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170名規模の進化型組織で実践されている「最高意思決定機関の会議」を見学してきました。

はじめに

兵庫県加古川市に本社を構える株式会社ワンピースという会社があります。

売上34億(利益4億円)、スタッフは約170人(女性比率80%。内ママさん比率8割)のこの会社のメイン事業は、婦人服のデザイン&ECでの販売ですが、ワンピース式経営という進化型組織ともいえるユニークな経営を実践されています。
 
例えば、、、、(以下はPR記事の引用です)

『ワンピースでは、目的も規模も多種多様な委員会(=プロジェクト)が存在しています。

新たな委員会が発足しメンバーを募集する際には、「誰かやりたい人?」という声かけから始まります。

本人が持つ「やりたい」という気持ちだけを重要視しており、ワンピースの従業員であれば誰でも(正社員・パート問わず)参加が可能で、各自のスキルや経験は一切問いません。

自ら「やりたい」という意思から生まれるエネルギーを持つメンバーが集まることで、「フロー(スポーツにおける「ゾーン」のようなイメージ)」状態に入りやすくなり、より高い熱量で物事を進めていくことが出来ます。

誰かの指示・命令によって押し付けられた役割を果たそうとするのではなく、自ら「やりたい」という内発的動機に基づいて全員が同じ方向を向いてアクションを起こしていくことで爆発的な推進力・エネルギーが生まれるのです。

その状態がより良い議論や検討にもつながり、自分たちが目指す目的や結果により早く到達することが出来ると私たちは考えています。

そのため、「やりたい」というメンバーがいなくなればその委員会は役割を終えたとして解散することもありますが、反対に「一度発足したからには続けなければ!」という義務感や惰性で委員会が継続していくことはありません。』

※委員会の一部
・社内の秩序を見守りより良くする「就業規則委員会」
・会社としての投資をジャッジする「投資検討委員会」
・会社全体のスキルアップを目指す「勉強会企画運営委員会」
・過去に社内で起きた出来事をまとめる「ワンピースの歴史書作成委員会」
などなど。

こちらから引用

また、この委員会が生まれるもとにあるのは毎月1回開催されている社内会議「ワンピース会(最高意思決定機関)」というものだそうです。こちらは、正社員・パートの隔たりなく誰でも自由参加できる会社全体のことを意思決定していく経営会議のことであり、ほぼまる1日かけて議論を行なわれています。
 
私はワンピースの中の人とご縁ができた関係で、ありがたいことにこのワンピース会を見学(オンライン)させてもらう機会に恵まれました。朝9:30〜17:00に及ぶロングミーティングでしたが学びが多い時間でした。その時の感想を紹介します。

ワンピース会の感想

参加者数は25〜30名くらいだったと記憶しています。進行役は2名で、チームラブという名称の経理、法務、労務など何でも屋の本部部署チームの方でした。代表は途中から参加し、自身が提起したアジェンダ+αの時間に参加した後、途中で抜けていて、普通の考え方では代表は経営MTGには代表は最初から最後までいるものという思い込みがありましたが、自身の影響力を最小限化し、みんなが発言しやすい環境をつくるための工夫なのかなとも思えました。
 
会の進め方は、最初に場にいる全員から扱いたい議題を募り(ない人はパス)、その次に全員が投票し、数が多い議題から順番に話し合っていくというものでした。
 
また、この日扱われたテーマは少額の経費にまつわることから、数千万の投資に関すること、労務関連やITツールのことなど多岐に渡っていました。(おそらくいつもそうなのでしょう)
 
それでは、感想を紹介します。
 
ちなみに、このパートに載せている私の感想はワンピースの方に共有させていただき、こういったオープンな場で紹介することにも了承いただいています。

オープン、ボーダーレス

組織における意思決定の場であるこの会に参加させてもらえるというボーダーレスなところと、経営者の報酬の話題も共有される情報の透明性の高さを感じました。

バランス感

意志あって参加されている全員の意見(表現されているもの、されていないもの)を大事にしようとしながらも、時には優先順位づけや取捨選択といった物事を先に進めていく力強さも感じ、素晴らしいバランスだと感じました。
 
また、そのバランスを創業者がいないときでも保とうとしている、それを意識しているからこそそうなるのだと思うと、それも素晴らしいと感じました。

フラットな空気感/人間関係

①客観的に見ていて誰が勤続年数が長いのか分からなかったし、この人が特に影響力が強い、というのは感じませんでした。(どなたも自分の方が立場が上、みたいな空気感の人がいなかったからそう感じたのかも。)
 
進行/ファシリと議事録担当という役割を担っている方2名以外の発言量も、よくよく聴けば差はけっこうあるとは思いますが、色んな人が話していたという印象が残っているという意味で、それぞれの方が主体性を発揮されている場なのかなと感じました。また、そういう場になっているのがすごいなと思いました。
 
②数千万円の投資に関する意思決定もする場でもありながら、「分からない」とか「個人的にこれは嫌だ」といったものも表現できる、言い換えると役割に個が潰されない安全な空気感があるのがすごい。
 
③経営者の方の影響力は要所要所では感じましたが、それよりもメンバーの1人という空気感を強く感じました。発言の強さも感じはしましたが、それに対する他のみなさんからのフィードバックも忖度なしの正直ベースというのがすごいな、そういう関係性なんだな、と感じました。

自分たちが意思決定者であるという意識

普通の会社であれば意思決定する人は一人だったり、自分がいない場で決まっていくため、そういった権限がある人以外で自分が意思決定する立場だという感覚を持てる人は少ないと思いますが、この場では多くの方が自分たちで決めるという当事者的な意識・意欲を強く感じました。

ミーティングの工夫

①進行の方・議事録の方の場のホールド感や意見の見える化の促進、意思決定しやすい情報の整理等の議論がしやすい土台づくりが素晴らしかった。自分も似た立場をすることが多いので、その大変さを勝手に推測し、すごいなと思いました。
 
また、その方々だけに限らず上記を促進したり、自ら舵を取って議論を進めていこうという人が何人もいて、その人たちのバトンパスによって先に進んでいくところから「場を一緒に作っていく」という想いを感じて素敵だなと思いました。
 
②OSTに似たミーティングの進め方の工夫がとても参考になりました。真似させていただきたい点がいくつもありました。リアクション3倍、ストッパーという立場を用意することや、ブレイクアウトルームを活用して場の停滞を緩和する工夫が印象的でした。

道のりへの尊敬の念

見学させていただいた状態に至るまでには全員の努力/協力が欠かせなかったように思いますし、その道のりについて尊敬の念が湧きました。
 
一番の感想はここである気がします。おそらくまだまだと感じられている部分はあると思いますが、ここまで積み上げてこられていることに感じるものがありました。また、その機会をオープンに共有していただけたことがとにかく有り難かった。

社員のみなさんの視点

ワンピース会に参加させていただいて以来、とても興味を持った私はネット等で色々検索していました。公式HPで社員の方へのインタビュー記事がありましたので、印象に残った箇所を紹介します。

当日進行されていた畑さんの言葉

当時は、ワンピース式アメーバ経営導入は現実的に厳しいと思ってたんです。でも色々調べたり、メンバーと話したりしているうちに、もしかして導入したほうがいいんじゃないかって感じるようになりました。数字をあまり見れないメンバーが多い中、ワンピース式アメーバ経営を導入することで主体的にみんなが数字を理解したり学び始めたりできるんじゃないかって思いました。まさに人々が加速しそうな感じを感じた瞬間でした。
初めて会社見学に訪れた時、新卒もいればベテランもいる全社会議で、在宅ワークについて話し合っていました。衝撃的でした。前職では、責任者、役職のある人しか会議に入れなかったから。この光景を目にしたとき、久しぶりにワクワクした。

モデルの村上さんの言葉

子どもの都合で急に帰ったり、休んだりということはもちろん、自分自身の体調不良で休んでしまうこともあり、撮影スケジュールを当日変更してもらうこともありました。
どうにかやってこれたのは、会社に所属しているけど休みの配分とか時間を個人で決めることができるというワンピースの制度と、何よりも一緒に働くメンバーの助けがあったからだと感じています。
正直、このメンバーでなかったら、頑張れていないかもしれないですね。
アットホームとかフラット組織っていっても、なぁなぁになったり慣れ合ったりしているわけではなくて、会議でも好きなように発言できるし、自分らしくいられるところだなって思います。
生きやすい。
私には、この言葉がぴったり合います。
具体的には、社長とも対等に話ができる、相談したことがあればすぐに話せるし、社内連絡ツールがLINEっていうことも、使い慣れているツールで気を追うことなく話せるようになります。
今まで働いていた会社では、1日休むのにも休み理由を申請する必要があって、「遊びに行く」とかって書けないですよね。体調ちょっと崩しても、なんか気を使ってしまう。
そういうことが重っていくと会社に行くこと自体が嫌になってしまう。
そういうのがないんです。

顧客対応されている細田さんの言葉

なんと言っても、「会社とはこうあるもの」という固定概念が崩れました。今までいろんな会社で働いてきましたが、どこもトップダウンでそれが当たり前だと思っていました。上が決めたものが下りてくる。そんな会社ばかりでした。
ワンピースは全く違っていて、例えばミーティングも一部の人達だけで行うのではなく、参加したい人達全員で議題出しから始めるスタイルなので、正直初めは、自分で考えるということ自体に慣れておらず「どうしたらいいのか?」と戸惑いましたね。

他にも興味深いインタビューが載っていますのでぜひ見てみてください。

終わりに

ワンピースの代表である久本和明さんは、2005年に創業され、2013年頃から経営の進化をさせる取り組みをスタート。ワンピース会が生まれたのは2017年頃とのこと。それまではメンバーとの関係性づくりに注力し、強制的に9割の時間をミーティングにあてて、毎日10人単位で7ミーティングほどされていたそうです。こういった関係性づくり、言い換えれば組織の共同体の側面へのアプローチの土台があったからこそ、今の進化型的な仕組みがワークしているのではないでしょうか。
 
筆者は組織の事業的側面(機能体と言っていいでしょうか)と、共同体的側面が左足、右足のように重心を変えながら前進していくのが経営なのではないかという仮説を持っているのですが、実際は立ち上げのフェーズを超えても事業的側面だけに偏りすぎて内部崩壊的な傾向が出ている企業も少なくないでしょう。そう考えると、経営の視座を持っている人が組織の人々を観た時に違和感を感じる時が、共同体的側面へのアプローチを強化するタイミングなのかもしれませんね。言い換えれば、経営の視座を持つ人がその「違和感」に気づけないまま時が経っていくと、不都合だと感じる出来事が段階的に起こっていくのかもしれません。(個人においてはそういった働きがありますよね。心の声、体の声を無視し続けて身体を壊してしまうなど)
 
久本さんがそもそも2013年に経営の進化に意識が向いたのも、売り上げがどんどん伸びる一方で、周りで働いている人を見た時に全然幸せそうじゃないということがきっかけだったそうです。このことに気がつける感性がすごく大事なのだなと思いました。

また、久本さんは現在、既存事業の枠を越えて、組織づくりを超えて新しい社会づくりにつながる取り組みをされていますのでぜひご注目ください。

ワンピース代表久本和明さんの経営スタイルについて学ぶ方法

(1)書籍(2021年10月29日発売)
久本さん処女作「僕たちはみんなで会社を経営することにした」

(2)動画セミナー


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