広告嫌いの広告担当が転生したらドキュメンタリーを作っていた件
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広告嫌いの広告担当が転生したらドキュメンタリーを作っていた件

LIFULL CREATIVE

LIFULLがドキュメンタリー映像を作る。その裏側にあるちょっとした事情と、これまで未経験の取り組みをすることで遭遇した、苦労と苦悩の一部をおすそ分け。
筆者は元広告担当で、いまはコンテンツ開発を担当。

作ったコンテンツにまつわるお話はこちらの記事をごらんください。

「広告が嫌い」

自分はこのLIFULLという会社(前身のネクストも含む)で、かれこれ累計10年くらい広告やらコミュニケーションやらに関与してきた。

そんな自分が過去、とある広告業界誌のセミナーの冒頭に発した言葉はこれだった。

「広告が嫌い」

生活者が欲しいのはプロダクトやサービスであり、なんならそれすらも不要で、結局求めているのは何等かの課題解決などの欲求の充足だったりする。それさえ満たされれば、広告というものは生活に割り込んでくるノイズでしかない。
そして、いくら広告をエンタメコンテンツ化したところで、生活者にとって本質的には不要なものであることにもかわりはない。
そのため、いかに広告なしで、生活者に顕在、あるいは潜在している求めを満たしていくか、当時はそんなことばかりを考えていた。その中で出てきた言葉がそれだった。

……という具合に、ある種の厨二病をこじらせていた数年前だったけれど、いまは幸いにも(不幸にも?)、もう少し現実的に(または近視眼的に)広告の存在を捉えるようになっている。
実際には、自分に興味関心のある広告であればそんなに毛嫌いされることなく受け入れられるし、情報洪水真っただ中の現代において、広告がなければ欲求を満たす手段にアクセスできないこともある。また、広告のおかげで多様な無料コンテンツを楽しむことができている。
少なくとも今はまだ、広告が必要不可欠なものであることには間違いない。

それに広告の内容が変わってきたという印象がある。かつてのように「売ってやらん」感のある広告はだいぶ鳴りを潜め、洗練された表現で的確に人の心を動かすようなクリエイティブが増えてきて、「ささる」広告に遭遇することが増えてきた気がする。依然、広告は必要悪の側面はもちつつ、一定のやさしさも兼ね備え始めてきた、そんな感じに。
※個人の感想です

我々のやっていること

LIFULLは社会課題を事業活動で解決していこうとしている。
その社会課題とは、一人ひとりの課題から生じるととらえている。”あらゆるLIFEを、FULLに。”と掲げているとおり、みんなが自分らしく生きていける世の中にしていくために、一人ひとりの抱える課題に光を当てて声を聞き、集団としてカテゴライズされラベリングするのではなく、n=1として個々のありのままを認めていく。そんな思いを持ちながら日々活動をしている。

LIFULLという名前はありがたいことにだんだんと知られてきたけれど、その背景にある想いについてはまだ伝わっていない。もっとLIFULLのことを知って、興味を持って、できることなら一緒に未来をつくりたい、そう思うのだけど、これが難しい。

広告ではできないことをする

広告は広く、ワンメッセージで情報を届ける手段。企業認知を高めるためのキャンペーンではTVCMをはじめとしたコミュニケーションとして展開しているけれど、そこからさらに深く、色濃く、LIFULLの企業姿勢を伝えようとすると、どうしても広告という手法では限界があった。一人ひとりの課題に光を当てようと思ったとき、マス的なワンメッセージ展開ではちょっとマッチしないのだ。
広告というのはどんなものであれ制限がある。TVCMだったら15秒とか30秒とか、バナー広告だったらその大きさとか。情報量をどうしても限定せざるを得ないからこそワンメッセージが効果的になるのだ。裏を返せば、ワンメッセージで収まらない内容については広告には向かない、ということ。一人ひとりの異なる課題、考え、価値観、そういったものを語ろうと思ったら、ちょっと15秒で収めるのって難しそうな感じがするでしょう。

そこで、広告的手法をとらずに企業姿勢を発信する方法を開発していく「コンテンツスタジオ」という組織が立ち上がった。目的のためには手段を選ばない、コミュニケーションの遊撃隊。なんてね。

それから一年、おかげさまで2本のドキュメンタリー映像をリリースすることができたわけだけど、そこに至るまでにはLIFULL史上一度も遭遇したことのない数々の課題に直面してきた。

脱・広告制作

広告的な制作だと、戦略だったりコンセプト開発だったりから始まり、パートナーである代理店とチームを組んで議論やリサーチを重ねていく。そしてクリエイティブの話になってくると、代理店の担当を通じて、制作チームとやり取りをしていくことになる。制作チームはその時の目的に応じて、代理店の担当部門により適切なスタッフィングがされる。
いざ制作を進めていく段になると、もちろん直接制作スタッフと話をすることもあるけれど、コミュニケーション実施に向けた全体感を踏まえてのディレクションが必要になるので、多くは代理店の担当者を通じて制作サイドとやり取りをする形をとる。
その後、広告の展開のプランニングをしたり、あれやこれやをなんやかんやして世の中に作ったものが出ていく。
それがいつもの流れだった。

ところが今回、このチーム(コンテンツスタジオ)が扱うのは広告ではない。そこで広告的発想を排除するためにも、広告代理店を使うことをまず禁じた。
そして自分たちの想いを的確に表現できるスタッフを見つけ、一緒にそれを実現していく。LIFULL自身にクリエイティブの知見を蓄積し、多くの人の心を打ついわば「作品」を自分たちで生み出せるようになろう、というわけだ。

そんな想いを抱えてスタートしたコンテンツスタジオの活動だけど、当然ながら多数の困難に直面するのでした。

友達がいません

最初のお題は「バイネームでスタッフを選ぼう」だった。一緒に作る仲間を探すところからスタート。
ところが。現場メンバー(当時2名)がこれまで代理店と仕事をしたことはあっても、直接、制作会社やクリエイターと仕事をする機会はほぼなかった。著名な人こそ名前は知っているけれどそれっきり。伝手も連絡先もわからない。
またもう一つの問題として、我々が掲げる「社会課題」というものについて、理解のある、あるいは類似テーマでの制作経験のある人がどの程度いるのかもわからなかった。

最終的に、日ごろお世話になっているプロデューサーの方からご紹介をいただいた方々と一緒に企画を進めることになり、人の縁のありがたさを噛みしめることになった。

収斂進化

コンテンツ開発の初期フェーズでは、社内スタッフで企画案を出し合い、その中から制作するものを選んでいった。その中には当然、いくつもボツとなった企画がある。
そうして選び抜かれた企画は制作サイドにオリエンされると、今度は演出を加味しながらの精緻化を進められていく。その過程で企画には様々な変更が加わっていった。
するとどうだろう。なんだか見覚えのある企画になっていくではないか。そう、どういうわけかボツにした企画のひとつによく似てしまったのだ。
イクチオサウルスが滅びてイルカが出てきた、みたいな。
結局その「イルカ」も違う姿となって、よりよい企画にその姿を変えていったのだけど、見方を変えれば企画プロセスの手戻りでもあるので、これはこれで課題として認識し、今後は対策をしていくことにしている。

なかよくけんか

今回の活動でものすごく有意義だと感じたのは、制作サイドの方々との関係性だった。
クライアントと制作会社、としてではなく、同じチームとして直接的に言葉を交わして、普通だとヒヤっとする場面だったとしても安心して建設的な議論を重ねることのできる関係性。それが構築できた(と我々は考えている)。
いわゆる「心理的安全性」というものが、立場を超えて醸成されたわけだ。この手ごたえは非常に大きく、また今後活動していく上で特に重要な要素だと考えている。
具体的な内容は差し控えるけれど、この関係性があったからこそできた議論によって、先の2企画のクオリティは非常に満足のいくものにできた。

あとがき

ほかにもいろいろとあんなことやこんなことなど、今となってはいい思い出と呼べる状況があり、すべてが尊い経験だ。
一事業会社として、代理店を介さず直接、制作会社と一緒になって今回の2企画ほどの規模のものを作っていくというのは、あまり例がないのではないか。という話はプロジェクトを進める中で、幾人かの人から耳にした。
実際そうなんだと思う。だって簡単なことじゃないもの。何度となく「こんなとき、代理店がいれば……」と思っただなんて、口が裂けても言えないから書いちゃいます。

ただ、我々は自分たちの想いを多くの人に知ってもらい、一人ひとりの多様な在り方を認めあえるようになるには、このやり方も必要だと考えている。他に類例のない、不器用なやり方だったとしても、自分たちの想いを作り手に直接伝えながら物を作り上げることが、その先の生活者の理解や共感を得る最善の策だと信じて。

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クリエイティブ本部 デザイン部 コミュニケーションデザインユニット
コンテンツスタジオグループ
でんか
「でんか」は入社前に決まっていたニックネーム。
プログラム講師、Webエンジニア、ECバイヤーを経てネクスト時代に入社。
サービス企画、PR、デジタルマーケティング、ブランド戦略などあれこれやってきて、現在は新規コンテンツの企画・開発を担当。(2021年10月時点)

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