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【映画#89】「世界」『空の冒険』より

こんにちは、三太です。

夏休みは部活動や夏期講座などもあるのですが、研修もけっこうたくさんあります。
特に今年は何回か受けた人権の研修が印象的でした。
どの人権の研修でも出てきたキーワードが「声をあげる」ということです。
面倒くさいと思ってなかなかやらないことなのですが、おかしいと思うことに声をあげていきたいと思っている今日この頃です。

では、今日は『空の冒険』に出てきた映画、「世界」を見ていきます。
『空の冒険』に出てくる17作の映画のうちの16作目です。


基本情報

監督:ジャ・ジャンクー
出演者:タオ(チャオ・タオ)
    タイシェン(チェン・タイシェン)
    サンライ(ワン・ホンウェイ)
上映時間:2時間19分
公開:2004年

あらすじ

舞台は北京にある世界公園。
ここには世界中の有名なスポットがレプリカとして建てられています。
(例えば、エッフェル塔やロンドン橋など)
この施設の謳い文句は「一日あれば世界を見せてあげる」。
ここでダンサーとして働くタオと彼氏である警備員のタイシェン
二人は共に仲間たちのなかではリーダー的な存在。
タオはダンサー仲間に「姐さん」と言って親しまれ、タイシェンは同郷から来る仲間たちの面倒を見ています。
彼らを軸に描かれる田舎から北京に出てきた若者達の日常と悲哀が描かれます。
主にはタオとタイシェンをはじめ、男女関係がどう転がっていくのかというのがストーリーを進めていく原動力となっています。
所々差し込まれるアニメの映像がストーリーのアクセントとなっています。

設定

・田舎から都会に出てきた若者達
・世界公園
・アニメの映像

感想

広い世界を表す公園で働く人間たちの狭い人間関係
この場所と人間のアンバランスが絶妙でした。
若者達はお金もなく、パスポートを作ることもできず、公園内の世界に閉じ込められています。
成り上がったり、良い生活をしたりするためには水商売に手を出したり、悪いことに手を染めたりする必要がありました。
ここがとても辛いところです。
この映画の終わり方の解釈は難しいですが、(そう描かざるを得なかったのかもしれませんが)私は悲しい終わり方だと思いました。

秋の朝部屋の一隅ある二人

その他

・ダンサーたちが暮らす寮のような部屋に「タイタニック」のポスターが貼られている。
 →奇跡的に『空の冒険』でつながりました。

・ジャ・ジャンクーは『青の稲妻』の監督でもある。

・サンライ役のワン・ホンウェイは『小さな中国のお針子』のメガネ役として出ている。

『空の冒険』内の「世界」登場シーン

ますますヒートアップする商談の盗み聞きにも飽きて、ホテルのスタッフが(こちらもやけに)熱心に推薦してくれた『世界の窓』というテーマパークに向かうことにした。
ここは世界中の名所(たとえばエッフェル塔とか、アンコールワット遺跡とか、NYの摩天楼とか)のミニチュア版を見て歩く巨大なテーマパークで、二〇〇四年に公開されたジャ・ジャンクー監督の『世界』(実際には北京郊外の『世界公園』が舞台)でも描かれている。

『空の冒険』(p.221)

これは「シンセン、チュウゴク」というエッセイの一節です。
タイトルにもあるとおり、吉田修一さんは中国の深圳を訪れています。
映画「世界」が挙げられていますが、映画は北京の世界公園が舞台であり、あくまでも深圳の『世界の窓』と似たような場所として示すために映画を出したのかなと思います。
ちなみにこの深圳への旅によって、『世界の窓』への見方が変わったようです。
 

吉田修一作品とのつながり

・中国を舞台にするのは『太陽は動かない』につながります。
・上京もの

以上で、「世界」については終わります。
若者達の日常と悲哀がとても伝わってくる映画でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「世界」

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