見出し画像

「成功者の告白」に学ぶ起業した会社が崩壊してしまう3つのシナリオとは?


はじめに


成功者の告白という名著があります。

神田昌典さんというカリスママーケター・作家として活躍し続けている方が書いた5年間の起業ノウハウを3時間で読める小説形式にした本です。

起業をすると5年間でどんなことが起こるのかを小説という分かりやすい形でまとめていること自体がすごいのですが、この本のユニークなところは事業の成長に伴う起業家の光だけではなく闇(例えば、家庭の不和、腹心の離脱等)が描かれていて、それらの闇がなぜ起こるのか・どうすれば乗り越えることができるのか、ということが踏み込んで描かれているところにあると思っています。
 
この書籍が出た2004年頃はヒルズ族という言葉が登場し、そこに住む起業家が時代の寵児としてもてはやされた時期でもあります。その代表格がホリエモンであり、同年にライブドア事件が起こっています。他にもサイバーエージェントの藤田氏、グッドウィルの折口氏らも六本木ヒルズに住んでおり、2005年には自叙伝を出版されています。
 
つまり、当時の起業シーンは成り上がりのイメージが今以上に強かったのではないでしょうか。

そんなタイミングで出版された「成功者の告白」から、今回は組織の崩壊シナリオについてピックアップしたいと思います。

前提「会社が成長していくために必要な4つの役者」

神田さんは前提として会社が成長していくためには4人の役者が必要としています。

起業家

起業家は、長期的視野のアイデアがどんどん湧いてくる人。創造力があり、そのアイデアを実現しようと行動する。いけいけドンドン。前に突き進む軍人のような人だといってもいい。

実務家

会社でいえば商品の仕入れ先を決めたり、配送システムをつくりあげたり、顧客の問い合わせに対応する体制を構築したりする。短期的視野の仕事、つまり日常業務を効果的に回す人。

起業家と実務家が出会うと成長期に進む

この段階からさらに会社が成長していくためには、実務家は管理者と組み、日常業務をシステム化していく必要があります。

管理者

会社でいえば一般的には経理部門だ。ルールを決めたり、日常業務をルーチン化したりして、短期的な効率を重視する。

まとめ役

この役割のエネルギーが少ないと、社内はすぐにバラバラになってしまう。どんな人かといえば、社内でお母さんと呼ばれるような存在。この人がいるとほっとするという存在。小さい会社の場合には、社長の奥さんやサポート部門の優しい女の子が、この役割を果たすことが多い。

問題社員

4人と言いつつ5人目がいるのですが、会社が大きかったり、会社の分裂が深刻だったりする場合に、まとめ役としてもう1人が台頭してくるそうです。その人のことを問題社員と呼びます。

問題社員が病気になることによって、その人のケアのために会社がまとまる。または、問題社員の悪口を言い合うことによって、他の社員がまとまる。

言い換えれば、会社のまとまりのために犠牲になっているとも言えます。

この立場の人は、その職場のネガティブなエネルギーを受け取りやすく、感受性の強い人が多いそうです。このような問題社員が現れる背景を知っていれば、問題社員として扱うのではなく、逆にその人の感受性の強さを活かせるようになる。問題社員こそ、アンテナ役になってもっと早く的確に、会社の問題を炙り出してくれるのだと神田さんは言っています。

組織が崩壊する3つのシナリオ

(1)実務家と管理者が起業家に謀反を起こす

社内を大混乱に突き落としておいて、その後始末は実務家および管理者にやらせる。アイデアを出して『実行しろ』と呼びかけるより、それを形にして、後始末するほうがよほど時間がかかるよね。だから社内はいつでも緊急事態。

混乱している社内で働く能力がある人は少ない。ほとんどの人は安定した、決まった仕事を求めているからね。だから社員は、なかなか定着しない。病気で会社を休みがちになる。その結果、さらにミスが増えるという悪循環に入る。

これだけ社内が混乱しているにもかかわらず、社長はいつも会社にいない。会社に来たと思ったら、新しいアイデアを持ってきて、混乱にさらに拍車をかける。そのうち実務家と管理者は、その後始末の仕事の後で飲みに行くようになり、起業家の悪口を言い始めるんだ。『血も涙もない社長だ』ってね。そこで二人は手を組んで、クーデターを起こすことになる。

成功者の告白から引用

<コメント>
以前関わった組織の中で、起業家を諫めるために一部が連帯してある種の反対活動を行なったケースがありました。その理由は起業家の偏った経済至上主義に伴うメンバーの疲弊や顧客ファーストとは思えない意思決定が続いたことへの不満だったため、「現場の現実がみえていない」という意味では共通していそうですね。

(2)実務家が起業家に謀反を起こさない場合

組織の中で誰も起業家の独創を止めることができない。そのため起業家のエネルギーが強くなりすぎて、管理者が社内にいつくことがない。なぜなら、起業家と管理者は水と油の関係だからだ。

起業家は自由と混乱が大好きだ。管理者は規則と安定が好き。会社にとってどちらも必要なのだが、起業家のエネルギーが強すぎると、管理部門が弱体化する。会社はいつになってもシステム化することができず、家業のままにとどまってしまう。

成功者の告白から引用

<コメント>
私が過去に接してきた会社・組織を見ていて思うに実務家が謀反を「起こさない理由」は、起業家のビジョン・思想に共鳴し、尊敬しているからではないでしょうか。ある種、憧れているからこそ、違和感があっても、自分の感じる違和感自体を疑うことで成り立っている。外からみると理念が浸透している会社・組織のように見えますが、コアな人たちに疲弊感が漂っている。でも、起業家はそれに気づけない。

また、謀反を「起こせない理由」は、仕事がなくなることへの恐れがあるから、でしょう。

厳密には、上記2つの理由が混ざっているように思えます。

(3)実務家と管理者が非常に強い場合

社内を混乱させ続ける起業家に嫌気がさして、彼をほっぽり出してしまう。会社に残るのは実務家と管理者。すると規則が非常に厳格になり、組織の硬直化が急速に進む。そして起業家がいないから新しいことが何もできず、徐々に衰退していく。

成功者の告白から引用

<コメント>
こちらのケースも全く同じではないですが、経験したことがあります。ここでいう起業家は私が実践探究しているソースプリンシプルでいうソースであり、その組織(ソースプリンシプルでは組織を固定的なものと捉えず、オーガナイジングという動的なプロセスとして捉えますが、分かりやすさを重視し組織という表現を使います)全体が向かう先を指し示す源泉とも言えます。

そんな存在が追い出されると、そのソースだからこそ成り立っていた組織は崩れていきます。これを崩壊と見なすこともできますが、ソースのレンズで言うならば、もしそこから新しいことを立ち上げる人が出た場合は、その人の望む形に変化していくという意味で別の組織となる、と言えます。

その結果、以前のソースに共鳴していた人は変化を感じ、離れるため人は減りますが、立ち上がった人が続ける限りは形を変えて続いていきますね。

さいごに

創業者のいる会社に所属している、起業家以外の人の心構えとして大切だと思うのは、「あくまで自分は起業家の意識・人格といった内面の発達の物語の一部に属しているのだ」という認識だと思うのです。

そう捉えることで、どんなことが起こったとしても「私が選んだのだ」と自己責任で捉えることができ、このまま居続けるか別の環境に行くかを選べる意識・位置に立ちやすくなります。

とはいえ、1つの会社に長くいるとそのことに気づきようもないことも分かります。だからこそ、大切なのは第三者・伴走者の存在なのでしょうね。

組織の転換期の伴走をすることが多い私としては、改めて三方良しの変容を促進支援できるよう、真摯に取り組んでいきたいと思ったのでした。

今回紹介した「成功者の告白」は名著ですので、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。

また、今回取り上げた組織の崩壊にまつわる箇所を読んでいた時に思い出したのは、ビジョナリーカンパニーシリーズ3冊目の『衰退の五段階』でした。

この書籍も名著ですので、またの機会に紹介したいと思います。


オススメ記事はこちら。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?