見出し画像

「家具インテリアリサイクル&リニュー協議会」が発足

家具関連企業35社が参加、廃スプリングマットレスのリサイクル実証も開始

時代は「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)へ

SDGsの進展などでごみ問題、資源問題に対する世の中の流れは、これまでの3Rから、さらに一歩踏み込んだ「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)へと変化してきています。

3R(リデュース・リユース・リサイクル)は人々が生活する上で廃棄物は必ず発生するという考えが前提で、それをいかに減らし、再利用、再資源化していくかというものですが、サーキュラーエコノミーは、そもそも設計段階で廃棄物を出さないよう製品・サービスをデザインするという考えに立っています。

サーキュラーエコノミー実現へのキーワードは、「動静脈連携」

製品製造等の段階で資源投入量をいかに抑えていくかというのも重要です。これを実現するには、廃棄物処理・リサイクルを行う「静脈産業」の力だけでは不十分で、製造側、いわゆる「動脈産業」の取り組みが不可欠となります。

サーキュラーエコノミー実現へのキーワードは、「動静脈連携」と言えるでしょう。


世界的なサーキュラーエコノミーへの流れの中で、日本の製造業等もいよいよ本気になって来ている感があります。それを象徴するような団体がまた1つ立ち上がりました。

家具インテリア業界有志企業35社が「家具インテリア リサイクル&リニュー協議会」設立

家具メーカー、家具小売業、物流企業など家具インテリア業界のサプライチェーンに関わる有志企業35社が、家具インテリア業界の環境経営促進に協同連携して取り組むため、任意団体「家具インテリア リサイクル&リニュー協議会」を6月28日付で設立しました。

同協議会の参画各企業は、家具インテリア業界共通の課題である、不要家具の引き取り・再利用・再資源化などの資源循環や、森林の生態系保全、CO2排出削減など環境負荷の少ないサプライチェーンの構築とサーキュラーエコノミーの実現を目指し、連携して取り組んでいく考えです。


同協議会には製造事業16社、販売事業10社、物流事業ほか9社の合計35社が参加。①リソーシング(資源循環のループを繋ぐ体制と再資源化促進への研究開発)②長期愛用(家具の長期耐用性を向上する修理メンテナンスも含めた仕組みの構築)③ZEROカーボン(2050年実質ゼロカーボンへ向けた研究開発と取り組み推進)④再生デザイン(環境性能評価の研究による環境にやさしい家具開発の推進)――の4つのワーキンググループを順次立ち上げ、サプライチェーンの動脈産業(生産・物流・販売)から静脈産業(メンテナンス、廃棄、再生など)に至るまでの事業分野を垂直連携でマネジメントしていく計画です。

「廃スプリングマットレス」のリサイクルネットワーク実証実験を関東地区で開始

このうちリソーシングワーキンググループでは、不要家具の引き取りと再利用化促進の取り組みとして、廃棄物の中でも処理困難物に指定されている「廃スプリングマットレス」のリサイクルネットワーク実証実験を、協議会発足に先立ち6月1日から関東地区で開始しています。実証実験では、廃スプリングマットレスをリサイクルするための効率的な回収、鉄資源などの資源循環の促進を足掛かりに、リソーシング系の共通基盤構築を目指していきます。

廃棄されたベッド

実証期間は8月31日までの3カ月間で、排出事業者としてアクタス、東京インテリア家具、家具の大正堂、カンディハウス、ドリームベッドが参加。協力企業として、収集運搬と中間処理でTAKADA環境、中間処理でエコ計画、JFE条鋼、東港金属、システムで伊藤忠テクノソリューションズ、伊藤忠メタルズが参画しています。

個社でなく、業界の共同事業による不要家具の回収、中間処理、最終処分のネットワークを構築することによる資源循環性の向上、事業の合理化、不要家具処分に対する顧客ニーズへの最適化などを目指します。さらに、不要家具の回収・処理に関する情報のデジタルプラットフォーム試作版を運用し、課題に対する業界のデジタル・トランスフォーメーションを促進。

不要家具の回収・運搬事業の共同利用により、物流業界の2024年問題へ家具インテリア業界としての対応力強化を図る考えです。

発足日の6月28日には記者発表会を開催


設立記者発表会を開催


会長に就任した岡田贊三氏(飛騨産業代表取締役会長)は設立趣旨について、「メーカー、小売、物流等にリソーシング分野の事業者を加えた動静脈の垂直連携によってサーキュラーエコノミーの最適化を目指し、時代に即した環境経営の展開に取り組むことを目標に、当協議を発足することとしました」などと説明しました。

設立趣旨を説明する岡田贊三会長


来賓として環境省環境再生・資源循環局 土井健太郎局長も参加

また、発表会には来賓として環境省環境再生・資源循環局の土居健太郎局長(7月1日付で水・大気環境局長に異動)も出席。

同協議会に対する国からの期待の高さもうかがわれました。

土居局長はあいさつの中で、「動脈産業と静脈産業の両者が話をするという機会はこれまであまりありませんでした。リサイクルされてできた素材が新たな製品として生まれ変わる際に有しているべき性能、量、価格など、両者が直接ビジネスとして話し合いをして、納得して受け渡しをするということが極めて重要で、それができるのが動静脈連携。3Rから循環経済に移行する一番の肝は、ビジネスレベルで動脈・静脈が連携をしてプロジェクトを前に進めるというところだと私は確信しています」と力説しました。


来賓としてあいさつする環境省の土居健太郎環境再生・資源循環局長(当時)

新たなビジネスの機会が生まれてくる可能性も


近年動脈産業が環境関連事業に本腰を入れ始め、廃棄物の発生を防ぐための取り組みや、再資源化等の試みに注力する動きが目立っていることに対して、自分たちが処理する廃棄物がなくなると危機感を抱いている廃棄物処理・リサイクル業者も多いようです。

確かにそうした面は否めないかもしれませんが、動脈産業と連携していくことで新たなビジネスの機会が生まれてくる可能性もあるはずです。この情勢を単にピンチととらえるか、大きなチャンスでもあるととらえるかで、今後の企業成長は大きく変わってくるのではないかと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?