金持ち教習所【毎週ショートショートnote】

貧乏な家庭で育った俺はお金に対する執着心が人一倍強かった。
お金で苦労させたくないと恋人の麗子に言うたびに、お金よりももっと大切なことがある　が麗子の口癖だった。

ある日、そんなにお金で苦労させたくないならここに通えばと、麗子が金持ち教習所を紹介してくれた。

授業は、誠実に、礼儀正しく、人に親切に、常に感謝、など人として当たり前のことばかりの授業で、金儲けに関する授業は何もなかった。
俺は以前のようなお金に対する執着心はなくなり、人として何が大切かを学んだ。

ある日俺が歩いていると、みすぼらしい姿をした老婦人が大きな荷物を持って階段の前で困っていた。　
俺は荷物を持ち老婦人をおぶって階段を登った。
以前の俺だったら見て見ぬふりをしていたかも。

翌日、家の前にリムジンが止まって、昨日俺が助けた老婦人が降りてきた。
「回りくどいことをしてごめんなさい、どうかうちの孫と結婚してやってください」

車から降りてきた麗子がニヤリと微笑んだ。

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