ショートショート 宇宙から来た侵略者

ジュースを飲んだ後に、
お茶を飲んで、
お茶を飲んだ後に、
お酒を飲み、
お酒を飲んだ後に、
牛乳を飲んだ訳だが、
それは何でもない日常の
何でもない一コマでしかない。

何でもないことだ。
誰からも咎められることではないし、
褒められることでもない。
本当に何でもないんだ。

宇宙から来た侵略者がアイスクリーム屋さんでアイスクリームを買うことだって、
何でもない日常の何でもない一コマだ。
誰も宇宙人を咎める権利なんてない。
だって宇宙人は、
ちゃんとお金を払って買ってるんだから、
それを咎めるなんて何様のつもりだとしか言い様がない。
宇宙人が可哀想だ。

ただ、
だからと言って侵略を許す必要はない。
絶対に許しちゃダメだ。
アイスクリームに毒を入れたって良いし、
お金を払っている隙に後ろから思いっきり後頭部を攻撃したって良い。
当たり前だ。
侵略をしに来た相手に遠慮なんか要らない。
叩きのめしてやれ。
誰だって、
その宇宙人を殺す権利は持っているんだ。
地球は自分たちの手で守ろう。
好き勝手させちゃいけない。

でも、でもさ、
宇宙人が人知れず泣いていたら、
そっとハンカチを差し出してあげよう。
宇宙人だって泣きたい時くらいあるさ。
話を聞いてあげようじゃないか。

僕ら人間に一人一人
それぞれの悩みがあるように、
宇宙人にだって一人一人
それぞれの悩みがある。
それを聞いてあげることによって、
僕らは分かりあえるかも知れない。
何事もまずは相手の話を聞いてからだ。
先走っても良い事はない。
冷静且つ紳士な対応を心掛けよう。
そうやって仲を深めていけば、
きっと良い友人になれるさ。

とは言うものの、
話を親身に聞いていると見せかけて、
その実、じわりじわりと
警察が周りを取り囲んでたって良い。
所詮は侵略者、
捕獲して拷問にかけるのもありだ。

別案を言えば、
話を聞いた上で飲み口の所に毒を塗った缶コーヒーを渡すってのも良い。
どうせ油断しているだろうから、
簡単に口を付けるだろう。
簡単に口を付けて毒が回ったら、
宇宙人は苦しみ悶え出すに違いない。

まぁ、そうなったら宇宙人に向かって、
「死ぬ時は笑顔でな」
って言ってあげてほしい。
人生の最期に誰かを憎んで怖い顔をしながら死んでいく姿なんて見たくないだろ。
誰であれ、
最期は笑っていてほしいものじゃないか。

だから、なんだろうな、こちょこちょしてあげるとか良いんじゃないか。
自信があるなら
変顔をしてみるのも良いと思う。
とにかく、
死に至らしめるとは言え、
笑顔で死んでもらうことを第一に考えよう。

そうすれば、聖人のような人間になれる。
みんな憧れの聖人だ。
聖人で世の中を溢れさせよう。
聖人だらけの世の中になれば……っと、
聖人の話なんかどうでもいいな。

今は宇宙人だ。
侵略しに来た宇宙人にだって、
権利はあるって話だ。
例えば、
宇宙人にだってバイトをする権利はあるし、
カフェで優雅に過ごす権利だって当然ある。

それが嫌だと言うのなら、
「宇宙人お断り」
の貼り紙を貼ればいい。
お店として、
そういうスタンスを示す権利は当然ある。

宇宙人側も侵略しに来ているのだから、
それぐらい想定内だと思っているさ。
「まぁ、仕方ないよね」
みたいな感じだと思う。
暴力で訴えてくるという様なことは100%ない。

何故かと言うと、
「仲良くなった上で虐殺を始めたい」
って言うのが宇宙人側の主張だからだ。
なので、手は出してこないと思う。
これはつまり、
一生仲良くならなければ
侵略されることはないって事だ。

ただ、
宇宙人はとてもフレンドリーで面白いし、
優しいし、
挨拶は欠かさないし、
困っている人を見掛ければ、
すぐにその人の元へ駆け寄って助けてあげようとするし、事故や事件なんてものは全て未然に防いでくれる。
他には、
いじめや虐待もすぐに感知して、
その行いを止めさせたり、
行方が分からなくなった人を見つけてあげたり、色々解決してくれる。
まるで、正義のヒーローだ。

であるからして、
宇宙人に友好的な人間が増えてきている。
この地球ほしの行く末が心配だ。

友好的な人たちは、
「虐殺なんて冗談でしょ」
とか、
「こんだけ仲良いんだから、
宇宙人の気も変わってる」
とか言うのだけど、
それはもう宇宙人の狙い通りだ。
愚かしい奴らだよ。

世界の半分以上が宇宙人に対して友好的になってしまえば、
最初の声明通り、
虐殺が始まるに違いない。
奴らは、それが楽しみで
正義のヒーローをやっているんだ。
嫌な楽しみ方だよ。
今一度、みんなしっかり自覚してほしい。

でなきゃ、この地球ほしは終わりだ。
まぁ、そうは言っても、
宇宙人のくだりは全部妄想だから、
何も心配する必要はない。

これからもみんな、
何でもない日常を
何気なく生きていけばいいさ。

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