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防災をアップデートする!障がいがある皆さんと実施した「インクルーシブデザイン」ワークショップとは?

いつもお読みいただきありがとうございます。
防災ベンチャーKOKUAの横山です。

100人いれば、100通りある防災対策。
みなさんの身の回りに、障がいがある方はいらっしゃいますか?

内閣府のデータによると、障がいがあるかた(身体・知的・精神を含め)の数は、なんと国民の約6%(740万人以上)と言われています。(ご家族を含めると関連人口は何倍にも膨れ上がりますね……)

”災害時に、特に配慮が必要な障がいがある方々は、どのような防災対策が必要なのか?”

今回は、上記の問いをきっかけに、4月22日に開催したNPO法人「Collable(コラブル)」さんと一緒に、障がいがある方々と防災について考えた、オフラインワークショップについてイベントレポートをお届けします!

当日の様子をKOKUA代表泉へのインタビュー形式でご紹介します。
ぜひこちらで紹介したワークを通じて、皆さんが防災について考えるきっかけになれば嬉しいです。

▼当日のスケジュールは目次の通りです

NPO法人Collable(コラブル)とは?

代表の山田さんが登壇中

ーーー今回コラボしたCollable(コラブル)さんについて教えてください。

泉:
「誰もが社会に参画できる」未来を目指し、障がいのある方や高齢者、外国人など特別なニーズや違いがある人たちとともに、インクルーシブデザインの考え方をベースとした環境づくりを行うソーシャルデザインチームです。

商品・サービス開発のプロジェクトや人材研修、コンサルティングなど幅広くプロジェクトを実施されていて、以前パーソナル防災サービス #pasob oのオンラインヒアリングイベントでも、コラボさせていただきました。

▼インクルーシブデザインとは

インクルーシブデザインとは、障害のある方など、様々な違いをもつ人たちを、デザインを考えるチームメンバーとして、アイデアを考える初期の段階から同じ目線で関わってもらうデザインの方法。

引用: Collable 公式サイト

防災をアップデートする!
インクルーシブデザインワークショップ

ーーー「防災をアップデートする!インクルーシブデザインワークショップ」というイベント名ですが、具体的にはどのような内容だったのでしょうか?

泉:
具体的には、健常者と障がいがある方(※リードユーザー)と一緒に「避難所」をテーマに、日々の生活と比較をしながら防災対策のアイデアを考えました。

様々なニーズのあるリードユーザーさんの視点をともに共有し、考えることで、普段気づき得ないような防災をアップデートするアイデアをみんなで考えていこう! という趣旨ですね。

※リードユーザーとは
インクルーシブデザインにおいて、気づきを導いてくれる存在となるパートナーを指します。今回のイベントでは、車椅子ユーザーさん、聴覚障がいがある方など4名に参加いただきました。

当日はリアルタイムでグラレコを作成いただきました!

WORK① 
あなたがもし避難所生活をするとしたら

ーーー初対面の方も多いオフラインイベント! 肝心なアイスブレイクとなる最初のワークは、どんなことをされましたか?

泉:
まずは「あなたがもし冬の3日間避難所生活するとしたら、どんな防災グッズ揃えますか?」というテーマでグループに分かれ、予算とそのポイントを話し合いました。

やはり多かったのは、5,000円〜1万円前後の予算。
日々の生活もある中で、いつ起こるかわからないものに対する予算はなかなか割きづらい……というのが心情ですよね。そのあと各自で発表し合って、自己紹介タイムとなりました。

ーーーちなみに参加者は、どのような方が多かったのでしょうか?

泉:
学生さんから主婦の方、行政関係者まで、年齢問わず幅広い方々にご参加いただきました。運営も含めると、全体で25人程度でしたね。

WORK② 
ふだんの1日を可視化してみよう!

ーーーアイスブレイクの後は、それぞれの1日について書き出したんですね。

泉:
災害時ではなく、まずはふだんの1日について可視化するのがポイントです。

朝起きてから夜寝るまで、どんな行動をして、どこの場所で、どんなことを誰とするのか……と、どんどん書き出していきます。

自分の1日の可視化が終わったあとに、リードユーザー(障がいがあるかた)の1日についてみんなで話し合い、大きなポストイットで整理していきます。

車いすユーザーの方の1日をみんなでペタペタ……

〜防災講義〜 
避難所ってどんな場所?

ーーー泉さんの避難所についての講義は、どのようなことを話されましたか?

泉:
みんなでリードユーザーさんの1日を理解したあとに「避難所」について僕から現場の様子や問題点などについて話しました。

主には

  • 避難所ってどんなところ?

  • 発生するであろう問題点

  • 障がいがあるかたの被災リスク

などについて、写真や資料を用いて参加者の皆さんに共有しました。

避難所レイアウト図(プレゼン資料より)

泉:
イメージしやすいことで言えば、スマホや電子機器の充電はなかなかできないし、居住スペースはかなり狭い場合が多いです。

あとは、避難所の夜は明かりがないので、ほとんど外は歩けません。女性などは、性被害の危険もあるので、1人で歩かないようにするとか、ライトを持ち歩くことは大事ですね。

避難所の要配慮について(プレゼン資料より)

ーーーーテレビでよく見る避難所は、体育館にいる姿が多くて、実際の様子や、問題点について知る機会は少ないですもんね……

泉:
ふだんの1日を可視化したあとに「避難所でもし過ごすならこんな環境で暮らさないといけない」ということを理解してもらうのが狙いでしたね。

WORK③  
必要なものをもう一度考えよう!
防災グッズえらび

価格を確認しながら、防災グッズをもう一度選んでいる様子

ーーーライフラインが止まったり、避難所での集団生活を想像すると、足りないものがたくさん浮かび上がります……。

泉:
避難所は、専門性を持って補助してくれる人が必ずいるとは限りません。

なので例えば、車椅子ユーザーさんだったら「誰か手助けしてください」という意思表示をする手段を持ってた方がいい。

耳が聞こえにくいユーザーさんだったら、補聴器の電池を入れ替えるための予備の電池を持っておこないといけない。

など、リードユーザーの方々の生活を軸に、ヒアリングをして、避難所の環境等もわかった上で、どんなものが避難所で必要になるかを書き出してもらいました。

グラレコ途中経過


ーーー当事者の方から話を聞くと「生活に必要なものが、もし足りなくなってしまったら……」という状況が、いかに深刻かがわかりますね。

泉:
そこから最後のワークとして、アイスブレイクで決めた自分の防災グッズの予算内に当てはまるように、防災グッズを選んでもらいます。

実際に#pasoboで取り扱っている100種類以上の防災グッズをカードにしたもの(金額記載)を用意しました。

なので、アイスブレイクで予算は5,000円! と言っていた人は、どうにかして5,000円以内に収まるように選ばなきゃいけない。

自分用を選んだあとは、障がいがあるリードユーザーさんになりきって選ぶワークだったので、取捨選択は難しかったと思います。


ーーー避難所でのリアルな生活を聞いたあとだと、アレもコレもほしい……と当初に決めた予算だと、かなり厳しくなりそうですね。

泉:
このワークを通じて伝えたかったことは
漠然と想像した防災グッズの予算感と、数日間を避難所と過ごすと具体的に想像したときの予算には大きなギャップがあることでした。

大体多くの方は、予算5,000円〜1万円と言いますが、想像を膨らませてみると、その額だと限界もあるんですよね……。

とはいえ、自分がすでに持っているものは買う必要はないので、足りないものをカスタマイズする形で、これが揃えば災害時でも不安を少なくできる!  というアイテムを知って欲しかったんです。

グラレコ完成!素敵……!


ーーーふだんの生活と災害時のギャップをワークショップを通じて可視化したのも、ポイントでしょうか?

泉:
避難所での生活をイメージするときは、まずはふだんと同様な1日が健全に送れるかどうかという視点で考える方が分かりやすいです。

大半の方は避難所に行ったことがないから、いきなり避難所での生活で必要なものをイメージするのは難しいですよね。

ほとんど準備もない体育館の中で、ふだん自分が送ってる1日を過ごそうと思うと、具体的にどこがしんどくなって、何が足りないのか。

日常とは違ったり、できなくなってしまうことを可視化して比較することで、自分に必要な防災対策に気づいてもらいたくて実施しました。

〜イベント裏話〜

ーーーこのイベントをやろう! となった経緯を教えてください。

泉:
もともとCollable(コラブル)さんとは、以前からご縁があり、パーソナル防災サービス #pasoboを開発する中で、進捗共有をするタイミングが多くありました。

僕たちは、”誰ひとり取り残さない防災”を目指して、#pasobo を開発していたのですが、障がいがある方々が、災害時になにが必要なのか? どんなことに困るのか? ということについて当事者の生の声を聞く機会って、とても少なかったんです。

泉:
Collable(コラブル)さんと一緒に、一方的なヒアリングではなく” ワークショップ”という形でやれば、参加者の方にも学びになるし、KOKUAとしても、より深く障がいがある方の1日を知ることができる!

さらに、災害時ではどうなるか? について、意見を出し合いながら1つの答えを導き出せるのもいいなと思い、実施することになりました。

参加者の皆さんには、災害時に”要配慮者”と呼ばれる、障がいのある方々がどんな過酷な状況になるかをまずは知ることで、いざというときに助け合いや寄り添ったコミュニケーションが生まれればという思いもありました。

▼イベント当日の様子はこちら

防災を”たのしく”知る
あたらしい手段に

ーーー泉さんご自身、もしくはKOKUAとしての気づきや学びがあれば教えてください。

泉:
「防災は自分ごと化が難しい」とよく言われていますが、手順をしっかり踏めば、防災に対する自分ごと化は、可能なんだと体感できましたね。

「防災グッズ大事だよ」とか「災害ってこんなに怖いから準備してね」という伝え方だと、なかなか楽しくならないしネガティブなイメージが先行してしまうのがよくあるパターンで……。

ですが今回は、ワークショップを通して「自分のふだんの生活の1日ってどんなんだっけ?」と振り返るところから「避難所では、ふだん生活を再現できるのか」とみんなでディスカッションしていく流れが、かなり面白かったです。

発表の様子
手に持っているのは、マイクではなく聴覚障がいの方の
補聴器に音声をおくる送信機

ーーー障がいがある方をリードユーザーとして、ワークをしていたので、擬似体験のような感覚になれたのかなとも感じました。

泉:
同じグループ内で一緒になって考えることで、自分(健常者)ではなかなか気づくことができない、障がいがある方が日常で抱えている課題を知ることができました。

身体的な障がいがある方は、ご飯食べることも、トイレに行くにも、誰かの助けが絶対必要になってくる。

実際に、僕自身も「この時は〇〇が必要」「ここが〜〜だと大変」など、シュチュエーションに沿った生の声を聞くことができたのは、気付きが多かったですね。

車椅子ユーザーさんの一例:
スマホやPCの作業をする場合、筋肉が硬直してしまうのを防ぐために書見台(漫画家さんが使うような斜めになっている机)が必要になる。

コラボ大募集!
みんなでつくる”誰ひとり取り残さない防災”

ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

ーーーさいごに読者の皆さんにメッセージをお願いします!

泉:
防災は、人の数だけ必要な対策が異なるものです。僕たちが運営しているパーソナル防災サービス”#pasobo”も、さらに様々な年代や、特性を持った方々にヒアリングを重ねて、常に進化し続けたいと思っています。

  • 親子での防災

  • 高齢者や介護が必要な方の防災

  • 日本語が苦手な方の防災(留学生・技能実習生)

  • 特定の自治体に特化した防災対策…………etc

多くの皆さんと一緒に防災対策を広めていきたいと思いますので、コラボやイベントなど、個人・団体問わずぜひご一緒させていただきたいです!

★防災に関わるワークショップを企画したい/受けてみたい! という方は info@kokua-social.jpまでご連絡ください!

防災ベンチャーKOKUAでは、今後ももっと身近に防災を知ってもらったり、行動に移すきっかけとなれるようなイベントを実施予定です。

皆さんのご参加をお待ちしております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!


防災ベンチャーKOKUAでは「1分でわかる防災のカタチ」をテーマとした、パーソナル防災サービス#pasoboや、大切な人のいのちをまもる防災カタログギフト「LIFEGIFT」シリーズをお届けしています。

▼パーソナル防災サービス「#pasobo」

▼いのちをまもる防災カタログギフト「LIFEGIFT」


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