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学校の話。

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子供たちの間で行われていたのは本当に「いじめ」だったのか。 大人の目線で描く学校の話。
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#先入観

【小説】学校の話。<転②>

【小説】学校の話。<転②>

▼前話

1)

「困ったことになったねぇ」

畠山教頭が力なく溜め息をついた。
細面の神経質そうな男で、あと数回溜め息をつけば魂が抜けるのではといった様子である。

職員室に隣接する小部屋で、小渕沢と畠山教頭は向かい合って座っていた。
来客を通したり、ちょっとした打ち合わせを行う多目的な場所だ。

(どこで間違えた──?)

小渕沢は、拳を握り締めて自問を繰り返す。

いじめの証拠を見つけたと思

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【小説】学校の話。<結①>

【小説】学校の話。<結①>

▼前話

1)

先週木・金と欠席した笹木 凛音は、週が明けて登校してきた。
久しぶりに顔を合わせた三人組は、初めこそ少々ぎこちなかったが、時間を追うごとに打ち解けていく様子が窺えた。

三人が揃うのは、先週問題を起こして以来だ。
そのための気まずさだったのだろうと、小渕沢は考えた。

(これに懲りて、大人しくしておいてもらいたいものだな)

眼鏡のズレを調整し、計算プリントの束を手に取る。

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【小説】学校の話。<結②>

【小説】学校の話。<結②>

▼前話

1)

ノックの音が沈黙を破る。
畠山教頭が「はい」と応じると、校長室の重いドアが開かれた。

「千乃ちゃん」

及川が驚いて腰を浮かせる。入り口近くに座っていた瀬尾は千乃に歩み寄った。オリバーが、守るように千乃の背中に手を当てている。

「お話、長くなっちゃってごめんね」

瀬尾が椅子をすすめると、千乃は泣きそうな顔で首を横に振った。

「実咲先生、悪くないよ。
”何があったの?”って

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