経営者が、自分の発言力を下げ、 社員等が発言できるスペースを創るための4つの観点とは?
はじめに
日本において、進化型組織を先駆的に実践されてきたダイヤモンドメディア創業者であり、現在は社会システムデザイナーとして引っ張りだこの武井浩三さんという方がいます。
武井さんの書籍「自然経営」の中で会社組織において権力とは何か?ということについて語られていたんですね。
私はこれがすごく面白いテーマだなと思って、何度も読み返し
理解を深めていきました。
その結果、知る人ぞ知る思想家ケン・ウィルバーの4象限に落とし込めそうだと思ったので今回試みてみます。
ちなみに、ケン・ウィルバーは、アメリカの著名な思想家であり、インテグラル理論の提唱者です。
これは、物事を捉えるときにこの4つの視点から観て捉えよう、というものであり、上記は書籍「ティール組織」で紹介されていた組織を捉える4つの視点とも言えるものです。
会社内における力を力たらしめる4つの要素
「会社内における力」というものを「会社内での発言力」という側面で捉え直し、その発言力にはどんな要素が影響しているのかについてケン・ウィルバーの図に落とし込んでみたのが上記です。
上記のうち、儀式以外の3つは前述した武井さんがその書籍の中で語っていたものをそのまま引用しました。
なぜ、経営者が会社内(場)において大きな発言力を持っているかというと、その組織内において、
といった4要素が網羅的に高いからなのです。
(1)〜(3)については読んで字のごとくで何となくでも意味を掴めると思いますが、詳しく知りたい方はぜひこちらの書籍をご覧ください。
ここで言う(4)が分かりにくいと思うので少し解説します。
儀式という観点を思いついたきっかけ
この儀式という観点を閃いたのは、Zoomでのイベントに参加したことがきっかけでした。
そのイベントの中で4人1組くらいで話をしていたのですが参加者の1人が「Zoomだと、たとえスピーカーがいたとしても、みんながフラットに感じられる」と言っていたのです。
私はこの言葉が気になり、なぜそう感じるのか?考えてみました。
その結果、「段取り」がないからフラットに感じるんだと気づいたのです。
リアルでのイベントでは通常、場に対して先に参加者が座り、スタートを待ちます。
会が始まると、多くの場合は司会が登場します。そして、その後、司会にT-UPされる形で、スピーカーが登場されます。
私たちはこの「段取り」を経て、スピーカーと自分に違いがある人、すごい人なんだと感じるようになります。
実際にそうであるかとは別に、です。
一方で、Zoomでの会の場合は、私が知る限りスピーカーの人は最初から画面上にいます。
そのため、最初から同じ場にいるという前提で捉えることになり、上記のような段取りによる違いを感じる機能が働かないのではないか、と思っています。
「いやいや画面がOFFのケースもあるでしょう?」という意見があると思いますが、そうなっていても、その人の枠があるということが段取りで違いを感じさせないような何かが働いているのではと分析しています。
ちなみに、ウェビナーなど一方的な講義スタイルのものに関しては、場を一緒にしている訳ではないので対象として除外しています。(その場合でも少なくとも司会の人は最初からいることも心理的に影響があるのではないかと思っています。)
他の例
この段取りについての他の例は、会社に訪問した時が当てはまります。
会社の大小によりますが、基本的には訪問した際はまず受付で挨拶をして、部屋に通されて、待ちます。
そして、相手が到着する、という段取りがありますね。より力が大きい方が訪問されるという段取りを重ねることになります。
この段取りはする側とされる側の両方に心理的に影響を及ぼすということ。
社長室をつくりなさい、やめなさいという両極の意見がありますが、いずれも目的は力の強弱に関することにあります。
段取りでもいいと思ったのですが、儀式といった方が2文字で他の語句と合わせて語呂がいいのと、片方に力を付与していく効用から「儀式」という言葉の方が適切に感じたのでこう呼ぶようにしました。
また、この儀式ですが後者のオフィスの構造といったハード面もあれば、前者のようなソフト面もあります。
ソフト面の他の例は、「とりあえず○○さんには確認しておこう」といった同意を求める行為もそれに当たります。
こう考えると、あれも儀式、これも儀式という風にいろんな発見ができて面白いんですよ。
経営者が会社(場)への影響力を下げるためには?
では、経営者が、自分の発言力を下げ、社員等が発言するスペースを創るためにはどうすればいいのか。
4つの観点での対策を紹介します。
実質1つとしたのは、1つ目についてはそもそも会社という形態を取る以上は起業初期を除いて、この状態を作ることが困難だと思うためです。
1つ目は経営者の信念の問題であると言えますし、2つ目も武井さんが半ば執念のように作り上げられたように思えて、こちらも信念のように思えますね。
情報とは例えば財務のことですね。自律分散、ティール的な組織を実現するには管理会計は必須と言われています。また、ある事柄が意思決定されるプロセスの情報の透明性も重要です。
上記、ソフト面については書いたものの目標達成のように逆算して行なっていけるものではないので、進捗をコントロール・予測できないという意味で難易度がめちゃ高いと言えるでしょう。また、人の入れ替わりがあって当然の組織においてメンバー全員をアンラーニング・サポートし続けることが適当なのかは分かりません。(というかこれは社内完結は不可能に近いのでは!?)
さいごに
上記で紹介した4つの領域への対策は、1つ1つ切り取って、西洋医療のように治療していくというようなものではなく、会社が経営者主導ではなく、現場・社員を含めた集合体主導で進化・成長していく土台を築くための原理的な要素だと捉えてもらうのがいいかもしれません。
また、今回紹介した観点はあくまで経営者が、自分の発言力を下げて、メンバーが発言するスペースを創るためのものであり、メンバー自身が積極的に発言するようになるためのテーマは別軸だと捉えています。
このあたりはまた別途考察してみたいなと思います。
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