ショートショート ポイ

人々の悲しみを背負って、
あの丘を越えた私は、
一旦、爆竹で遊ぶ。

さあ!
思うがままにその力を発揮しろ!
爆竹たち!
大暴れの時間だ!

そういう訳で、
爆竹たちがバクバクチクチクと
その力を遠慮なく発揮する。
最高だ!
最高に楽しい!
今日一番楽しい!

だけどもしかし、
人々の悲しみが重い。
あの娘の、
うさぎを買ってもらえなかった悲しみや、
あのおばさんの、
ケチャップが飛び散っちゃった悲しみ、
更にはあのお兄さんの、
素足でグミを踏んじゃった悲しみ
などなどが、私に重くのしかかってくる。

でも、私はやらなきゃいけない。
背負ってる悲しみを全部、
適当な場所にポイするんだ。
だから私は行く。
時折、不審な動きをしながら行く。
虫や花を蹴散らしながら行く。

この世に、
悲しみなんていらない。
おじいちゃんは悲しい映画が好きだけど、
この世に悲しみなんていらない。

どうせなら感動もいらない。
前々から思ってたけど、
感動なんかいらない。
おじいちゃんは感動したい人だけど、
感動なんていらない。

って言っても、
私に感動をどうこうすることはできない。
おじいちゃんは、
これからも好きに感動すればいいよ。
感動は誰にもポイできない。

でも、
悲しみはポイできる。
だから私は行く。
行くのよ! 

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