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長野県下諏訪町に移住した綿引遥可さんのLOCAL MATCH STORY~人のため。自分のため。両方を大切にするライフスタイルを実現できた地方移住〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、長野県下諏訪町に移住された地域おこし協力隊OGの綿引 遥可さんをご紹介します。
そして、この記事は綿引さんご本人に執筆いただきました。

自己紹介

綿引 遥可(わたひき はるか)

茨城県水戸市出身
長野県諏訪郡下諏訪町(しもすわまち)在住
合同会社 chioko 業務執行社員

大学時代に空間デザインを学んだ後、都内でハウスメーカーに就職し、営業推進やブランディングに携わる。
その後、2017年に長野県諏訪郡下諏訪町に移住し、地域おこし協力隊として移住定住促進に従事、3年間活動する。
2020年の協力隊退任後、同期と合同会社 chioko(ちおこ)を立ち上げ、ワクワクが出発点の小さなしごとづくりを応援する連続講座「小商いヤッテミレバ!キャンプ」など、まちに暮らす人がより幸せになれるような事業を行っている。

私が移住した下諏訪町はこんなところ

長野県で一番大きな湖、諏訪湖のほとりに位置する人口約2万人の小さな町が、私が移住した下諏訪町です。町中でも標高は約760mと高所にあり、冬は厳しい寒さになりますが、実は雪はあまり積もらないという特徴があります。
日本最古の神社とも言われる諏訪大社の神事で日本三大奇祭のひとつ「御柱祭」、中山道と甲州街道の合流地点、エアコンで有名な美しい草原が広がる霧ヶ峰、毎分4,100リットルの湧出量を誇る豊富な温泉など…下諏訪町という名前こそ知られていないですが、実は魅力がたくさんある町なのです。
近年では、空き店舗をリノベーションした個人で営む面白いお店が増えたり、全国から人が集まる元旅館のゲストハウスがあったり、歩きや自転車で巡れるようなコンパクトなエリアに、新旧の良いものが詰まっているのも魅力のひとつです。

風景(諏訪湖)

写真:長野県で一番大きな湖、諏訪湖から眺める下諏訪町

なぜ移住しようと考えたのか

いくつかの理由が重なり、東京で新卒入社した会社で働き続けることが難しく、次にどうするかを決めずに退職をしました。前職では仕事に手一杯で、プライベートを楽しむ余裕がなく、都会のペースは「自分にとっては早過ぎる」というように感じていました。
仕事と暮らしの調和が取れた無理のない生き方を模索したいと思い、気になることには飛び込んでみようとアクションした中のひとつが、偶然見つけた下諏訪町が主催の空き家リノベーション体験ツアーでした。
二泊三日の滞在で町に暮らす様々な方との出会いがありましたが、よそ者でも親みを持って迎えてくれたことに驚き、多くの町民が町への誇りを持っていることも強く感じました。元々移住を考えていたわけではありませんが、その経験をきっかけに、私も下諏訪町の仲間に加わりたいと強く感じるようになり、結果的に移住することになりました。

なぜ移住しようと考えたのか:よそ者でもあたたかく迎え入れてくれる地元の方々

写真:あたたかく迎え入れてくれる地元の方々

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移住するまでこんなことありました

当時の私は、地方で生きるためには専門性や特別なスキルが必要だと思っていたため、移住は今の自分には難しいのでは?という不安がありました。そんな中、ツアーで接点ができた町役場の方から、下諏訪町初となる協力隊を募集するとお声がけいただきました。しかも、私もリノベーションに関わった移住交流施設の運営が業務に含まれることを聞き、「やってみたい!」と素直に感じました。
縁もなければ元々の知人もいない。そんな土地へ移住することへの不安もありましたが、家族や友人、下諏訪町の方にも相談したところ、私の気持ちや直感を後押ししてくれる方が多く、移住に踏み出すことができました。
下諏訪町の存在を知ってから移住するまでは、わずか3ヶ月。人生で一番思い切った決断でしたが、いつもはのんびり屋なのにスピード感を持って行動できたということは、それほど「やってみたい!」という気持ちが強かったのだろうし、考え過ぎずに飛び込んでみたことが、私にとっては結果的に良かったのだと思います。

移住するまでこんなことありました:まさか移住するとは思っていなかった下諏訪初来町時

写真:まさか移住するとは思っていなかった下諏訪初来町時

移住後のライフスタイル

東京で会社員をしていた頃の通勤時間は片道1時間半ほど、くたくたに働き帰宅したら寝るだけ、コンビニ食に頼りきりの不摂生な生活でした。
一方で、下諏訪町での通勤時間は5分ほどで、町内の用事は専ら自転車で済みます。移動と仕事に費やしていた時間が減った分、自由に使える時間が増えて、それまでできなかったことに取り組む心の余裕がうまれました。
苦手な料理にチャレンジして土鍋で米を炊いたり、仕事の前に朝焼けを見に行ったり、友人のリノベーションのお手伝いをしたり。人のためと自分のため、両方を大切にできるライフスタイルがおくれるようになったと実感しています。

移住後のライフスタイル:趣味の自転車を共にする仲間も見つかった

写真:趣味の自転車を共にする仲間も見つかった

移住してわかった地方暮らしの魅力

協力隊時代の住まいと、任期後に引っ越した住まい、どちらも人づてで見つけた物件です。
移住を決めた当初、インターネットで情報収集をしていましたが、首都圏と違い掲載数も少なく、希望の物件を見つけることができませんでした。何よりせっかくの地方暮らしなら、古くても戸建に住みたい!という思いがあり、来訪時に繋がりができた方に相談したところ、職場の方が所有していて貸せる物件があるとご紹介いただきました。また、現在の家探しの時には「こんな家を探しています」のチラシを作って配り、情報が集まってきた中から決めました。
どちらの住まいも、東京の住まいの半分ほどの家賃なのに、2階建の一軒家なので広々と使えていて大満足です。大家さんに許可をもらい、念願の猫を迎えることもできたことも、移住して良かった点のひとつです。
但し、築年数は50年ほどの昭和な家なので、断熱がほとんどなく冬はとっても寒いです。他の移住者の方も古い家に住んでいる方が多く、お互いの知恵を共有しながら、暖かく過ごせるよう工夫して暮らしています。

移住先でのお金事情について

移住後の収入は、移住前の半分ほどになりました。額面だけだと不安になりますが、単身での移住だったこともあり、なんとかなる!という気持ちで移住しました。結果的に生活が厳しくなったという実感はありません。収支の両方が減り、お金の使い道が変わったというように捉えています。
実際には、物価が首都圏より安いという印象はなく、車の維持費や暖房費などの東京での暮らしにはなかった出費もあります。一方で、近所の方が食べきれないほどお野菜を分けてくれるなど、お金以外で助かる場面も多々あるのです。
また、東京時代は無駄遣いや衝動買いが多かったのですが、今は知り合いのお店や作家さんから買い物をするようになり、顔が見える相手へお金を使うようになりました。以前は、買い物という行為がストレス発散のためでもありましたが、今はワクワクするものへと変わったのも大きな変化です。

移住先でのお金事情について:畑のお手伝いの報酬はお野菜のおすそ分け

写真:畑のお手伝いの報酬はお野菜のおすそ分け

移住先での暮らしで困ったこと

小さな町であることに加え、協力隊活動を取り上げていただくことも多く、顔や名前が地域の方によく知られていました。そのため、プライベートでも声をかけられることもあり、ありがたい反面で気が抜けないと感じてしまうこともありました。
時には都会の匿名性が懐かしく、誰も私のことを知らないところに行きたいと思うこともあり、毎月のように県外に出かけることが息抜きになっていました。しかし、結局は自分の地域の良さを再認識する機会にもなり、私にとっては下諏訪町が一番!と、恋しい気持ちになって帰ってくるのでした。

地域おこし協力隊に応募した理由

移住定住促進をミッションとする下諏訪町の地域おこし協力隊という形だったら、
①取り柄のない私でも、収入を得ながら好きになった町に貢献できそう
②活動や色んな人との出会いを通じて、今後のやりたいことを模索できそう
③仕事と暮らしが近そうなので、どちらも諦めない生き方が実現できそう
と考えたからです。
専門性や特別なスキル、これをやりたい!というような情熱がある訳でもなく、でも稼ぐために働くと割り切れもせず、仕事にも暮らしにも楽しさを求めたいという考えを持っていました。しかし、協力隊だったら、そんなわがままな私にもぴったりの働き方だと思い、応募に至りました。

地域おこし協力隊の活動内容

ミッションは町への移住定住促進でした。まずは地方に興味がある若い世代の町のファンを増やし、将来的な移住先として町を選んでもらう、それが着任当時からの移住定住促進の方針でした。小さな町ではありますが、だからこそ個人のやりたい夢を応援できる町を目指したのです。
私たちの主業務は、空き店舗を利活用した移住交流施設の運営でした。気軽な気持ちで来訪してもらうことを意図し、役場に来ていただかなくても移住経験者である協力隊と話ができる体制をつくりました。商店街に位置しているからこそ、地域の方もふらりと立ち寄ってくれるので、居合わせた移住検討者の方と会話が弾むこともしばしば。他にも、移住体験ツアーや、起業したい方と地域の方を繋ぐワークショップ、東京への出張イベント、移住と開業を後押しするお試し住宅などを企画しました。

地域おこし協力隊の活動内容:様々な方が集う移住交流施設

写真:様々な方が集う移住交流施設

事業を始めようと思ったわけ

地域に貢献しながら大好きな下諏訪町に暮らし続ける手段として、同期の協力隊と二人で会社をつくるという選択肢を、任期中から漠然と考えていました。
また、協力隊以前はお勤めをしていた私たちは、特技や資格などがないことに悩み続けていました。そんな普通の人でも、地域で自分らしい仕事をつくっていけるというロールモデルになり、同じようにモヤモヤを抱えている人に生き方を提案したいと考えました。
そこで、まずはお互いに別の収入も確保しつつ、「小さくことをおこす、地域の黒子」のような役割を担うまちづくり会社「合同会社chioko」をつくりました。

会社キービジュアル

写真:合同会社chiokoのキービジュアル

事業を始めるまでにやったこと

協力隊の業務やその延長で、事業化を目指したいと考えていました。そのため、協力隊時代の後半くらいから、自分たちがやろうとしていた事業のニーズがあるかのリサーチと改良のため、とにかくやってみることを重ねました。
加えて、事業や会社について助言をくれる仲間が何人かいたので、協力隊の任期満了のタイミングでスタートが切れるように、相談して準備を進めました。このような試行期間があることや仲間ができることも、協力隊だったからこそと言えます。また、下諏訪町役場のみなさんにも方針を共有し、理解や協力が得られたのも大きかったです。

事業の内容について

「地域への愛着と主体性を持ち、愉しく生きる人を育む」ことをミッションに、町の活気づくりでお役に立てそうなことは積極的に取り組みますが、大きな事業の軸はふたつです。
ひとつは、好きや楽しいという前向きな気持ちが出発点の「小商い」という新しい仕事の形を応援する【小商いヤッテミレバ!】事業です。自分のやりたいことが、誰かが喜ぶ小さな仕事になる、そのような人が増えれば増えるだけ、人も地域も豊かになると思います。そのやりたいことに一歩を踏み出せない人を後押しし、仲間と一緒に小商いを形にするまでをサポートする実践講座を開催中です。
もうひとつは、地元民から愛される昔ながらのお店と、若い方が新規オープンさせるお店がいりまじる【御田町商店街の視察ツアー】事業です。大きな資本がなくても、あるものを生かしてできる人がやる無理のないまちづくりの形で、空き店舗0を達成した御田町商店街の事例をご紹介し、一緒にお店めぐりをするというものです。

活動写真(商店街視察)

写真:御田町商店街の視察ツアーの様子

事業の今後のプラン

現在は諏訪地域の女性をメインに展開している【小商いヤッテミレバ!】事業ですが、長野県域とエリアを広げたり、増え続けているご年配の方を対象としたり、より多くの方に提供できるサービスにしていきたいです。自分らしく人の役に立ちながら愉しく生きる個人がもっと増え、下諏訪町に限らず良い町が増えたらいいな、と思っています。

活動写真(小商い事業)

写真:【小商いヤッテミレバ!】事業で実施する講座の様子

地方で起業して分かった面白さ、やりがい

地方に根付いたまちづくり会社として起業したことで、喜んでくれる人の顔が直に見られるというのが一番のやりがいです。
まだまだ起業したばかりで、恥ずかしながら自分たちの強みやサービスも確立していないのですが、思いがけないご縁で声をかけていただき、それが仕事に繋がることもあります。また、身近な方のちょっとした困りごとの中にも、仕事に繋がるヒントがあります。元あるものを生かしつつも、新しく仕事をつくっていくという過程にもワクワクを感じます。

移住検討している方へメッセージ

移住も起業も、自分らしく生きるための選択肢ではありますが、必ずしも幸せになるための正解ではないと思います。私は移住をすることで、行動するのも決断するのも、いつも自分自身だということを実感しました。自分の心に従って、誰もが自分らしい暮らしや働き方を叶えられますように!

移住検討している方へメッセージ:下諏訪町との出会いで自分らしくいられるようになったchiokoの二人

写真:下諏訪町との出会いで自分らしくいられるようになったchiokoの二人

【参考URL】
・下諏訪町
 http://www.town.shimosuwa.lg.jp/www/index.html
・合同会社chioko (掲載:トコトコ諏訪)
 https://www.toco-suwa.com/detail/61/index.html
・下諏訪町地域おこし協力隊 移住定住促進チーム Facebookページ
 https://www.facebook.com/meemeecenterSumeba

(終わり) 執筆時期:2020年9月

LIFULL 地方創生からお知らせ

地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」のティザーページ公開

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