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キツナ月。
2023年11月15日 23:17
▼前話1)「困ったことになったねぇ」畠山教頭が力なく溜め息をついた。細面の神経質そうな男で、あと数回溜め息をつけば魂が抜けるのではといった様子である。職員室に隣接する小部屋で、小渕沢と畠山教頭は向かい合って座っていた。来客を通したり、ちょっとした打ち合わせを行う多目的な場所だ。(どこで間違えた──?)小渕沢は、拳を握り締めて自問を繰り返す。いじめの証拠を見つけたと思
2023年11月15日 23:42
▼前話1)先週木・金と欠席した笹木 凛音は、週が明けて登校してきた。久しぶりに顔を合わせた三人組は、初めこそ少々ぎこちなかったが、時間を追うごとに打ち解けていく様子が窺えた。三人が揃うのは、先週問題を起こして以来だ。そのための気まずさだったのだろうと、小渕沢は考えた。(これに懲りて、大人しくしておいてもらいたいものだな)眼鏡のズレを調整し、計算プリントの束を手に取る。放
2023年11月15日 23:44
▼前話1)ノックの音が沈黙を破る。畠山教頭が「はい」と応じると、校長室の重いドアが開かれた。「千乃ちゃん」及川が驚いて腰を浮かせる。入り口近くに座っていた瀬尾は千乃に歩み寄った。オリバーが、守るように千乃の背中に手を当てている。「お話、長くなっちゃってごめんね」瀬尾が椅子をすすめると、千乃は泣きそうな顔で首を横に振った。「実咲先生、悪くないよ。”何があったの?”って