見出し画像

息子が幼稚園に行かないと宣言した日

僕は聖教新聞に勤めて16年目の記者です。妻、小学1年の息子、幼稚園年少の娘と4人で暮らしています。2019年に第2子が誕生し、翌年にはコロナ禍のステイホームを経験して、子育てにもっと関わりたいと思うようになりました。そうした中、長男が「幼稚園に行きたくない」と宣言。小学校に入学してからも、学校に行ったり行かなかったりという今に至ります。家族と歩む中で、僕自身もメンタルヘルスを崩したり、部署を異動したり、いろいろなことを経験しました。それは、今も現在進行形で、僕という人間を大きく育ててくれています。そんなわけで、「育自」日記として、思い出を含めて書いていきたいと思います。

決め手は「無理だと言うことをやらせるな」

息子について、幼稚園の年中の時に、担任の先生から言われた言葉があります。

「幼稚園に来ると、すごく一生懸命に、何でも頑張っているんですよ」

年少(入園当初)こそ、よく泣いていたものの、送り迎えをするうちに園バスにも乗るようになりました。年中になっても園に行かない日はあったけど、運動会とかの行事には積極的な一面もあり、幼稚園生活を楽しんでいるようにも見えました。

でも、息子がかなり努力して幼稚園に行っていることは、気付いてました。
年少の学芸会では、「音が大きすぎる」と言って耳をふさいでいました。年少の修了式も、皆の列に加わることを拒んだので、親子で会場の後ろから、修了式を眺めてました。
幼稚園の出席ノートを振り返って数えると、年中の時でさえ、出席したシールの貼ってる日は5割くらいだし、「バスに乗りたくない」という日も多かったです。そんな時は出勤がてら、「今日は旅をしながら幼稚園に行こう」と伝えて、自転車のチャイルドシートに息子を乗せ、片道40分かけて、園まで送りました。

僕が住む多摩地域のエリアは、東京とはいっても、一歩入れば、緑が豊かです。写真で切り取ったら、例えば日本有数の避暑地である長野・軽井沢にも引けを取らないと思います(それでいて夏はむちゃくちゃ暑い)。そうした地元の〝あぜ道〟を通っていくと、本当に旅をしている気分になります。

「トトロ道とクモクモ(蜘蛛が出そうという意味)道と、どっち行く?」
「うーん、トトロ道!」
あぜ道にも、太い道と細い道があるので、息子に選んでもらいながら、自転車をこぎました。

ただ、あぜ道が終わり、大きな道路に出て、幼稚園が近づいてくると、息子のトーンが沈んできます。
「幼稚園に行くの嫌だなあ」
肩越しにつぶやく息子に、「パパもねー、会社に行くの嫌なのよー」と言っていた毎日が懐かしいです。

そんな息子が「幼稚園に行きたくない」ときっぱり言い切ったのは、幼稚園の年長になった2022年4月下旬のことでした。
すでに、欠席も1週間くらい続いていたせいか、僕もストレスがたまっていたように思います。
その日は、自転車ではなく車で送っていきました。幼稚園の駐車場に着いたのですが、息子は「行かない」と言って、車から降りようとしません。僕は僕で、やらなきゃいけない仕事(出社時間)も迫っているし、だんだん焦ってきます。幼稚園の先生も門から出てきて、迎えに来てくれたけど、息子の態度もかたくなです。

息子を乗せて自転車をこいだトトロ道

そこで僕は焦りのあまり、息子を怒鳴ってしまいました。
「幼稚園行かないで、将来どうやって生きていくんだ!」と僕。
「働いて生きていく!」と息子。
「どうやって働くんだよ! 学校を卒業しないといけないでしょ」と僕。
「小学校と中学校に行く!」と息子。
「そのために幼稚園に行くんでしょ!」とさらに僕。

ここまでの応酬をへて、息子は叫びました。
「無理だと言うことをやらせるな!」
この言葉を聞いて、うーん、親として反論できなくなってしまいました。
僕は記者の仕事の中で、人物ルポの取材をメインに担当させてもらってきました。その中には不登校のお子さんの親御さんもいらっしゃいました。その取材で聞いた言葉が、頭をよぎりました。

「子どもの声に耳を傾け、心に寄り添い、信じること」

息子が言った〝無理だと言うことをやらせるな〟という趣旨も、自分自身が、記事の中で書いた経験があります。息子が、その言葉の意味について、どの程度深く理解していたかは分かりません。僕が、ポロっと家で話した言葉を覚えていただけかもしれない。あるいは、僕以上に切実に思って言ったのかもしれない。

ただ、いずれにしても、その言葉は、僕の心に深く突き刺さりました。
僕は「そうだね。分かった。帰ろうね」と言って、一緒に帰りました。
それまでも、息子のことを思ってきたつもりでしたが、この出来事が一重深く、息子に寄り添っていこうと決めたスタートラインであったと思います。

(つづく)

聖教新聞の記者たちが、公式note開設の思いを語った音声配信。〝ながら聞き〟でお楽しみください ↓

内容に共感してくださった方はハートマークの「スキ」ボタンを、ご意見・ご感想など吹き出しマークの「コメント」に、そして、よろしければアカウントの「フォロー」をお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?