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組織開発はなぜ難しいのか

20年と組織開発に携わってきたが、つくづく難しいなあ、と思う。どうすれば、組織は変わっていくのか、機能するのか、どの手法が最善なのか、と頭を悩ませ続ける日々を送っている。が、今だ明瞭な答えは見いだせない。あまりにも難しいせいで、そもそも組織に対して、少なくとも外部のコンサルタントという立場では、変化を起こせないのではないかとも思う。2020年にぼくたちの働き方を変えたのは、組織開発ではなく、新型コロナウイルスだった。あのときほど、無力を感じたことはない。ぼくはなぜ外部コンサルタントとして組織開発に携わるのか、という問いとして自分自身に返ってきたのである。

以前、ぼくは組織開発とはアートのようなもの、だと言った。

でも、アートのようなものとして片づけてはいけない。自己満足の組織開発から、成果創出への組織開発へ。これがぼくのスローガンである。

では、なぜ組織開発は難しいのだろう。それにはいくつかの要因がある。
ひとつには、組織開発そのものの曖昧性である。中原淳、中村和彦『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』を紐解くと、組織開発の定義が書かれている。

組織をworkさせる意図的な働きかけ

中原淳、中村和彦『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』

work?意図的?と頭がポカンとした読者もいるのではないだろうか。workは、機能するという意なので、「組織を機能させる意図的な働きかけ」(Egan, 2002)と言い換えられるだろう。「27通りの組織開発の定義の中に、60個も変数が存在している状況」であり、定義が定義の意味をなしていないのである。だから、実態がよくわからない。このことが、組織開発をとっつきづらくさせてしまっている。

また、読者の皆さんは、組織と聞いて何を思い浮かべるだろうか。このような質問をすると、組織図のような階層構造や、役割分担されたチームをイメージされる方が多い。お気づきのとおり、組織もその実態が不確かなのである。組織開発云々の前に、組織がそもそも捉えどころがない。マッキンゼーの7Sやナドラー=タッシュマンの整合性モデルなど知る人でない限り、組織を明確にイメージすることは難しいだろう。そして、7Sと整合性モデルが組織といっている内容も、似通ってはいるが、まったく同じものではない。バリエーションがある。

組織開発の効用が不定であることも組織開発を難しくする要因のひとつである。組織がworkすることを組織開発は目指すのであるが、workするとは一体どういうことなのだろうか。一般的には、組織が活性化しているとか、ハツラツとしているといった言葉で表現されることが多い。でも、活性化しているとは具体的に何なのか、活性化するとどのようなよいことが起こるのか、まだまだ具体的にできる余地はある。さらに、ややこしいことに、組織開発のアプローチもさまざまである。「意図的な働きかけ」もたくさんあり、何かひとつに絞り込むことができない。7Sや整合性モデルにもあるように、組織を構成する要素が複数あるため、アプローチも多様なのだ。戦略を扱うこともあるし、業務設計・改革をおこなうこともある。人材開発や人事評価制度などHRに近い領域もある。

晴れて組織課題が明確になり、組織のどの構成要素に、何の手法を使ってアプローチするを決めることができたとしよう。この段になっても、組織開発はさらなる課題を抱えることとなる。つまり、その効果が断言できない、かつ、測定も難しいのである。たとえば、組織がworkしたことをどのように測定すればよいだろう。あるいは、人材戦略に紐づいた人事評価制度が策定できたかどうかをどのように証明するのか。

このように、組織開発はわからないことだらけなのだ。わからないことだらけなだけに、組織開発の実践者はさまざまな曖昧性を、各々が定義しながら、支援を進めることになる。各々が定義するから、組織開発の継承にも支障をきたすことになるのである。ぼくなりに、組織開発に熟達する術をまとめてはいる。でも、こちらも道半ばである。興味がある方は、参考にしてもらえればと思う。

問題含みの組織開発を、いかに経営に資するものにするのか。
ぼくは今、そんなことを考えている。

参考文献
Egan, T. M. (2002). Organization development: An examination of definitions and dependent variables. Organization Development Journal, 20(2), 59 - 70.


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