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もう1人の自分

芸術家や占い師、創造する人間には「もう1人の自分」がいると聞いたことがある。そして女体の場合は、その「もう1人の自分」は期間限定であるとも。

月のものが来てしまったとき、男を知ってしまったとき、「もう1人の自分」が消えてしまう。

ある華道家が恋愛をしたことで「もう一人の自分」が見えなくなるという日本のドラマがあった。そのドラマの中では「後ろ生け」が主流の流派で、出来上がりの正面をお客様の方へ向けたまま、後ろ側から花を生けていくことで、この「後ろ生け」をするときには正面に「もう1人の自分」が立つのに、その華道家は恋をしたことで「もう1人の自分」が見えなくなってしまう。

ある海外ドラマでは、月のものが来ると目に見えない世界を感じることができなくなり、魔法も使えなくなるという話があった。さらに、月のものが来るとすぐにどこかの国の王女として迎え入れてもらわなければいけなかった。真っさらな女であることの証明と共に、他の国よりも早く次の王を産むことが最優先された。

ディズニー映画に出てくる雪の女王は、自分の国を持つ安全な場所で、恋をしないからこそずっと魔法を使い続けていることができるのかもしれない。

女体には、何もないところから何かを創り出し生み出す力が宿っている。相手のDNAを身体に取り入れる準備が整うと、すべての創造物は命にならないといけないように組み込まれているんじゃないだろうか。別の世界とつながることができる「もう1人の自分」は去って、分身は人間として生み出さないといけないのかもしれない。

私は、もう1人の自分があの時までいた、という感覚はない。でも自分より相手を想うという経験をしたときに強烈な恐怖と孤独を感じた記憶がある。相手を想っているはずなのに喪失に近い感覚だった。女体が創造物を生み出す準備が整うと、私は私だけの私という感覚がなくなってしまうのかもしれない。

この感覚を思い起こすと、小さな小さな自分がまだいる気がした。導いてくれるもう1人の自分ではなく甘えなおししたがってるもう1人の自分。

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