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兵庫県多可町に移住した山崎 栞さんのLOCAL MATCH STORY 〜「まだ知られていない」を味方に 〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、兵庫県多可町に移住された現役地域おこし協力隊の山崎 栞さんをご紹介します。
そして、この記事は山崎さんご本人に執筆いただきました。

私の自己紹介

山崎 栞(やまざき しおり)

大阪府枚方市出身
兵庫県多可町役場 定住推進課 地域おこし協力隊

帰国子女が生徒数の2/3を占めるという特殊な学校へ通っていたことから海外へ関心を抱くようになり、高校時代にアメリカ、大学時代には中国へ留学。外国人の友人から日本への魅力を再認識させられる機会があり、留学をきっかけに世界を股にかけたいという思いから一転、「まだ知られていない魅力が日本中にはある、生まれ育った日本をもっと伝えられるような人になりたい」と今までの人生で無縁だった田舎へ。
海外へ飛び込むような思いで移住へ踏み切る。
留学帰国後の2018年より不動産系のベンチャー企業にてインターン生として、大阪の中心部や北部地域での空き家を利活用し民泊としてリノベーションさせる事業に従事。外国人が日本文化を体感できるような民泊づくりの企画・運営に携わる。
より空き家問題が顕著な地方で事業展開を行うべく、2020年8月に多可町へ移住し、地域おこし協力隊として空き家の利活用や移住定住支援に取り組んでいる。

私が移住した地域はこんなところ

兵庫県多可町は兵庫県のど真ん中にある人口2万人の町。平成17年、八千代町、中町、加美町の3町が合併し多可町が誕生しました。手漉き和紙の”杉原紙”、日本一の生産量を誇り、酒米の王とも呼ばれる“山田錦”、国民の祝日“敬老の日”の3つの発祥の町です。四方が山々に囲まれ、町の至る所に水田風景が広がります。町の北部、町内最高峰千ヶ峰の麓には「日本棚田百選」にも選定された棚田があります。収穫期には辺り一帯が黄金色に染まり、四季通して色を変える棚田の景色には圧巻です。
高速道路も公共交通機関もない町ですが、ど真ん中とだけあって、京都北部や神戸市内へ1時間程度、大阪市内へも1時間半もかからない、「ちょっとベンリな田舎」です。

日本棚田100選の一つ、岩座神の棚田

写真:日本棚田100選の一つ、岩座神の棚田

なぜ移住しようと考えたのか

元はずっと海外志向で。日本なんてもういいやって正直思っていました。実は大学卒業後も海外へ行くつもりでした。けどそんなことも新型コロナウイルスという社会情勢に阻まれ、外出自粛期間に自分が本当にやりたいことと向き合ってみたら、「案外日本でも実現できるんじゃない?情報がまだまだ少ない地方移住と海外旅行って似てるんじゃない?」そう気づいたときが私の移住への第一歩で、地域おこし協力隊という制度にであったのもそのタイミングでした。
偶然に偶然が重なり、学生時代から空き家問題に携わっていたことも相まって、聞いたことも訪れたこともなかった多可町という町に今いるのだと思います。

移住するまでこんなことありました

何よりも私の移住を後押ししたのは言うまでもなく新型コロナウイルスの影響でした。
もとより、“まだ知られていないモノを届けられるような仕事がしたい”、“情報が少なく抵抗が感じられているモノに対してハードルが下げられるような取り組みに携わりたい”と考え、その中で自分自身が選んだものが「海外旅行の現地サポート」という職種でした。しかし、渡航直前、新型コロナウイルスという社会情勢に阻まれ、人生の再設計を余儀なくさせられました。「まだ知らない日本がたくさんあるんじゃない?」、今までの人生で未知だった「田舎で暮らす」ということがまるで海外に単身で飛び込む自信の姿と重なり、移住の方法を模索していたところ、出会ったものが「地域おこし協力隊」という制度でした。

移住後のライフスタイル

6:00 起床
7:00 朝ご飯
7:30 コーヒーを入れながらニュース確認

8:45~18:00 勤務

18:30 帰宅
19:30 入浴/夜ご飯
21:00 資格勉強/日記記入/晩酌
22:00 就寝

もともと学生のころから授業前にアルバイトをするほど朝方だったということもあり、
「田舎での生活の方が向いているのでは?」と思うほど早寝早起きな生活です。町の人との集まりにお呼ばれした際には積極的に参加するようにしています。
休日には町内はもちろん、近隣の市町のカフェも探索しています。自然の中にあるカフェでぼーっと考え事をしていると結構良いアイデアが浮かんでくるんですよね。
どこへ行くにも基本車を使ってしまうので、もう少し歩くようにしたいなぁと思っているところです。けどそんなことをしていると毎日が登山になってしまいます(笑)

お気に入りのテラス席があるカフェ 週末はよくここで考え事しています

写真:お気に入りのテラス席があるカフェ。週末はよくここで考え事しています。

移住してわかった地方暮らしの魅力

人との距離がすごく近くなりました。
何かあればすぐに相談できるような、町にお母さん、お父さんのような人がたくさんいるようなイメージです。山奥で一人暮らししているだけに、周りの方には常に気にかけてもらっていて、つい先日体調を崩したときなんかには「誰から聞いたの?」と思うほどいろんな人が食べ物を持ってきてくれました。人の温かさがより感じられることは田舎暮らしならではないかと思います。
すれ違う子どもたちが毎朝元気に笑顔で挨拶してくれる時には、都会で生活している中では、人として忘れていたことを思い出させてくれる瞬間です。

牧場直営のジェラート屋さん、こちらも行きつけです

写真:牧場直営のジェラート屋さん、こちらも行きつけです。

移住先での住まいについて

多可町の中でも秘境と呼ばれるような山奥の集落で今は暮らしています。家庭菜園付きの一軒家物件で、一般の方でも住むことができ、多くの方は二拠点居住の別荘として利用されています。
中はリビングダイニングと独立洗面台に寝室、さらにはウッドデッキがついています。
多可町の協力隊は役場の方から住まいを紹介していただけることになっており、以前までは選択肢は一つしかなかったようなのですが、私の時から2カ所から選べるようになっています。費用は入会金+月々3万5000円程度に光熱費が別途かかります。
今の生活環境もすごく気に入ってはいるのですが、少し中心部から離れているのと、積雪がこの集落だけ尋常じゃないので、そこは少しネックですね。

移住先でのお金事情について

「田舎暮らし」と聞くと多くの方が「田舎って物価安そうだし、ご近所さんからいろいろもらえたりするって聞くし、あまりお金かからないんじゃない~?」と思われる方も多いかと思います。実際、私もこちらへ移住してきて毎日のように収穫されたばかりのお野菜や新米、お魚までいただき、スーパーへ行くのは月に2回だけ、なんて時もありました。
以前都会での生活に比べ、食費や交際費は減ったように感じます。近隣の飲食店も夜は比較的早く閉まってしまうため、基本的に3食とも自炊ですが、外食がほとんどない分、一週間に3000円~5000円以内で収まる程度です。
一方で車の維持や光熱費など田舎である分、余分に発生する経費もあります。
多可町は都市ガスが通っておらず、プロパンガスが主要です。都市ガスに比べると少し高く、水道も集落によっては下水道が整備されておらず、「浄化槽整備代」というものが毎月発生します。本来の水道使用量に上乗せというかたちでかかってくるので、光熱費すべて合わせて一人暮らしでも1万円前後ぐらいかってしまいます。
また、私の場合住んでいる場所からコンビニへいくにも車がかかせません。
日々の小さい積み重ねとはいえども、車の維持費やガソリン代、都市部へ行く際のETC代は1人だと意外と痛手です。

移住してから交際費も食費も、不便さ故に、「本当に必要なモノ」を考えて使うようになったことは日常的に無駄遣いが多かった私にとって、大きな変化だったかと思います。

移住先の暮らしで困ったこと

移住してなにより困ったことは「虫と動物」です。
多可町は自然環境が豊かすぎて虫や動物によく出くわします。移住した当初は家に毎日2匹以上出るムカデに悩まされ、夜は眠れないほどでした。また、帰り道には毎度といっていほど鹿やタヌキ、イノシシなんかに出会います。人間って面白いもので、はじめはいちいちびっくりしていたこともだんだんと慣れてきて、それが普通に感じてくるんですよね。今ではカメムシがいても手で取って投げられるぐらい、虫に対する免疫ができました(笑)蜂とムカデだけは慣れませんが…
対して住んでいる場所が海抜500m地点ということもあり、夏の大敵“蚊”は全くいません。

あと、缶の処理にも悩まされました。
引っ越し当初、地域の方にゴミカレンダーをいただき、ゴミの出し方について手取り足取り教えていただいたのですが、なんとそのカレンダーの中に“缶の日”が存在していませんでした。大阪に住んでいた頃、缶の回収日は週2回ほどあったイメージで…。はじめは捨て方がわからず実家に帰るタイミングで大量の缶も一緒に持ち帰っていました(笑)
田舎の人は「瓶が主流なのかな? 」という疑問は今も解消されていません。

地域おこし協力隊になるまでにやったこと

・都市部へのアクセスが比較的良い立地
・空き家問題での募集がある
・生まれ育った関西からは離れたくない

移住する上で自分の中で譲れない条件が3つあったのでそれに当てはまる市町村の募集を片っ端から探していました。そして行き着いた先がたまたま多可町だった。こんなこと言ったら怒られちゃいますね(笑)
隣接する市町村名は知っていたのに、一カ所だけ訪れたことも聞いたこともない町がある。そんなとこに魅力を感じて引き寄せられていったのかもしれません。

地域おこし協力隊の活動内容

私が今町からいただいているミッションは「空き家の利活用と移住定住支援」です。具体的には空き家バンクの運営や移住者の相談窓口として活動しています。
多可町は人口2万人でありながら高齢化率は約40%。今町内に6500戸と言われている空き家の戸数も数十年後にはさらに増え続けると言われており、町内に不動産業者の窓口もないために、町が主体となって空き家バンクを担っている現状です。

空き家と移住希望者とをつないでいく現在の業務はもちろんのこと、ゆくゆくは空き家バンクの運営だけでなく、空き家の利活用を含めた「増え続ける空き家のゴールを見つけていく活動」として事業展開を行えればなと思っています。

今は空き家調査が日々の業務。

写真:今は空き家調査が日々の業務です。

地域の人との関係構築

私が考える地方は、外国人や外から来た人に抵抗があり、“既存の考え方を好み、変革を嫌う”というイメージがつきまとっていました。
実際多可町も、生まれてから今までずっと多可町で暮らしてきたという人が多く、はじめは突拍子もない、変革的なことを言い出す私の考え方や、今までの人生観に対して抵抗を感じられることも多々ありました。
もちろん、周りの方々の協力あってこその協力隊であり、対立なんてしていては元も子もありません。
この人ならここを任せても…と思ってもらえるように、相手の立場に立って相手のことを最優先に考えつつ、自分自身の考え方も包み隠さず、伝えるように心がけています。

古民家清掃イベントで取材を受けた時の。

写真:古民家清掃イベントで取材を受けた際の様子。

地域おこし協力隊の3年計画

学び・吸収の1年目、行動に移す2年目、結果を出し、その後につなげる3年目。
これを念頭に日々、活動しています。今はまだ着任して半年足らずですが、周りの方々に助けてもらいながら、必要な情報を吸収し、次年度以降につなげる基盤作りを行っています。

地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと

“増え続ける空き家のゴールを見つけるお手伝い”として「多可町内での空き家の利活用が円滑に進むプラットフォームの構築」を目指しています。
空き家の利活用は決して「空き家バンクに掲載させること」がゴールではなく、次に住んでくださる方を探す方法もあれば、解体して土地として、新たな形で空き家を生まれ変わらせるなどさまざまな方法があります。
そのおうちそれぞれに適したゴールは何か、所有者とともに考え、提案していけるようなプラットフォームの構築を目標としています。
いずれ職として成り立たせていくためにも現在は不動産に関わる資格習得にも平行して取り組んでいます。
まずはその第一歩として空き家バンクを役場外のサービスとして独立させ、
サブリースを利用した利活用体制をより円滑に執り行う仕組みを来春からスタートさせていく予定です。また、いずれは空き家問題だけでなく、空き家の利活用を通して職がないと言われる地方での雇用の場も同時に作り出していきたいと考えています。

地域おこし協力隊の魅力

一番ハードルの低い移住の形が地域おこし協力隊になることだと思っています。
3年という限られた期間ではあるものの、ある程度保証された環境に身を置き、ゼロから新しいモノ・コトを作り出していくことができることです。こういうことで独立してそれを形にしたい、成し遂げたい、と思っている人や移住したいけど仕事はどうしよう…と思っている人には向いているのではないでしょうか。

移住検討している方へメッセージ

“時代の流れを読んで移住してみたら意外とハマった“
これは私が実際に移住してみて感じたことです。

今協力隊の活動で移住事業を担当している中で感じることは、
「移住は人生の一大イベント」であると考えられている方が多いということです。
確かに、今まで慣れ親しんだ環境から、180°違う環境へ移る、移住するということは時には大きな決断が必要かもしれません。
今のライフスタイルがあまり適さないなぁ~何か違うな~と思ったら変えてみる。そのぐらい柔軟に肩の力を抜いて実行に移してみると案外そのスタイルがはまるかもしれません。思い立ったらすぐ行動に移せる、そのぐらい移住がポピュラーになればな…と思い私も日々活動に取り組んでいます。

02素材

【参考URL】
・多可町空き家バンク・定住支援サイト「タカ、と」
 https://teiju.takacho.net/about/
・多可町公式HP
 https://www.town.taka.lg.jp
・たかおこし隊(多可町地域おこし協力隊)Facebookページ
 https://www.facebook.com/okoshitaka/

(終わり) 執筆時期:2020年12月

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