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書籍『共感資本社会を生きる 共感が「お金」になる時代の新しい生き方』から新井和宏さんの観る日本の課題、お金の課題、それに対する解決策としてのeumoについて抜粋してみた。


はじめに

今回は、eumo株式会社 共同代表の新井和宏さんがゲストで出演されるイベントに運営で関わる関係で読んだ2019年11月に出版された書籍「共感資本社会を生きる 共感が「お金」になる時代の新しい生き方」から、新井さんの観る日本の課題、お金の課題、それに対する解決策としてのeumo(ユーモ)について紹介します。(そうすることで理解が促進されるため)

今回の内容は、上記の書籍が出版された2019年当時のものであり、その後アップデートされているかと思いますので、あくまでその前提でご覧ください。ちなみに、新井さんのことを知らない方のために書籍で紹介されているプロフィールを載せておきます。

新井和宏(あらい・かずひろ)
株式会社eumo 代表取締役/鎌倉投信株式会社 ファウンダー
1968年生まれ。東京理科大学卒。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。
2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い 2101」の運用責任者として活躍。
2018年9月、共感資本社会の実現を目指して株式会社eumo(ユーモ)を設立。2019年9月から、共感コミュニティ電子地域通貨eumo(ユーモ)の実証実験をスタート。貯められない、現地に行かないと使えない、など、ユニークな仕組みで共感が循環する社会の実現を目指している。
著書に、『投資は「きれいごと」で成功する』(ダイヤモンド社)、『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『幸せな人は「お金」と「働く」を知っている』(イースト・プレス)がある。

日本の現状の見立て

ここからは書籍の内容を引用しながら新井さんの考え・取り組みについて紹介していきます。まずは日本の現状をどのように見立てているか、です。

単一のメジャーメントで測られることに慣れすぎている

日本人は単一のメジャーメントで測られることに慣れすぎています。会社に入れば「売上、利益、ROE(自己資本利益率)」、国で見れば「GDP」。個人の価値も、「年収●●万円」と簡単に表現される。すべてが、数字。お金でしか測っていない。

書籍より引用

そのことによるメリットとして「競争が促され、結果として経済成長」がもたらされたというものがある。

一方、デメリットは「富の偏在が生まれる。環境は破壊される。競争すれば負ける人がいる。負け続けると疲弊していく。幸せや心の豊かさを感じられずにストレスで病んでしまう。気づけば、自殺という選択肢の一本道に追い込まれてしまう」といったことが挙げられる、といった内容も書かれていました。

何でもお金で解決しすぎる・お金依存症

何でもお金で解決しすぎるというところで、その結果として多くの人がお金に依存してしまっている。社会全体が「お金依存症」になっているのではないか、と強く感じています。言い換えれば、お金で解決する領域を増やしてしまっているということ。昔はお金で解決していなかったことをーーお金で解決しないほうがいいこともーー、お金で解決するということが増えてきた

書籍より引用

お金の持つ特徴

関係性を切る行為が得意

お金って、「決済」という言葉にも表れているとおり、関係性を切るっていう行為が得意なんだよね。お金の切れ目は縁の切れ目というけど、まさしくそのとおりの性質を持っていて。だから、お金は「分断」する。

書籍より引用

お金の大小で全部測れているように思い込ませるような性質がある

お金そのものには「色」がないけど、それはつまり、悪いことをしようと何をしようと、同じお金でしか測れないという性質を持っている。だから、単純な話、すべては大小で決まる。お金の大小で全部測れているように思い込ませるような性質がある。人間はお金で測れないことのほうが大事だと言いながら、すべて「これだといくらぐらいになるんだろう」って考えている。

書籍より引用p26

貯められるが故に、貯める行為が目的化されてしまう

『お金ってそもそも幻想であって、あったら便利だよねってみんな思っている。じゃあなんで便利かっていったら、物と物を交換するときにお金を介在させたほうが便利だから。それなら、お金はあったほうがいいね、というくらいのものだったはずで、その範疇だったらよかったんだよ。それを越えてしまった。』

『なかでも、貯められるのがよくないんじゃないか。貯める行為が悪いんじゃない。貯められると、その貯める行為を「目的」化するんだよ、人は。お金は「手段」だったはずなのに。』

書籍より引用p35

市場システムの持つ傾向

・わかりやすいとか測りやすいっていうものに対して取引量が増える、速くなる

・できるだけ効率を上げてスピードを速くするためには個性は殺したほうがいい

・そうすると多様性とは真逆で、一様になっていくことを目的化したほうが効率がよく、そうできる人のほうが優秀となる

・会社も一緒で、同質化していく

たとえば製品だったら、競合している他社がこれをつくっているなら自分たちもこういうのをやらなきゃいけないとか、ESGでもSDGsでもそうだけど、他社がこの点数をとってるんだからうちもこれだけの点数をとらなきゃっていうわけじゃない。そしたらどんどん同じになっていって、個性がなくなってしまう

書籍から引用

・規格というものに合わないと、存在自体が排除される

・血が通った会社は、市場を通して見ると、規格外。そのため、いい会社は市場が評価できない



つまり、市場というシステムは会社も個人も単一化、個性がなくなる方に促進する傾向がある。

また、お金も先に紹介したような特徴があるため、人の個性がなくなる・関係性が切れて孤立する・信頼関係よりもお金を貯めることが目的化するといったことにつながってしまっている。

どうすれば競争社会から共創社会へ移行していけるか?

こういった課題に対して新井さんが当時言われていた解決策がこちらの2つです。

(1)多様なメジャーメントを持つこと(測り方の選択肢を持つこと)

ESG投資やSROI(社会的投資利益率)が模索例として現れてきている。

(2)「お金」の多様性が認められるような環境があること

ここが新井さんがeumoでやりたいこと。

法定通貨がひとつのメジャーメント(価値尺度)として基準になっているけど、このままでは数字(金額)で表現できないものが排除されてしまう。この排除の論理こそが、さまざまな社会課題を生んでいるのならば、数値(金額)で表現できないものを受け入れるお金をつくれば解決するはずだ、と思ったのです。

書籍から引用

「共感を数値にするさまざまなメジャーメント(物差し)を持ったときに、社会はどんな姿になるだろうか?」「共感でコミュニティ通貨が循環するような社会システムをデザインしたらどうなるだろうか?」こうした問いを出発点にして、いま、新しい共感コミュニティ通貨eumoの実証実験を行っています。

書籍から引用

お金で測れるものが価値であるみたいな、そういう風潮っていうのは違うよなっていうふうに思うわけですよ。だってよくよく考えたら、お金で測れないものなんか山ほどあって、大切なものはそっちにたくさんあるとみんな思っている。

書籍から引用

私の挑戦を通して、お金に多様性があっていい、と理解してもらえたとき、世界には色とりどりの価値基準が生まれると信じています。

書籍から引用

つまり、eumoが決めた価値基準だけではなくて、それぞれの個人やコミュニティが大切にしたい価値基準を大切にできる仕組みや社会ができた姿こそが、「共感資本社会」です。

書籍から引用

eumoに関するコメント

もっと人間って個にフォーカスしてよくて、違いを重視してよくて、その違いをうまく見せて関係性をつくれるようなシステムができればいいだけであって。システムがそれをサポートするのであれば僕は受け入れられるんだけど、どうも違う方向に行っているような気がしています。つまり、テクノロジーの使い方が間違っているんじゃないかっていうのが、新しいお金をつくろうと思ったそもそもの出発点だったわけです。そして、そうじゃないお金、つまり関係性を重視するお金っていうものをつくりたいって思っちゃったんだよね。それが今回始めたお金eumoなんです。

競い合うことで勝てる人たちやそれで燃える人たちっていうのはいてよくて、別に何の問題もない。でも、それにすごく違和感のある人たちが少なからずいるなら、そこに対して違う価値基準の指標っていうのをつくれば、いままでどおりの成長っていうことが違う形で表現できる。自分たちはそれをeumoでやろうとしています。

<中略>

別の人たちによっていろいろな挑戦が生まれてきてシステムに多様性が生まれれば、結果として多様な生き方ができる時代がやってくるんだろうなと。そのときに自分がどこの経済圏で生きていきたいか、みたいなものをチョイスできるようになれば、たぶんこんなに息苦しい生き方にならないで済むだろうっていうのはすごく思う。

・つくりたいのは人との出会い

・差別や偏見が生まれるのは、知らないことによる恐怖から。だから知れば多くのことは解決する

・たくさんの人たちと幅広く出会うことによって、人間は成長する

人間は成長すればするほど、社会のために自分は何ができるんだろうかと考えるようになっていく。そういう人たちを増やしていくことが、社会が豊かになっていくことにつながるわけだから、eumoを使えば使うほどその人たちが人間的に豊かになっていく仕組みができれば、たぶん社会は大きく変わっていくんだと思う。

書籍p78より引用

・人と人がつながるための金融であるべき

・関係性をつくるためのツールだからお金という概念すら変えると思っている(そういう関係をつくるためのツールとしての概念があればいいだけで、お金と呼ぶ必要もないとさえ思っている)

貯められると人間は目的にしちゃうから貯めるという行為をできなくしてしまって、代わりにどこかが貯めていればいい。要はコミュニティの中で貯めているところがあって、必要なときに必要なだけ手に入れば人は不安にならないわけじゃない?

だから、コミュニティごとにひとつの財布を持つのでも、コミュニティ単位で貯蓄してそこからベーシックインカムを配るのでもよくて、そこに不安を解消する仕組みがあればいい。

さいごに

冒頭にも載せたようにここに書かれている内容は2019年11月に出版された書籍を書いた時点でのものとなるため、それ以降、実験探究を続けてこられた新井さんが今これらについてどのように思っているのか、変わらないことは何か、変わったことは何かを伺ってみたいと思いました。

また、今回は文量の関係で断念しましたが、新井さんの考えに対して私はどう思うか?自身の経験と照らし合わせられる箇所があるか、といったことも書いてみたいと思っています。(そうすることで、より新井さんの考えを落とし込むことができるため。アウトプット学習)

eumoが気になった方はぜひダウンロードしてみてくださいね。

eumoという会社についてはこちらから。


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