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和歌山県由良町に移住した橋本美奈さんのLOCAL MATCH STORY 〜地方移住で生きること、働くことを身近に感じられる理想のライフスタイル〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、和歌山県由良町に移住された現役地域おこし協力隊の橋本 美奈さんをご紹介します。
そして、この記事は橋本さんご本人に執筆いただきました。

自己紹介

橋本 美奈(ハシモト ミナ)

大阪府県枚方市出身
和歌山県由良町 産業建設課 (地域おこし協力隊)

資格取得の勉強をしながらのフリーターを3年経て、店頭販促の強化・サポートをする株式会社メディアフラッグ(現:インパクトホールディングス株式会社)に就職し、現場を巡回するVMDラウンダー(※)やイベントスタッフとして、店舗の数字を伸ばすための人材教育や全国各地で行われる週末イベントの現場責任者として、クライアントの業績向上に携わる。
その後、2018年5月に和歌山県由良町の地域おこし協力隊として移住。
産業建設課に所属し、観光・産業(農業・漁業)・商工業に関わる業務を行っている。

※VMD = visual merchandising(ビジュアル マーチャンダイジング)
視覚的に店舗の売り場や販売チャンネルにおける演出や装飾の最適化、それに関係した幅広い活動を専門的に行う業務。

私が移住した地域はこんなところ

和歌山県のちょうど真ん中あたりに位置する由良町は人口約5600人のまちで、海と山に囲われた自然豊かな地域です。観光地として石灰岩が一面に広がり日本のエーゲ海と呼ばれる道の駅“白崎海洋公園”が有名です。
海沿いの山にはみかん畑が広がっています。5月のGW頃に満開をむかえるみかんの花畑の香りは都会では感じられない空間で、小さな白い花は神秘的です。由良町発祥の温州みかん“ゆら早生みかん”は10月に市場に出回る極早生の品種で、見た目がきみどり色をしていますが、しっかりした糖度と酸味とのバランスが絶妙な品種で、まちの名前が付いたみかんを地域の方々は大切に育てています。1月には海辺で“わかめ”の養殖が始まります。その光景には圧倒されるのに、食感は柔らかくて食べやすいのが特徴です。その柔らかさを活かした、わかめの軸の佃煮が、絶品でお土産としても人気です。

ゆら早生みかんと海

写真:海沿いのゆら早生みかん畑(9月撮影)

白崎海洋公園

写真:観光地道の駅白崎海洋公園

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なぜ移住しようと考えたのか

30代に入る直前、10代の頃に想像していた30代が目の前に広がっていないことに焦りを感じたのが最初のキッカケでした。10代の私は、30歳では結婚しているんだろうな。と想像していました。この時に「このままでいいのだろうか。」「私にできることはどんなことなのだろうか。」を考え始めました。
今までの経験を活かすことができて、私の人生にも意味のある生き方(仕事)をしたい。その結論の先に、環境に変化を付けることができる“移住”とその地域の方々と繋がり、仕事を創っていく“地域おこし協力隊”のお仕事がピタリとはまったのだと思います。

移住するまでこんなことありました

地域おこし協力隊の任期は最長でも3年間と全国統一で決まっています。任期を全うしてもその先が一切保証されていない。という事実には少し不安を覚えていました。それまでの人生は何となく次が見えているような見えていないような、そんなストーリーの中で生きていたからだと思います。
心の準備をしっかりとしてしまうと、いざ行動する。ということができなくなってしまうような感覚があったので、とりあえず、状況に身を置いてみることを始めようと、特に深く考えずに準備をすすめるように心がけていました。行動のブレーキはどうしても心から生じるので、行動してみて心が付いてこなければならない状況にしてみようと。思い切って「移住」を決めてしまいました。
転職活動をしよう。と考えだしてからほんの1ヶ月くらいで、全部決めてしまって、その後何とかする。という状況でした。

移住後のライフスタイル

朝はだいたい5時台に起きます。音楽を聴きながら、珈琲をドリップして朝食を食べながらメールをチェック、と1日の仕事の整理をしてからしっかり準備して出勤します。定時は17時なので、ぴたっと仕事を終えられる日は17時半には自宅で夕食の準備を始めています。20時には寝る準備が大体できているので早い日は21時には就寝しています。
都会でバタバタとしていた時は、朝7時に起きるのも苦手できちんと朝食を摂る。ということも意識していなかったです。生活習慣の改善。といった意味でも、移住先のライフスタイルはとても気に入っています。通勤時間が2~3時間から5~10分になり、自分の時間と呼べる時間が年間を通じて膨大に増えたのが1番の変化だと思います。

移住してわかった地方暮らしの魅力

都会に比べ施設が少ないのは良く知られていますが、実は情報もとても少ないです。情報収集のかたちは、“たくさんある情報の中から取捨選択する”から“自分の欲しい情報を取りに行く”に変化したように感じています。
選択のひとつひとつが、自分の軸から捉えることができるので、その先がブレにくいようにも捉えています。私は地方の魅力のひとつに「なにもない」があると考えています。

移住先での住まいについて

私が着任した地域では自治体が準備してくれました。築40年以上のアパートに住んでいます。2DKのお部屋で家賃は約3万円弱。現在家賃は活動費から捻出されています。
地域おこし協力隊という職業は“移住する”ということから仕事が始まっているので、大げさに言えば24時間仕事体制です。自治体担当者さんは「地域と離れ、自分だけの時間も必要だ」という視点を大切にしたいと、あえて地域に入り込んでいない場所を選んでくださったと聞きました。
個人的にもオンオフを切り替えるためのこの体制がとてもよかったと感謝しています。

移住先でのお金事情について

地域おこし協力隊の賃金も全国統一されています。自治体によっては副業も認められていて、地域おこし協力隊自体が副業だという方にもお会いしたことがあります。ひとり暮らしをして2年間は特に副業をせずにいましたが、特に困ったことはなかったです。
買い物をできる場所が少ないので普段の支出は大幅に減りました。近所のスーパーも7時には閉店します。出費が特別増えたと感じるのは車関係でした。移動手段が全て車になるので、車を選ぶときは燃費も大切ですが田舎では細い道が多いので小回りが利く車種が重宝すると思います。

移住先の暮らしで困ったこと

1番困ったのは虫でした。都会では見かけない大きさの蛾(手のひらサイズ)が、予想できないところにとまっているので、1年目は常に虫を警戒していました。窓を全開にしているとつばめも入ってきたりします。1年を過ごしてみると、どの季節にどんな虫が何処にくるのかがわかるので、2年目以降はそこまで気にならなかったです。山の近くに住んでいるので、どちらかというと私が山に住ませてもらっているという感覚になりました。
他に困ったのは電波状況です。自分が使用している通信機器のキャリアの都合もあるかもしれないのですが、個人的にはマルチキャリアに対応しているポケットWi-Fiが使いやすくて重宝しています。 

地域おこし協力隊に応募した理由

転職を考えていた時に、1番最初に選択肢として声をかけられたのが“地域おこし協力隊”でした。制度自体は知っていましたが、自分がその制度を使うことは想定していなかったです。田舎暮らしには憧れていましたが、移住までは考えていませんでした。
転職する時に大切にしていたのが“環境をガラっと変える”ということだったので、その点でも協力隊という職種がぴったりとハマりました。
着任してから他の地域の隊員さんたちが、色んな地域を見学したり話を聞いたりして決めた。という話を聞くので、そんな決定の仕方もあったのかと驚いたくらいです。

地域おこし協力隊になるまでにやったこと

どんなことを準備しておけばいいのか。を移住する前に自治体担当者さんに半日ほど協力いただいて、ヒアリングをしっかり行いました。その地域や担当者さんが何を大切にしていて、どうしたいのか。をイメージすることが大切だと思っていました。
あとはわくわくすること。自分自身がしたいこと。の棚卸しをする。など、妄想ばかりをしていたように思います。
最終目標を決めつけすぎないようにしていました。

地域おこし協力隊の活動内容

私が関わる範囲は観光業・産業(農業・漁業)・商工業という分野で、協力隊ではこのような働き方をフリーミッション型と呼ばれています。達成目標が抽象的なため、隊員自ら地域に入り、課題を見つけその課題を解決するために地域の方々と協力して、業務を遂行します。1年目で地域の魅力を掘り起こし情報を精査し発信をはじめ、その魅力を価値(お金)に変換していく仕組みづくりを2年目で取組み、3年目で実績を作っていくということをしています。具体的には、みかん(農業)やわかめ(漁業)が特産品なので、それをまとめて、『まちの魅力は山の幸と海の幸がまとめて味わうことができます!』という売り込み(観光・商工業)をしています 。

キーノ店頭6月

写真:特産品を集約したポップアップショップを和歌山市内で展開(6月撮影)

地域おこし協力隊の受け入れ体制や関係する人々

地域おこし協力隊の制度ができて約10年ですが、活用を開始するタイミングは自治体によって異なるため先輩隊員がいる・いない。が、3年間の活動をする上で大切になってくると思います。私が着任した地域では先輩隊員はおらず、私が1代目でした。自治体も地域も私自身も、地域にとって“地域おこし協力隊”はどんな立ち位置で活動するのがベストなのだろうか。とそれぞれの目線で試行錯誤するような3年間だというように感じています。
私はレールがないようなところにレールを敷いていくような活動も、活動の一部だと認識するようにしていました。他の地域の協力隊に話を聞くと、すでにその地域で3代目の協力隊であればできることもサポート体制も大きく異なっていることなることがわかります。羨ましく思わなかったか、と問われればそう感じたこともありますが、1代目には1代目にしかない苦労があるのと同時に達成感もあるのだと感じています。
今後は来期新設させる制度も視野に入れて、地域に提案してきたいと考えています。

地域の人との関係構築

地域の方々への紹介は役場の担当者さんがしてくれました。地域の方々に限らず誰かと関係を作っていくときは誰の紹介であるか。がとても大切だと思います。なので、繋いでくださった担当者さんにはとても感謝しています。もちろん、挨拶をきちんとする。や礼儀正しくする(帽子をとる等)のは地方に限らず、当然のことのなのですが、「私は○○ができます!」といった自己紹介は自分からしない方が良いのではないかと思います。地域との関係構築は就活ではないので、聞かれたら答える。くらいの姿勢がちょうどいいです。

地域との関係構築

写真:地域で頑張る先輩たちとのコミュニケーションの場

地域おこし協力隊の3年計画

1年目は「まず、地域を知ってください。」と町長に声をかけていただいたことが印象的でした。3年目の今、振り返ってみるとまさにその通りだったと思います。特に民間企業に勤めていた私は行政の仕組みに慣れるのが大変でした。
地域の魅力集めの1年目があり、この経験をどのように活かしていくか。結果を出すための仕組みを開発するような2年目だったように思います。とにかく挑戦して、失敗して。の繰り返しでした。
3年目は現在進行形ですが、何をどうすれば結果がどうなる。ということが2年間でおおよそ把握できたので、あとは結果を残すのみ。という活動内容になっていると思います。今年は新型コロナウイルスの影響もあったので、対応をとくに慎重に行っています。

清掃活動

写真:定期的な清掃活動

地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと

前述したとおり、私自身がこの地域ではの1代目の協力隊になるので、次世代の協力隊が「この地域の協力隊になりたい!」と思えるような卒業生になっていきたいと考えています。
田舎で暮らしながら地域に貢献できる仕事を創っていきたいと思います。まずは自分自身がやってみること。が、大切だと思うので、今は商工会に通って開業の準備をすすめているところです。
この地域が好きで移住してきた仲間たちとクリエイターチームを立ち上げる予定です。

地域おこし協力隊の魅力

最大の魅力は“生きる”ことと“働く”ことがとても近くにあることが体感できること。だと私は感じています。私は働いている時間も自分の人生の一部だと考えています。その体系が地域おこし協力隊期間で実現可能になっていくような気がしているので、ライフワークバランスを重要視している方には、おすすめしたいと思います。

ローカルテレビ取材風景

写真:ローカルテレビの取材対応の様子

地域おこし協力隊の大変なところ

実は“地域おこし協力隊”は立ち位置がものすごく取りづらいとこにあると私は感じています。それは私の着任した地域に限った話ではなく、全ての地域が全てにおいて異なるからです。ヒーローのように先頭を走っていく活動が評価される地域もあれば、目立たず淡々と地域の方を応援するような活動が評価される地域もあります。成功事例のケースが紹介されている機会もよく目にしますが、そのストーリーはその地域だけに限ったことで、全く同じストーリーが着任する地域で、そのまま凡例になることはないと感じています。
参考にすることは大切だと思いますが、正解はその地域とその地域とタッグを組むその地域の隊員にしか見いだせないのだと思います。

移住検討している方へメッセージ

「何事にも挑戦してみる」が本当に大切だと、移住してみて、この仕事を通じてその言葉の重みを体感する場面が数多くありました。失敗にぶつかるのは、どこに住んでいても変わらない事実だと思います。挑戦することはその失敗の数が増えることにつながりますが、その試行錯誤の回数分の経験値や、関係や繋がりは間違いなく財産になり、自分の人生の満足度につながると思います。ハードルが高ければ、くぐってしまえばいいのだと私は思います。まず、動いてみることをおすすめします。
私の移住した地域では現在も地域おこし協力隊を募集しています。農業の継承についてや、自身で仕事を創っていくことに興味がある人はぜひ、お声かけください。
地域の方々へ今度は私が紹介します!

普段使用しているアイコン

写真:耕作放棄地を観光名所にするためのひまわり畑で撮影

(終わり) 執筆時期:2020年9月

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地方移住マッチングサービス LOCAL MATCHのティザーページ公開

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