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人種差別と闘った話/後編【英語抗議文、日本語訳あり】

二年前、むすめが二度に渡って受けた人種差別は、通訳さんとバス会社の協力を得て無事に解決しています。
バス内での悪意あるジェスチャー、録音による嫌がらせは、発覚から六日で解決をしました。これまで人種差別を受けた経験のある方に話を聞くと、やはり長引く場合が多く、訴えが認められず解決に一年を要した方も見えました。
前編の冒頭でも触れましたが人種差別が発覚したときは、
・嫌がらせを受けた日時と言動を記録する
・抗議メールは複数の宛先へ送る 
・子供の辛かった気持ちを受け止める、アドバイスは要らない

が重要です。
夫はビジネスレベルの英語話者ですが、抗議メールの作成にあたってはプロの力を借りました。
非英語圏の場合、日常的に英語を話す人が極端に少なくやり取りに時間がかかり、最悪の場合は無視されることもあります。
一回のメールで状況を理解させ、行動を起こさせるためにスペイン語での抗議文を作ってもらいました。
下記の文章は、バス会社に送付した抗議文をスペイン語から英語に翻訳したものです。人種差別でお困りの方は参考になさってください。

英語抗議文サンプル

おはようございます。
【学校名】に通う小学xx年生、【子供の名前】の父親です。
御社の送迎サービスには満足していますが、残念ながら帰宅時のサービスに問題があり、お知らせしたいと思います。
先週の金曜日、娘から聞いたのですが、送迎車の中で、同じタワーに住む小学xx年生が、数ヶ月前から娘の日本語を話す声を録音して見せているそうです。娘はこのことをとても悲しく思っているようで、私に話すと大泣きしていました。彼女は明らかにこの子にいじめられている。
本人の同意なしに会話を録音していること、それが娘の精神に影響を与え、ある種の嘲笑やいじめを生んでいることは間違っていると思います。
どうかこの子の親御さんとお話をして、このような形で娘に迷惑をかけることを禁止し、娘を尊重してくださるようお願いします。
また、このようなことが二度と起こらないよう、娘の声を録音したものを消去するよう伝えていただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
迅速なご回答をお待ちしております。

Good morning,
My name is 【父親の名前】and I am the father of 【子供の名前】, a 【学年】 grader at【学校名】.
I am happy with the transportation service you provide but unfortunately there is a problem with the service back home and I would like to inform you.
Last Friday, my daughter 【子供の名前】 told me that in the transportation, there is a 【学年】grader who also lives in our tower 【マンション名】 who for several months now has been recording my daughter's voice speaking Japanese and then showing it off. She expressed that she feels very sad about this and was crying a lot when she told me. She is clearly being bullied by this child.
I think it is wrong that they are recording her conversations without her consent and that this is generating some kind of mockery or bullying because it affects my daughter emotionally.
I kindly ask you to talk to the child's parents and prohibit them from bothering my daughter in this way and please respect her.
I also thank you for informing them to erase these recordings of my daughter's voice and that this will not happen again.
Thank you very much in advance.
I look forward to your prompt response.

人種差別を解決するにあたり後悔した事

後悔1:娘が苦しんでいる事に気付いてあげられなかった

母親として、一番話してほしい事を他人の口から聞いたことがショックでたまならかった。なんでも話せると思っていたのは私だけで、むすめにそれほど信用されていなかったのかもしれない…

人種差別と闘った話/中編より

なぜ相談してくれなかったのか、母親として信頼されていなかったのか。noteを執筆にするにあたり、娘に当時の気持ちを尋ねてみた。

・家の中に嫌なことを持ち込みたくなかった
これは現在進行形のストレス対処法で「家の中に嫌なことを持ち込まない」主義だそう。親としては出来るだけ早く相談してほしい…

・言い返したことを叱られると思った
やられっぱなしかと思いきや "Can you stop please!!" " Why do you do that?!"と、すごい剣幕で言い返していたそう。

後悔2:メールの送信先を複数にすれば良かった

▽悪意あるジェスチャー/サクラとルイスの担任・Missカレンに連絡

ルイスの母親は私たち親子にとても親切だったので、人種差別とは言えど大ごとにせずに解決したかった。
一方で、Missカレンはサクラ、ルイスと同じ学年の子供を持つ母親で、ルイスの母親とはママ友の間柄だった。
メールを送った翌日に「すぐに返信します」とメッセージをもらったのを最後に何の連絡も無かった。
Missカレンがルイスの母親に連絡してくれたのか正直なところ分からない。
どちらにせよ、この時にアドミニやコーディネーター、校長にも報告していれば、二度目の問題は起こらなかったのかもしれない。

録音による嫌がらせ/バス会社に連絡

結果的に問題は解決されたけれど、ミゲルの行為は一度も学校側に知られていない。
結局、この三人は直接的に両親以外にしかられることがなかったので、心からの反省などあるはずもなく、ルイスはバス内でむすめのスペイン語の点数を暴露するなど、小さな嫌がらせは続いた。

人種差別の原因は誰にあったのか

半年後、ミゲルをよく知る日本人のお母さん友達から話を聞いた。
彼はブラジルから引越してきたばかりで英語がうまく話せない。クラスの中では大人しく目立たない存在だったらしい。
オールイングリッシュの学校で英語が分からないことは相当のストレスだったと思う。
メキシコとブラジルの母国語はスペイン語とポルトガル語で似て非なるものである。簡単な会話は出来ても、母国の友人と話すようには行かなかったのだろう。

さて、本題の「人種差別の原因は誰にあったのか」
正直ルイスのことは分からない。
一つ思い当たる節があるとしたら、彼の祖母はアジア人が好きではないように感じた。
では、学年も性別も違う、話すらした事のないミゲルは?
おそらく外国での生活のストレス発散とガス抜きに使われたのだろう。
これまで人種差別にあった友達の話を聞いていると、攻撃した側の家庭に明らかな問題があったり、外国人として苦労していることが多かった。
いずれにせよ、むすめに一切の非は無かったと断言出来る。

むすめは差別をどう乗り越えたのか

二〇二三年八月、新学年のクラス名簿を見て絶句した。
ルイスと同じクラスだった。
あれから二年経ってるとはいえ、嫌な記憶は鮮明に思い出される。
むすめに不安はないか尋ねてみたところ、意外にも気にしていなかった。

この二年で英語とスペイン語をみるみる伸ばし、言い合いが出来るだけの自信がついたらしい。何かあれば周りの大人に助けを求めることを約束した。
一度塞がった心の傷が何かの拍子に開いて、また膿んでしまうのではないかと心配したけれど、自分なりに折り合いを付け、心に受けた傷は完璧に塞がり、強靭な皮膚となって彼女の心を守っていた。

♡♥
ここまでお読み頂きまして有難うございました。
今だからこそ冷静な判断が出来ますが、当時は早く解決してあげたい一心で細かい所にまで気がまわりませんでした。
Missカレンに一回、バス会社に二回、連絡をしましたが「すぐに返信します」「フォローアップします」とは口ばかりで何の連絡もありません。
そのため謝罪しているのか、反論しているのかも分からずモヤモヤする気持ちが残ったのも事実です。

この記事を読んで下さった方の中には、帯同赴任を予定されている方、ご家族と共に現地で暮らしている方がいらっしゃるかと思います。
実際問題として人種差別はあります。
メキシコ人に辛い思いをさせられたけれど、助けてくれたのもまたメキシコ人でした。
むすめは学校が大好きで、友達が大好きで、この国が大好きです。
明るく努力家のむすめは私たち家族のほこりです。

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