眠りの森の美女マンションとおそらく間違っているインテリアコーディネート

画像1 1926年築のこの建物のマンションを競売で落として、このマンションには全くそぐわないインテリアのシミュレーションをしてみるとする。どちらも不可能なシナリオであるがお付き合い頂けたら幸いである。
画像2 ここのマンションは眠りの森の美女が住む城を彷彿させる。同意して頂けるであろうか。特に歴史的建造物というわけでもないに拘わらず人目を引くマンションがストックホルムにも多くある。
画像3 さてお値段は?3階の3LDK、112平方メートル。2019年末に売却されたものではおよそ1億1500万円。現在の市場価格はさらに上がっているはずである。通常中古マンションは競売になるが、このマンションに関しては当初の売値よりも1千万円跳ね上がった。バブル期にはほぼ全額の住宅ローンを組むことも可能であったが、最近では頭金を借りるわけには行かなくなった。よっていかに収入が高くとも新卒の社会人が住宅獲得戦に参入することは非常に難しくなっている。親が富豪なら借金をするという選択肢もあるが。
画像4 マンションの住面積に関して何かお気付きになられたであろうか?住面積の割には部屋数が少ないのである。昔のマンションの利点でもあり欠点でもある。場合に依っては、広くともバスルームが一つだけというような場合もある。住面積は広くとも廊下が狭くジグザクになっておりベッド等を運び入れるのに難儀をするような場合もある。オランダのように窓から運び入れる方法が採られる場合もあると聞く。
画像5 さてこの壁は一般に「緑の外壁」と呼ばれる。果たして何のメリットがあるのであろうか。主にエネルギーの節減である。冬には室内の保温効果があり、夏は室内の温度を下げる。室内に設置する(同等の機能を有する)植物壁というものもあるらしい。
画像6 私が以前住んでいたマンションは1910年頃築であり、現在住んでいるマンションは2015年築のものである。どちらも甲乙つけ難いが、現在は洗濯機が(暗い地下室ではなく)マンションの中にある点が非常に有難い。しかし20世紀前半は洗濯室が同じ建物の中にあるということだけでも近代的であった。
画像7 海岸までの距離はおよそ20メートル、最寄りの地下鉄駅からは徒歩7分。どこのマンションからも海が臨める。自然と緑と海岸通りのレストランにも囲まれている。
画像8 このマンションから眺める海は冬には一面銀色の世界になることもある。以前も紹介させて頂いたが、多くの白鳥と鴨が餌付け時に激しい争奪戦を繰り広げている光景は特に素晴らしい。
画像9 現在は東西南北どちらを眺めても、スピード全開のボートが視界に入る。このマンションは「王様の島」に位置しているが、この橋は「南の島」へ導いている。この橋の中腹に向かって緩く長い勾配が続いているためマラソンランナーにとっては最難関であるとも言われている。
画像10 遠方にはストックホルムの中心と旧市街が臨める。バルト海沿いでは津波の心配をしたこともない。
画像11 同じ通りに緑の壁を持つ建造物がもう一棟あった。しかし、こちらは歴史的建造物である。すなわち(通常であれば)ノーベル賞授賞式晩餐会が開催されている市庁舎である。
画像12 さて、インテリアはどのようにさせて頂こうか。まず寝室はこのような雰囲気。この色調は何故かスタンリー・キューブリック監督の技法を彷彿させられる。あまり落ち着かないかもしれない。
画像13 このように色調を変えてみる。どちらにせよスタンリー・キューブリック監督の映画の雰囲気になってしまう。もう少し考えてみよう。とりあえず火の用心。
画像14 天井の高さはおそらく3,7メートルから 4,3メートルあるため天井からこのような照明を吊るしても頭をぶつける危険はおそらくない。懐に余裕があればTom Dixon社のMelt Pendelシリーズを検索して頂きたい。Tom Dixon社の照明は大人気である。巨大な琥珀石の如く、眺める方向により異なる光沢を放つ。
画像15 古いマンションを購入した場合、難儀をする点は何であろうか。インテリアをアンティークに統一しないと調和を取りにくくなってしまう点がある。アンティークショップ、ブコウスキー等の高級オークション、田舎の村等で開催されるオークションに足を運んでイメージに合う家具を一つ一つ吟味しなければならないため満足のゆくものを揃えるまでは相当時間が掛る。最近では、古いマンションを売却する際にはモダンな内装に改装をしたほうが売却が容易になる。よってそれほどアンティークにこだわる必要もなくなって来た。
画像16 たとえ古くともモダンにリノベーションをしてあるマンションには、インダストリアルスタイル、ヴィンテージ、ブルックリンスタイル等を混在させてもそれほど違和感はないであろう。写真に見られるのは井戸から水を上げるポンプであるがインテリア小物としては遊び心満載である。
画像17 こちらはトナカイの角を模った燭台。鉄製なのでかなり重い。材質が真鍮であればなお雰囲気が出ると思うが。
画像18 こちらは古いティーポットを模った照明。遊び心は認めるが私は購入しない。しかし暗闇でどのような光を表現するのかは興味がある。
画像19 こちらも、上の方の写真の金色のヴィンテージのダイニングチェア同様、購入したかったのであるが、金色というものは簡単なようで溶け込ませることは難しい。例えば我が家のインテリアは白、緑、黒、照明器具はほとんど真鍮、が基調になっている。インテリアデザイナーの方々の意見を伺いたいものである。
画像20 このような荷台風ワゴンも遊び心があり、実用性もあるので人気がある。今回紹介させて頂いたブティックのようなインダストリアル、ヴィンテージスタイルのインテリア家具、小物を扱う店は近年増えて来ている。しかしこれらは眠りの森の城にはおそらく調和しない。この価格帯のマンションを購入する場合は家具調度品もそれほど冒険は出来ないであろう。
画像21 結局、このブティックもパンデミックの煽りを受けて閉店を余儀なくされた。閉店前に割引セールを開催し、店内の製品は瞬く間に売れ切れていた、写真上の超芸術的な(?)花瓶以外は。高価格帯マンションは数多く見学させて頂いた。中には壁を黒のペンキで塗り尽くし、家具小物はサイケデリックな色調に統一していたところがあった。売却時には苦労していたようである。しかし、住まいとは自分自身のものであるため、自分が一番幸せに感じられるコーディネートをするのが最善だと思うのだが果たしてそれは間違っているのであろうか。