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高齢期リハビリのココロエ32【恥骨骨折後の触れないリハビリ】

 恥骨骨折をされた80代後半の女性を担当いたしました。骨折後は言わずもがな車椅子生活でした。本人も「もう歩けるようになんて絶対にならない。」と落ち込んでおられました。
 恥骨とは骨盤の一部です。イラストのマルで囲んだところで、体重を支えたり、内蔵を守ったりしてます。

で、やっぱり足を動かしたり、立ったりすると痛いんです。2週間は安静が必要となります。
 さて、安静期間ですが、車椅子生活。動くと痛みがあります、そのためできるだけ痛みを伴わず、痛みに応じてかつ活動レベルを落とさない動作を教育する必要があります。本人の自発的動きと介助のバランスを注意深く調整していくことがリハビリとなっていきます。
 次に安静期間が終わり、立ったり移乗したり、平行棒で歩いたりする時期ですが、これも痛みに応じて行っていきます。ポイントは『自分で考えてもらうこと』です。『どの動作だったら痛みが増悪しないか、残らないか、動けるか』をいかに自分で感じるかが大切です。つまり動く範囲を自分で決めてもらうわけですね。それを生活に落とし込んで反復してやっていく。セラピストはリスクが最小限になるよう、その動作や活動を修正、アドバイスしていきます。
 『最初は移乗を見守りで行う』『平行棒で足踏みする』『平行棒内で歩く』など、段階的にセラピストと練習以外の時間を自分で考えて自分で治してもらうわけですね。
 でもやっぱり痛いわけで「もう無理です、歩けないです」と本人もおっしゃってました。そんなときは「絶対にまた歩けます。」と真剣な眼差しで励ましていました。
 ある日、平行棒内で一往復できるようになりました。わたしは「そしたらいつでもここへ来て、自分で歩く練習をしてくださいね、疲れたらいつでも休んでいいんですよ。」とだけアドバイスをしました。
 すると平行棒内で10往復できるようになり「先生、いけます!歩けます!」と気持ちが変わってきました。「そしたら押し車で歩いてみましょうか?」と提案すると「え〜、怖いですけどやってみます」と言われました。
 押し車にて見守りで70m歩けました。しばらくは平行棒はひとりで押し車は見守りが続きましたが、いよいよ押し車をひとりで行けるようになったのです。本人は「先生!また元のように歩けるようになりました!」と満面の笑みで話されていました。「◯◯さんが自分で考えて自分で治されたんですよ。」とわたしは本人へ返答しました。
 今回、わたしは関節の可動域や筋力やバランス能力確認のために身体に触れましたが、あとは動作教育、環境調整(介護方法の修正)心理教育でアプローチをしました。ストレッチや筋トレが必要な方はもちろんおられますが、リハビリにはこういった方法もあります。ポイントは…『自分で考えて行動してもらうこと』『安全な範囲での動作や歩行を繰り返す』でした。セラピストはその瞬間瞬間の判断をしていく役割があります。


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