見出し画像

【前編】不快と向きあう:ACTの「ウィリングネス」って難しくないですか?

 こんにちは、すぱ郎です。
心理療法の一つであるACTは、痛みを受け入れるアクセプタンス(Acceptance)と、価値に送った生活を送るコミットメント(Commitment)が2本柱となっている療法(Therapy)とされています。すなわち、自分自身が大切にしたい(=価値を感じる)方向を明確にした上で、その方向に向かって行動していけるように自分をコントロールできるようになる事が重要な治療目標の1つになっています…と自分は理解しています。

 とはいえそんなに簡単に出来る事ならカウンセリングで指導を受ける必要もないものなわけであって。独習で取り組んでみても、そもそも自分の価値って何やねんという段階でつまづく人もいれば、その自分の価値が何なのか分かっても、日々の行動を自身の価値に基づいて選択する事が上手く出来ないという人もいると思います。私が大体そんな感じなので、この辺りが特に理論と現実の乖離を感じやすい部分だと思っています。
 ACTの中では、不快さや困難さを感じる場面においても、自身の価値に基づいてあえてそれを体験しようとする行為を「ウィリングネス」と呼びます。このウィリングネスを高める事も、ACTにおいて重要な治療戦略の一つになると思います。
 私は元々他者からプレッシャーのかかる場面になると、自分の価値を後回しにする判断をしてしまう事が多く、その時は自分の価値とは別の基準(周囲の評価、揉め事を避ける事を最優先など)で行動してしまう事が当たり前になっていたように思います。
 しかし、先日仕事中に大変だと感じた場面に遭遇した際に、しんどいながらも冷静に考えながら、最終的に自分の価値に基づいて「いつもの自分だったらとらないような行動」を選択できて何とか乗り切ったと感じる経験をしました。
 これは人によっては何でもない事かもしれませんが、自分にとってはそれなりに大きな出来事でした。なので「何故今回は上手く行動を変えることが出来たんだろう。逆になんで今までは出来ていなかったんだろう」などと疑問に思い、少し深堀りして考えたくなったのと、そのことを考えたらウィリングネスについて色々と思い出し、そういえばまだウィリングネスについて記事を投稿した事が無かったのと、今回あった体験はまさにそれなんじゃないかと思い、前編としてまずは今回の記事を書いてみようと思いました。
 ウィリングネスは過去の記事で触れた「変容のアジェンダ」「創造的絶望」とも密接に関わる考え方なので、興味のある方は下記記事もご覧ください。

 ウィリングネスに話を戻します。記事の冒頭でも触れましたが自分の価値に基づいて、不快さを感じる場面であえて体験する行為がそれにあたります。ウィリングネスは「例え不快感があろうとも、その体験が自分の価値に向かう道程の一部であると考えることが出来れば受け入れる事が出来る」という考えに基づいています。
 ただ、実際問題これは中々難しい問題だと思います。何故なら、その不快な体験が本当に価値に向かう道程として向き合わなければいけないものであるかどうかの判断が、人や状況によっては非常に難しいと思われるからです。それって誰が決めるねん、と正直思います。
 苦手な人から距離を取れ。無理な仕事は引き受けるな。頑張りすぎるな。何よりも自分を守れ。他人に配慮しすぎるな。
 例えば仕事で調子を崩して休職した人などは、多かれ少なかれ上記のような言葉をお守りのように身に着けて復職するのではないのでしょうか。もちろん、言わずもがな自分を守る事は大切です。無理をした結果、自分の心身の健康を害する結果になるような行動や判断は極力控えるべきだとも思います。
 その点で考えると、「不快と向き合う」という行為は紙一重でそのように自分に大きな負荷をかけるリスクのある行為になりうると言えます。なので、大前提として冒したリスクをカバーできる余力のある状態でないとウィリングネスを意識した行動をとる事は難しいと言えます。そもそも取り組める時期に含まれる人が限られるという事になります。

 以上のように、ウィリングネスという概念は非常に重要である反面、不快な感情や予測と向き合うという事であるため実践のハードルがどうしても高い印象を受けます。ですが、これが出来ないと「価値に基づいて行動」しているつもりが、単なる「不快から逃げてやりたい事だけやる行動パターン」になってしまっているかもしれません。それで問題ないならそれでも良いかもですが、いずれ行き詰ってしまうかもしれません。地に足をつけて生きていく上で、ウィリングネスはどこかのタイミングで向き合わないといけない課題のような気がします。
 では、そのウィリングネスとどう向き合っていくか。あるいは向き合いやすくなるにはどういった視点が大事なのか。そういった部分についての私見を後編にてまとめてみたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?