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『無人島のふたり』山本文緒

山本文緒さんがある日突然、58歳で余命宣告を受け、最期まで自宅で綴っていた日記。『無人島のふたり』を読んだ。

読み進めながら、もし自分が余命宣告を受けたらこんなふうにいろんなことを整理して、こう行動できるといいな、こう襲う不安な気持ちを抱える覚悟をしておこう、そんなことを考えた。

この本に綴られていることは全てがリアルで、読んで苦しくなることももちろんあるけど、とても穏やかだった。山本文緒さん自身がお別れの挨拶を残してくれているというあたたかみをすごく感じた。

当たり前だけど、全く知らなかった。余命宣告をされていたなんて。私が前作、『自転しながら公転する』を読んでいたときはすでに闘病生活だったとは。

私は山本文緒さんの『自転しながら公転する』を読んで感想をnoteに書いた。そして、『自転公転』オリジナル缶バッジと著者の直筆メッセージが当たる!企画に応募した。

本を読む時に、その著者が今生きているかどうか、ということを今まで考えたことがなかった。でも私が本の感想を書く時、著者に「あなたが書いてくれたことが私の彩りの一部になった」ということを感謝に変えて届けたいと思ってる。

ファンとしての距離感の適正がわからないんだけど、「あなたがいてくれて良かった」と思うことは、面識がなくても沸き起こる感情で、生きているうちに山本文緒さんに本の感想を通じてそのことを伝えることができていてよかったと思った。

本の中に、山本文緒さんがまだ書きたかった作品のテーマを公開している章がある。この環境の女性をテーマにこのメッセージを伝えたいけどもう書けないのでどなたかどうぞ、と。まだ新作を読みたかった、という気持ちが溢れた。書きたかった、読みたかった。もちろん今まで書かれた本はこれからも誰かの人生を動かす。別世界に連れて行ってくれたり、勇気をもらったり、月並みだけど作品は生き続ける。

人間という媒介を通して世の中にメッセージが出て、それが人を動かす。書くことの偉業を生業にされていた山本文緒さんのご冥福を心よりお祈りします。

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