかは、足の状態を診て決定します

靴の製作においてヒールカップが深い場合、中底や八巻、積み上げと言った部品で最終のヒール面を平らにする必要があります。

とても手間はかかりますが、大切なディテールとして採用しております。

ヒール形状

木型の踵幅は、荷重時の計測値を少し絞った値にしています。絞り値(足と木型につける数値の差)は、90%半ば〜80%前半まで絞ることもあります。

ヒールは思っている以上に小さいものです

一般的な靴の踵は荷重時の足の踵よりも大きく、足の踵の両側面には触れないため立脚期の支持性には関与せず、歩行時に靴が脱げぬよう履き口が当たる程度である。

しかし荷重時の足の踵幅よりも靴の踵幅を僅かに小さく設計することで荷重時に靴の踵(月型芯)が足の踵を両側面から押さえる形となり、靴が足を支える支持性を持ちます。

このため支持性と懸垂性が向上します。
※最終的に足の評価、木型の形状、デザイン(紐靴orスリッポン)や素材も考慮し決定します

また踵骨は形状や動きが内外側で大きく異なるため、それらを木型にも反映してます。

踵骨粗面にあたる木型の内側は少し掘り込み、立脚期の回内に対する支持性と遊脚期の懸垂性(靴の踵が抜けずに足にぶら下がる性能)の向上を狙います。

踵骨(かかとの骨)

履き口部分(木型における後端)は細いと装飾性は上がりますが、靴擦れが起こりやすい場所の1つなのでアキレス腱付着部を余計に圧迫しないように設計しています。

内外で形が違います


踵について

ベースとなる木型では踵の高さ20〜30㎜弱でヒールシート(リフトがつくところ)は地面とほぼ並行で設定しています。

立体的なヒール形状


外側のエッジは地面とほぼ並行で、内側は縦アーチの支持性を上げるためエッジも丸みも踵中心から前方に向かって少しラインを上げて設定しています。

内側の特にアーチサポートを意識した形状

ヒールの前方の『アゴ』がくる部分は、殆どの靴で内外の高さを同じに設定しますが、LIGHT BULBの木型ではこうした内外の高さを変えたディテールを組み込んでいます。

横から見ると踵底面の膨らみが良く見えます。

より『足』を意識した底面形状


中足部内側

履き口の形状は、靴になった時をイメージして柔らかいカーブで中心線とほぼ並行な形です。

履き口付近の形状

しかし舟状骨レベルでは踵内側のわずかな凹形状から、(装飾性を損なわない程度に)軽く膨らみを帯びた形状にしています。

歩行時の『舟状骨』を意識したディテール

これは歩行時に起こる『回内運動』に着目し、その時に起こる舟状骨の落ち込みを考慮しています。

また個人差がありますが、舟状骨の突出(外脛骨)が大きい人もいるので、当たりが出ないよう木型の形状や芯材の柔らかさなどで履き心地を調整します。

中足部外側

履き口の形状は内側と同様に柔らかいカーブで中心線とほぼ並行に設計し、踵骨〜立方骨〜第5中足骨の側面の形状に沿って膨らみを持たせています。

外側の履き口辺りの形状
底面に向かうにつれて骨を意識したディテールが入る
実際の骨の形状

※中足骨骨底の膨らみに個人差があるため、足の評価によって調整します

ただし、ドレスシューズの場合には底面のエッジまで膨らませてしまうと靴の仕上がりが格好悪くなってしまうのでウエストはメリハリをつけて絞っています。

ドレスシューズらしい底面を意識した形状

中・後足部の木型底面は下腿の角度、足部底面の形状、足部各関節の可動性を考慮して設計します。

外側縦アーチを形成してる踵立方関節は足部の安定性に関係が深く臨床上とても重要視されている関節です。

前足部の底面形状

足の横アーチ形状は、インステップガース(IG)、ウェストガース(WG)レベルではアーチ構造ですが、ボールガース(BG)レベルではほぼフラットです。

右足を前から見た骨標本

そのため横アーチを支持する起伏(アーチサポート)は中足骨骨頭に掛からないように設計しています。

部位ごとに切り分け木型が設計される
LIGHTBULBならではの『足』を意識した底面形状


ボールガース

木型の前足部で1番幅広なのはボールガースでしょうか?(太い赤ライン)

歩行での足の動きを考えると本当にスペースが必要なのは細い線

靴のスタイルやお客様の好みにもよりますが、LIGHTBULBの木型は足趾の動きも考えて細い赤ラインの部分で1番幅が広くなるよう設計しています。

歩行時は小趾(こゆび)にこそスペースが必要

立脚期中に足のアーチ構造が働いてる時は、1stRay(母趾の列)の内側への動きに比べ5thRay(小趾の列)の外側への動きの方が大きいです。

捨て寸や幅は適切な靴であるにも関わらず、爪先が窮屈であったり、小指が当たりやすかったりする理由の1つでもあります。

フィッティング1st

少し難しい内容が多かったかもしれませんが、木型は靴を作る上で最も重要な要素です。

LIGHTBULBでは足の専門家である義肢装具士が木型を設計し、その木型を元にフルハンドメイドの技術を持つ靴職人が靴を仕立てます。

その結果、LIGHTBULBは履き心地と見た目の美しさを兼ね備えたあなたのための一足となります。

革靴が好きで履き心地にもコダワリがある方には是非このトータルコンタクトを体感して頂きたい時思います。

きっとこれまでにない新しい革靴の履き心地に出会える事をお約束します。

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