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【引用】ボーヴ『ぼくのともだち』
今回読んだのは、エマニュエル・ボーヴ(BOVE, Emmanuel)[1898-1945]『ぼくのともだち』(渋谷豊訳、白水社、白水uブックス、2013年7月、東京)です。
以下、引用した文章になります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2024年4月13日 00:43
大家に、立ち退きを要求された。ぼくのことで、アパートの住民から苦情が出たらしい。あいつは仕事をしていない、と。
2024年4月13日 00:45
ぼくは七階の屋根裏部屋でひっそり暮らしてきた。歌ったり笑い声を立てたりしないよう気遣ってきた。それというのも、働いていないからだ。ぼくみたいな働かない人間、働くことを望まない人間は、いつだって嫌われ者だ。
2024年4月13日 00:46
ほんとうは、みんな、ぼくを羨んでいたにちがいない。ぼくは、自由でありつづけるために、肉も映画も毛糸のセーターも断念した人間だ。そのぼくと顔を会わせると、彼らは自分たちの不自由さを自覚せざるを得なかったのだろう。
2024年4月13日 00:47
もちろん、ぼくは、自分の立場をひけらかす気などなかったけど。みんな、ぼくを許さない。自由でいることも、貧乏を怖れずにいることも、許してくれない。
2024年4月13日 00:50
椅子――庭用の折り畳み椅子だ――に腰掛けて、将来のことを考える。いつか、きっと幸せになる。ぼくを愛してくれる人が現れる。そう信じたい。でも、いつか、いつかと思って、もう久しい。
2024年4月13日 00:52
孤独。なんて美しく、なんて悲しいものだろう。みずから選び取った孤独は、このうえもなく美しい。
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