恋愛は偶然と根気 500日のサマーを見て

こんにちは。社会人のImoと申します。このnoteは私が映画を語っていくのですが、主に映画館でやってるものをメインに扱っていきます。

…という触れ込みだったのですが、大学時代からの友人に勧められてこの映画をアマプラで借りることに。今回はあらすじも込みで行きましょう。

グリーティングカード(お祝い事の時に送るメッセージカード。日本じゃあんまりないのかなぁ?)の会社に勤めてるトムは新しく社長のアシスタントになったサマーと出会う。曲の趣味を通じて意気投合するも、恋愛に対する考え方ですれ違う二人。その一方で付き合いも深くなり男女として仲良くなっていく二人。これはちぐはぐながらも一緒に過ごす二人にまつわる500日のトムの回顧録だ。

さて、この映画の良さを伝えて興味を持ってもらうために、まずはネタバレなしの語りをさせてもらいます。

私の友達によるとこの映画は男女ではっきり意見が分かれるそうです。そういうところでとても興味が惹かれたので、今回見るに至りました。そしてサマー役のズーイー・デシャネルがとにかくかわいい。彼女の姿を見るだけでも価値があると思います。最初はお高く止まった印象を受けるサマーがバカップルのようなイチャつきをする様は、「アホかこいつら」と笑ってしまいましたが魅力的です。

この映画のもう一つの良さはとにかく演出が洒落てるところです。印象的だったのはトムが映画を見ているシーンで、画面が映画の内容に移った時、トム役のジョセフ・ゴードン=レヴィットが映画の中の人物に扮しているのです。つまり映画の内容がトムの心理描写そのままを表していて、映画が終わるとトムが寝落ちした様子が映り、トムの夢であることも仄めかしています。こういう細かい演出の良さが散りばめられていて、単なるラブストーリーに留まらない楽しい映画だと感じました。ミュージカルも取り入れていて、「ララランド」とか好きな人は間違いなくオススメできるでしょう。

という感じでネタバレをしない範囲で語ってみましたが、もしここまでで気になった人は一旦見てからまた会いましょう。

さて、ここからは物語の顛末も交えつつ、私が感じたこと、そしてタイトルの恋愛は偶然と根気について語っていこうと思います。

みなさんはこの映画を見てどう感じたのでしょう?友達曰くおおよそ男の人はネガティブな感想で、女の人がポジティブな感想を持つようです。私はと言うと、めちゃくちゃ面白かったし、かなり好きな映画でした。伝わってなかったかもしれませんが私は男性です。

この映画を好きな理由は端的に言うと失恋にスポットライトを当てて尚且つ前向きなエンドを迎えているところです。おんなじ理由で新海誠の「秒速5センチメートル」も好きですね。要するに恋愛の酸いも甘いもしっかり描写して、ご都合だけじゃない恋愛の現実を見せてくれて、最後にほんの少し励ましてくれるような映画です。

こういうこと言うとどこが励ましてるんだ!と同じ男から抗議の声が飛んできそうな気はします。まぁそれもそのはずで、自分には恋愛とか結婚とか考えられないと散々いっておいてあっさり手に指輪が嵌められてるシーンはなかなかキツイものがあります。(こういう描写も新海誠作品みたいですね。)しかも言っちゃえばセフレみたいな関係になって周りの男よりも特別だと思わせるような状況でしたからね。

そういう男性視聴者の辛さはとてもよくわかるのですが、僕は「まぁでもこんなもんだよね恋愛って」とどこかドライになれたおかげでまだダメージは少なかったです。

こんなもんの内容を詳しく言うなら、「恋愛はダメな時はダメだし、うまくいく時は驚くほどうまくいく」ということです。これがタイトルの偶然と根気に繋がってきます。

偶然というワードは作品内でも出てきます。それも一番最後のところで。個人的に作中一の名シーンです。

「トムは学んだ。壮大な宇宙の意味は日常レベルで判断できない。偶然。それが全てだ。偶然だけだ。彼は理解した。奇跡は起こらないのだ。運命の力など存在しないのだ。今こそ彼はそう確信した。(字幕版ナレーターより)」

少し言葉が難しすぎますね。偶然と運命ってなんか違いがわかりにくいですし、結局のところトムは学んでいないのでは?と解釈されかねない言葉です。吹き替え版だとどうなってるのか気になりますね。

私も正直混乱しているのですが、偶然と運命というのは現在か未来をみているかの違いじゃないかなと解釈しています。

サイコロの出目で例えてみましょう。私の考える偶然と運命ではサイコロの出目を以下のように解釈します。

偶然:出た目が全てだ。この出た目から自分がどうするか考えるしかない。
運命:今はちょっと出目が悪いかもしれないけどいつか自分の望む目がきっと出るんだ!

これでニュアンスが伝わればいいのですが、つまり偶然とは現在起こってる事象に対して使われる言葉で運命とはまだ起こってない事象に対して使われる言葉だということです。

これを恋愛に当てはめるとこうなります。
偶然:ここで出会ったのも何かの縁だし、声をかけてみようかな。
運命:きっといつかいい人が現れるはずだ。

なーんか一気にありふれた言葉になりましたね。まさに今回の映画のシチュで当てはめたわけですが。映画冒頭、つまりサマーに出会ったばかりのトムは運命側の考えに近かったと思います。自分の理想の究極の存在みたいなのがいて、それに当てはまるのが彼女なんだ!と考えてそうな感じで。それが結局サマーとの失恋を通して、最終的にたまたま居合わせたオータムに、ちょっとお茶に誘ってみようかなと偶然の縁を大事にして一歩踏み出すようになったわけです。

サマーの失恋が強烈すぎて目立ちませんが、トムが運命的な出会いを信仰するのをやめて、偶然的な出会いへのアプローチに切り替えたのはとても前向きなエンドだと思います。そういう意味で私は少しの励ましを感じるのです。

そして、ありきたりなハッピーエンドの恋愛映画では描写されない、失恋した側の物語にスポットライトを当ててくれるのはどこか嬉しいような気がします。というのも世の中の多くの人間は間違いなく失恋した回数の方が多いでしょうし、誰しもが人生の恋愛経験のほとんどがサマーにとってのトムになることが多いわけです。そのくせ多くの恋愛ものときたら同じように失恋した人間をさっさと退場させて恋愛の甘いを強調するわけです。そう思うとこの映画は失恋した人間にスポットライトを当てて寄り添ってくれる感じがするのです。そしてその上で偶然の出会いの中で見つかることもある、とささやかに後押ししてくれるわけです。

だから私はこの映画が好きなんですね。

さて、ここまででなんとか納得してくれたら嬉しいですが、まだタイトルの根気について触れてませんね。

根気について説明するなら、仮定の話をしなければなりません。映画では割とすぐに次の出会いがあったトムですが、そこは映画のご都合で残念ながら現実はそうはいきません。それになんならあの後オータムともうまくいかない可能性だってあるわけです。(映画の最後に日付のカウントで1と出るのは素敵な演出で好きですが)ダメだった時はダメだった時でまた次の人と1からカウントを進めていくだけですし、いつか500どころか10000とかそれ以上にカウントできる場合もあるわけです。くどいようですが、そうなるかどうかは、いつか実現されるわけではなく偶然の事象の中での振る舞い次第なわけです。

ここで問題になるのが、いつか10000日以上一緒にいれるような人と結ばれるまで果たして腐らずにいられるかということです。サマーと別れたトムも寝巻きで街中を歩くような酷い有様でしたが、あのまま腐って「恋愛はもういいや」なんて諦める可能性も十分にあります。

そこでやっぱり必要になるのが根気なわけです。なんだ根性論かよなんて言われるかも知れませんが結局恋愛ってのはスマートな解決法とかそんなもんがあるわけじゃなく、うまくいくまでトライするという案外泥臭いもんなんじゃないかなと思います。

スマートな解決法とかテクニックって調べればあるように見えますけどそれって結局結果論で、発信したその人がうまくいっただけなんですよね。人間関係なんて100人いれば100通りの方法があると言っても過言ではないわけで、テクニックだと確かに多少は仲良くはなれるかもしれませんが長く続く恋人になるとかディープなとこまでいけるかっていうと…。じゃあ結局どうするのかというと、自分で考えて最良の方法を選択し続けてその上でダメだった時はダメだったと切り替えて、関係がうまくいくまで諦めずにトライし続ける、そういう根気を持つことだと思います。

散々映画で辛い描写のあったトムだけど、オータム、あるいは他の誰かといつか長く結ばれる彼のようになるにはどうすればいいのか。

それは「いつかいい人に巡り会える」などという「運命」に期待はせず、出会いも失恋も含め「偶然」現実に起きた出来事を受け入れ、諦めない「根気」を持って、失恋のたびに次の恋愛に繋ぎ続けること…

…つまるところ恋愛は偶然と根気なわけです。

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