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【SS】愛しき人へ

月に1度…彼女がバスに乗ってくる日。
清楚で色白…細身の彼女。
降りぎわに甘い香りがほのかに漂う‥
ハンドルを握りながら、密かに心待ちにしている日だ。

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休みの日…
買い物をする彼女を見かけたので
私は思い切って声をかけた。

「あの…こんにちは…」

「あ…こんにちは…」

「いつもご利用ありがとうございます。
 バスの運転士です。。」

「あ‥こちらこそ、いつもありがとうございます。
 服装が違うので分かりませんでした。
 何処かでお会いした事がある方だなぁとは思ったんですが…」

戸惑った笑顔が綺麗だった。

初めはぎこちなかった会話も徐々に弾むようになっていく。

初めてじゃない感じがとても心地良い。
何より彼女の頭の中に私の面影があったのだ。
このうえない嬉しさが込み上げる‥‥

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いつの頃からか頻繁に連絡を取り合うようになったが
お互い忙しく時間が合わない。

彼女に寂しい思いをさせてしまっている‥と思いつつ
どんどんすれ違う日が増えていった。

そんな時、彼女から提案が‥

「会うのは月1度にしましょう。それも叶わなければ、お別れしましょう」と。

私は受け入れた。

彼女とは月に1度だけ会う事にした。
勿論、バスで会うのを入れれば月に2度だが‥


そんな事を繰り返し‥‥月日が流れた。

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そして‥今‥


彼女は私の隣にいる。
何気ない笑顔や言葉が愛おしい‥

思い切って話しかけた時の事は忘れない。
月に1度、君と過ごしたあの時間は
かけがえのないトキだったよ。

これからも‥一緒に歩いて行こう。

この先もずっと一緒に‥‥