アメ舐め女とガムくちゃ男
かれこれ、一週間は
青い空が広がっていない灰色の空の下、
無邪気な子供が無邪気にトカゲを川へと投げ捨てた。
どう見てもそれは元気な男の子で、
平和な日常の一コマだった。
あっ、トカゲはどうでもいいです。
どこもかしこも歌唄いだらけの街中では、
歌がぶつかり合っていて、
側を歩く名前も分からない愛しき人の声が聞こえない。
みんなの友達はみんなどこへ行ったのか、
どこかへ行っちゃったし、寂しい日々だ。
ゴミ一つない道には、
乳母車を押すカッコいいファザーが居て、
その隣には美しきマザーが居た。
ゴミ一つない道だけど、
犬の死骸はあったので、
笑顔の素敵なそのベストカップルは、
素敵な笑顔を保ったまま、
それを避けて道を進んだ。
心はいつも誰かに支配されていて、
縛り付けられている。
でも鮮やかに、
支配から解放されたところで、
生きるのが半端なく苦手なあの子は、
どうせなんにもできないよ。
「さよなら、ごめん……」
にしかならないよ。
青い橋の上では、
アメを舐めている女が、
「色々と言いたいことがあったけど、
頭の中を整理したら
言いたいことがなくなった」
と言っていた。
それに対して、
ガムをくちゃくちゃしている男は、
「どういう整理したんだよ。
普通、一個くらいは
言いたいことを残しておくだろ」
と不思議がった。
しかし、
不思議がられたアメ舐め女は、
「そうなったものは仕方ないじゃん」
ってな感じで、
「言いたいことはもう忘却の彼方だよ」
と空を見上げた。
ガムくちゃ男の方は、
「じゃ、なんで俺は呼び出されたんだよ」
と不満を言い、
「まぁ、そうなったものは仕方ないけどさ」
と理解は示したものの、
地を這っていたトカゲを捕まえると、
ガムくちゃ男はそのトカゲを川へと投げ捨てた。
中々、遠くへ投げたものだ。
平和な日常の一コマと言える。
しかし、
相変わらず、
空に光は差してこない。
あっ、トカゲはどうでもいいです。
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