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【後編】不快と向き合う:ウィリングネスの実行を支える基礎の部分に必要なものの1つは「自尊感情」かもしれない

 こんにちは、すぱ郎です。

 今回は前回の記事の続きとなっていますので、まだ読まれていない方は前編からご覧ください。

 上記記事で書いたように、ACTの「ウィリングネス」の実行には「不快と向き合う」事が避けられないため中々難しいというのが私の印象です。

 自分の調べた範囲で、ウィリングネスを高めるには2つの手段が重要と言われていました。それが下記の2点です。
①価値の文脈化
②創造的絶望の付加

 ①価値の文脈化とは、価値を明確化して不快な体験と向き合う場面においても、「これも価値に向かう過程の一部だから」と前向きに受け入れる事が出来るようになる事をさします。
 ②創造的絶望については過去記事で触れているのでそちらも一読頂ければと思いますが、いわゆる「変容のアジェンダ」を弱める事で「体験の回避」から抜け出して、新たな思考や行動を試す事が出来るようになるための介入をさします。

 上記2点を意識する事でウィリングネスを高める事につながるとされていますが、私はもう少し根本的な部分で不快と向き合う事の出来る基礎的な能力みたいなものがあるのではないかと感じました。以下が私見になります。

 その基礎的な能力とは、例えば「コンパッション」あるいは「自尊感情」もしくは「自分を信じられる力」のようなものがある程度備わっていないと、ウィリングネスを高める事に困難さが生じるのではないか、という事です。もう少し具体的に書き出します。

 例えば自分にとっての価値をACTのワーク等を通じて書き出すことが出来たとします。でも、じゃあそれですぐにその価値を普段の行動に反映出来るかというと、中々難しい場合もあると思います。
 人によってその理由は様々かと思いますが、その一つが「自分の価値の正当性をいかなる場面でも信じきることが出来ない」「自分を信用できない」という状態なのではないかと思います。
 というかこれは、大体休職中の私の事です。

 この辺りは言語化する事が非常に難しいのですが、そもそも自分の価値を最上に置いて行動の選択がいつも出来るような人は、日常的に苦悩や体験の回避に囚われる機会はそれほど多くないように思えます。
 私は自分の価値をACTのワークを通じて言語化してみても、それを生活の中で実行する事との間に大きな隔たりを感じていた期間が割と長くありました。振り返ると、その時の自分に最も足りていなかったのは「自尊感情」だったのではないかと思っています。
 休職中のある時期を境に私は初めて自尊感情のようなものをきちんと認識する事が出来るようになったのですが、それ以降は自分の「価値に向かう方向」を、割とフラットに受け入れる事が出来るようになったと思います。結果として、その時の状況に応じて自分自身の価値と相談し、行動を選択するという余地が生まれ、「苦痛や不安から逃げない」選択肢も時には取れるようになってきたのではないかと思います。

 こんな感じで、私はウィリングネスと自尊感情(コンパッション)には強いつながりがあるのではないかと感じました。逆に言うと、自尊感情が育たない状態のままに闇雲にウィリングネスを意識して不安に立ち向かい続けても、それはストレスに身を曝し続けるリスクにもつながるので避けた方が良いのではないかと思いました。
 でも、自分もそうだったので思いますが休職中に自尊感情を回復させる事ってやっぱり凄く難しいなと思うのです。大前提として安静・休養が必要な急性期の方は勿論そうですが、回復期に差し掛かっても休職中であるという罪悪感が既に自尊感情を目減りさせるのは否めないです。

 じゃあ自分の場合はどんな経過だったんだろうと考えると、ひたすらに自己分析を掘り下げてスキーマ療法のワークで過去の自分や根っこの部分と向きあったり、自分の価値やそれ以外にも様々なワークなどを通じて自分の行き詰っている現状を直視し、絶望の沼みたいな状態からようやく自分の感情や思考の輪郭が捉えられるようになり、格好悪い自分や過去の自分を受け入れられるようになる事によってようやく「自尊感情」が芽生えてきたように思います。

 文章が上手くまとまらず申し訳ないですが、結論として、私はウィリングネスを有効に高めていくには「自尊感情」は必要不可欠なのではないかと考えます。目には見えない、ただ実感としてあると認識できるかどうかという曖昧なものですが、重要な場面で「自分の価値の方向に基づいて選択し行動する」という事は、口で言うほど簡単なものでは無いと私は思います。不安や不快が巻き起こる場面で自分自身の根っこを支える重要な基礎の1つが「自尊感情」なのではないかと、今の私は思います。
 自分がこう感じるようになったのは、以前と比べて「自分を労わる」「自分を大切にする」「自分の価値を見失わないようにする」といった事が、以前よりも無理なく出来るようになってきているからなのかな、とも思っています。
 例えば「休職中」「復職後」という括りの中でも、人によってそれまでの経験や置かれている状況は全く違います。なので、一律してこの時期にこうした方が良い、みたいな事はあまり私は勧めるようなことはしない方が良いかもしれないとも考えています。
 でも、今の自分としてはやっぱり「自分で自分を粗末に扱わない」という自尊感情の回復は、何よりも優先して良い事なのかなと感じています。行動を変えられなくて悩んだり自責したりする前に、より良い方向に変わろうともがいている自分を認めて労わる気持ちを持ち続ける事が、自尊感情を保つ第一歩なのかもしれません。自分の事は案外自分ではわかっていなかったりするので、私自身は自己分析に没頭した休職中の一時期は無駄では無かったのかもなぁと今は思っています。カウンセリング等で他者の手を借りるのも大いに有効だと思いますが、自尊感情の回復には多かれ少なかれ自分自身と改めて向き合う時間は必須なように思います。私自身もこれから復職して徐々に不快な場面が増えてくると感じているので、自分の調子と相談しつつ、ウィリングネスを高めていけるようにできればいいなぁと思っています。
 以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

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