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長野県中野市に移住した榎本郁美さんのLOCAL MATCH STORY~農業の生産者と消費者を繋ぐ架け橋になりたい〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、長野県中野市に移住された現役地域協力おこし協力隊の榎本郁美さんをご紹介します。そして、この記事は榎本さんご本人に執筆いただきました。

私の自己紹介

榎本 郁美

東京都出身 埼玉県育ち
長野県中野市農政課(地域おこし協力隊)

大学で栄養学を学び、大学卒業後は学校給食調理員として6年間、小学校の給食を作る仕事をしていました。農業にも興味があり、社会人になってから、農業体験イベントや住み込みのお手伝いなども行いました。
また、副業としてアルバイトをしていた定食カフェ「都電テーブル」ではホールスタッフとしての仕事だけでなく、お店で企画するイベント運営のお手伝いや、自身でも子供向けの食育イベントを企画したりしました。
2020年4月から中野市地域おこし協力隊として移住し「食から農業を活性化」というミッションで活動しています。

私が移住した地域はこんなところ

長野県の北部に位置し、人口は4万2000人です。信越国立公園志賀高原や北信五岳など、豊かな自然に囲まれた盆地にあります。市を南東に横切る千曲川(信濃川)周辺は、中山間地域に特有の標高差と朝晩の寒暖の大きさ、日照時間の長さなどから、おいしい果物や野菜が育つと言われ、とくに巨峰やシャインマスカット、農閑期の副業として始まったエノキタケは全国有数の生産量を誇ります。

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写真:お天気が良い日は北信五岳がきれいに見えます。

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写真:雪化粧した高社山はとてもかっこ良くて見惚れます。

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なぜ移住しようと考えたのか

私の祖父母は東京と埼玉にあるマンションに住んでいて、田舎に里帰りをするという経験をしたことがありませんでした。そのため小さい頃に観た「となりのトトロ」の暮らしがとても魅力的に思えたのを覚えています。
また映画「リトル・フォレスト」を観て、自然に寄り添い、季節を感じる丁寧な暮らしが素敵だなと感じ、いつかこんな生活がしてみたいと思っていました。

移住するまでこんなことありました

山登りが趣味で、去年のGWに志賀高原にある横手山頂ヒュッテという山小屋でアルバイトをしていました。そこで中野市の地域おこし協力隊に出会い、中野市の存在と地域おこし協力隊という制度を知りました。
農業に興味があり、自然の中での暮らしに憧れがあることを話すと、中野市地域おこし協力隊の先輩がプロデュースした移住者向けのツアーを教えてもらいました。
そのツアーに参加し、中野市のちょうど良い田舎を実感。
ここなら一人暮らしが初めての私でも生活できそうだなと感じました。

ただ日帰りツアーだったため、もう少し詳しく中野市のことを知りたいと感じ、ツアー担当者の方に相談しました。その後、信州伝統野菜である“ぼたんこしょう“を作っている農家さんと繋いでいただき、その年の夏に、2週間ほど住み込みでお手伝いをさせていただきました。
農作業だけでなく、地域のお祭りに参加したり、地元の方と繋がることができ、中野市の豊かな自然と人の温かさに惹かれて迷わず移住を決意しました。

中野市を知ってから移住を決めるまでわずか3か月。出会いとタイミングが合い、トントンと話が進んだ感じです。

移住後のライフスタイル

~1日のタイムスケジュール~
6:45 起床
8:15 出勤
8:30-17:00 勤務
17:15 帰宅
17:30-19:00 おやつタイム、自由時間
19:00-20:00 夜ご飯作り
20:00-20:30 夜ご飯
20:30-21:30 後片付け、のんびりタイム
21:30-22:30 お風呂
23:00 就寝

移住して大きく変化したのは通勤時間です。今までは埼玉から東京の職場まで1時間15分かけて通勤していましたが、今は徒歩10分で職場に着きます。往復で2時間も新たな時間が生まれました。
そしてもう一つはご飯の献立の立て方です。今までは献立を立ててから必要な食材を買いに行っていたのが、今は野菜をたくさんいただくことが多いので、その野菜をどう調理するかで献立を立てるようになりました。

移住してわかった地方暮らしの魅力

私の住む中野市街地には歩いて行ける範囲内にスーパーやドラックストアがあり、駅までも歩いて行けるので電車に乗って長野市まで買い物にも行けます。
中野市は観光に弱いですが、少し車を走らせれば野沢温泉、小布施、湯田中といった観光地があり、趣味の山登りやキャンプも十分楽しめます。
また、周りは山に囲まれて、市街地を抜けると、りんごやぶどう畑が広がり、農作業の様子や四季の移り変わりを肌で感じることができます。

中野市の自然と人の温かさに出会い、埼玉に住み東京まで仕事に行っていた時よりもはるかに豊かな生活になったなぁと感じました。
受け継がれきた伝統や文化、そして自然、それらが染み込んだ生活や人の繋がり、都心では感じにくいにその温かな空気感がとても好きです。

自然と生活圏の距離感がちょうどう良いバランスで、私のような移住初心者にはとても居心地が良く住みやすい環境でした。

職場の上司の方に誘っていただき憧れの槍ヶ岳へ

写真:職場の上司の方に誘っていただき憧れの槍ヶ岳へ

カレーの具材、お米、きゅうり、ブルーベリー!全部いただき物で作った夜ご飯!

写真:カレーの具材、お米、きゅうり、ブルーベリー!全部いただき物で作った夜ご飯!

移住先での住まいについて

中野市街地にあるアパートを借りて暮らしています。アパートはネットを使い自分で探しました。部屋の間取りは2DKで、車1台まで駐車可能で家賃47000円です。
協力隊の活動費で5万円まで家賃補助が出ます。
都心に比べると家賃が安く、中野市街地ならアパートもたくさんあります。

移住先でのお金事情について

私の場合、前職に比べるとお給料(家賃補助を含めると)がよくなりました。また野菜や果物、お米なども農家さんからたくさんいただけるので食費の面でもとても助かっています。今までの貯金もあったので、資金面では今はそんなに困っていません。

移住先の暮らしで困ったこと

ついこの間までは困ることが思いつかないほど暮らしやすく満足していました。
それが12月になり、慣れない雪と寒さに格闘しています。ただ景色は冬が1番キレイかもしれません!

地域おこし協力隊に応募した理由

憧れの一人暮らしができ、興味のあった農業と食をテーマに、自分のやりたいと思ったことを仕事としてチャレンジできるという点です。
また去年の夏に、ぼたんこしょう農家さんの所でお手伝いをした際、深刻な後継者問題を知り、何かお手伝いをしたいと思ったことが理由です。

地域おこし協力隊になるまでにやったこと

中野市について少し調べたり、ぼんやりと現段階でやりたい活動をまとめてみたりしました。ただ、具体的なことは実際行ってみないとわからない部分も多かったので深くは決めませんでした。

地域おこし協力隊の活動内容

「食から農業を活性化」というミッションで、伝統野菜のぼたんこしょうを中心に中野市の農産物や地域の魅力を発信しています。
週の半分は畑作業やぼたんこしょう加工品の製造、その他の日は市役所でSNS発信の記事を書いたり、イベントを企画したりしています。
私は農政課という農業メインの部署に配属になりましたが、観光や空き家担当の部署の方とお仕事をすることも多いです。

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写真:Zoomを使い参加者さんと一緒にぼたんこしょうの郷土料理を作りました。

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写真:作業の合間にある大好きなお茶の時間。皆さん手作りの漬物やこびれ(おやつ)を持ち寄ります。

地域おこし協力隊の受け入れ体制や関係する人々

中野市では、基本的に市役所の職員ということで、席は市役所にあります。
私の場合ミッションはありますが、フリーミッションに近く、自分から動かないと仕事はほぼ生まれません。ただ困ったことや、協力してほしい仕事があればいつでも相談に乗ってもらえます。
月に2回、活動内容を書類で提出しています。今年はコロナ禍の影響もあり隊員同士集まってのミィーティング等はほとんどありませんでした。

地域の人との関係構築

初めは先輩隊員について行き、色々な方を紹介していただきました。去年の夏に中野市でお世話になった時の繋がりもあったので、その点はとても心強かったです。
都心と比べ人との繋がりが強いので、一人繋がるとその方がまた違う人を繋いでくれて勝手に人脈が広がっていく感じがしました。
あとは、地域の人を頼る姿勢がとても大事だと思いました。一人でやろうとするよりも、助けてあげたいと思われる人のほうが地域に早く溶け込めると思います。

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写真:ぼたんこしょう保存会の皆さんと撮影

地域おこし協力隊の3年計画

【1年目】知る・繋がる
私は中野市でやりたい仕事が明確にあって移住した訳ではありません。そのため、まずは中野市のことを知りたいと思い、絞らずに色んなことを経験させていただいています。
その中でやってみたいことはいくつか出てきましたが、やりたいことを仕事にして生計を立てる難しさも感じています。

【2年目】チャレンジ
地域おこし協力隊の間は、協力隊としてお給料を頂けるので、失敗を気にせず思い切りチャレンジできる貴重な時間だと思っています。退任後の仕事になるかどうか、ということは深く考えず、とにかく自分のやりたいと思ったことをやってみようと考えています。

【3年目】形にする
2年目にチャレンジした中で自分がやっていきたいと思う活動を、退任後の生活の中にどのような形で取り入れるのかを具体的に考える1年になると思います。
それで生計を立てられるのか、難しいなら、また栄養士として働きながら副業として地域の活動を続ける形も選択肢として考えています。

地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと

中野市に移住し、収穫だけじゃない農業を体験して、作り手の思いや苦労をたくさん感じました。そして改めて、生産者と消費者を繋ぐ架け橋ができたらいいなと思いました。
信州伝統野菜のぼたんこしょうに限らず、日本全国ありとあらゆる農作物が後継者問題に直面していると思います。私自身、農業に興味はあっても結局、就農する勇気はありませんでした。それは農業に対する魅力よりも不安要素が勝ってしまう、農家に対するハードルの高さが原因にある気がします。
例えば農業と何かを掛け合わせたりして、もっとライトな農業があってもいいんじゃないかなと。多くの人が農業を身近に感じられるような、農家になるだけが農家じゃない、新しい農業の関わり方を見つけたいなと思います。

地域おこし協力隊の魅力

お給料をもらいながら自分の夢を叶える準備ができるところです。
なので、自分で何か新しいことを始めたいと思っている方には良い制度だと思います。
また地域の人と関わる際も、地域おこし協力隊という肩書でどこに行っても怪しまれずに快く受け入れてもらえるところはとても良い点です。

地域おこし協力隊の大変なところ

好きにやって良いようで、お給料をいただいているので、市役所としては目に見てわかる成果を求められます。
また、一般企業だと与えられる仕事がありますが、協力隊は退任後の自分のなりたい姿に向かって自分で仕事を作り出さないといけないけません。そこが何より大変だと思います。
ただ、自分の生き方とちゃんと向き合うようになったのも、地域おこし協力隊になったおかげだと思います。

移住検討している方へメッセージ

もともと私は”地域おこし”をしたくて移住したのではなく、自分の理想の”暮らし”を見つけるために地域おこし協力隊の制度を利用したと言うほうが本心に近いかもしれません。
ただ地域おこし協力隊として活動していく中で、協力隊として移住したからには、みんなのように起業をして、地域のために何か形になるものを作らないといけないのではないか、と退任後の姿を必死に考えるようになりました。
しかしその途端、楽しかった活動が一気にプレッシャーに変わり、自分が移住したかった本当の理由が見えなくなってしまいました。

悶々と悩んでいる中、とても嬉しい出来事がありました。去年の秋に、ぼたんこしょう農家のおばあちゃんと一緒にZoomを使ってオンライン料理教室を行ったのですが、その体験がとても思い出に残ったそうで、年賀状の写真をその時の写真にすると言ってくれたのです。
「いくちゃんが来てくれなかったらこんな体験できなかった~とても楽しかったよ!」と色んな地域、年代の人がかかわる事で、新たな発見が生まれます。そのきっかけ作りも十分地域おこしになると感じました。
そして何より、私が来たことで一人でも笑顔になってくれことがうれしかったです。

移住を検討している方は少なくとも今を変えたい方だと思うのですが、一つ言えることは動かない限りなにも変わらないということです。
動いた先に私のように迷い、悩むこともあると思います。でも私は中野市に移住したことで、色んな面においてとても成長することができ、なりたい自分に確実に一歩近づけたと思います。
今の苦しい世の中で自分の生き方を模索しながら働ける環境に感謝し、自分なりの協力隊の姿を探していきます!

中野市地域おこし協力隊の活動をFacebook、Instagramにてアップしています。私の中野市での活動を見守ってくださったら嬉しいです。

【中野市地域おこし協力隊のFacebook】https://www.facebook.com/nakanokyouryojutai/
【中野市地域おこし協力隊のInstagram】
https://www.instagram.com/shinshu_nakano_kyouryokutai/?hl=ja

(終わり) 執筆時期:2020年12月

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