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高齢期リハビリのココロエ18 物盗られ妄想・帰宅願望のある方への対応

 施設の認知症ご利用者が「わたしは今日、帰ることになってはずなのにどうなってるの?」また、違うご利用者も「わたしが洗濯したものが返ってきていない、誰かに盗られた!」とおっしゃっています。さて、どう答えるのが正解でしょう?
 私の場合は、一旦ご利用者のおっしゃることを肯定して一緒に困った気持ちになります。「困りましたね、帰る予定だったんですね。」といった感じです。やっぱりご利用者自身が感じていること、困っていること自体を「違いますよ」と否定すると、「わたしのことわかってくれない!」となってしまいすしね。
 つまり「わたしの言うことを受け止めてくれる人がいる」という安心感が気持ちを落ち着けるんだと考えられます。いわゆる安心・安全欲求を満たすことですね。この場所には信頼できそうな人がいる=とりあえずここ(人)は安心できるかもしれない、といった感じです。
 この安心・安全欲求の根本は人間関係だとわたしは解釈しています。そもそも認知症の方はよほど重度でない限りは人と関係性を築くことはできます。わたしの場合はまず、挨拶+名前(さん)をすれ違うたびに行います。またそこに「元気ですか?」等、一言添えたり、ハイタッチをしたりします。するとご利用者は「あれ?この人は気軽に声をかけてきてくれる。なんか気持ちがいいな。」と感じられるんではないか、と推測できます。そして人間関係ができると少しずつご本人が訴えることも少なくなってきます。
 次の段階は所属欲求を満たすことです。具体的にはグループに所属しているという欲求が満たされるとさらに落ち着いて生活できるようになります。たとえばエコバッグ作りや風船バレグループに入るなどです。そこで人と交流したりすると尚、よいですね。
 さらに自分がした行為、活動が「人のためになっている」「認められる」ことにつながるとよりお気持ちは落ち着きます。たとえば、作ったエコバッグがコンビニなどで実際にお客さんが使っていると認識することです。これはいわゆる承認欲求が満たされる状態ですね。
 実は認知症の方が落ち着いて生活するには前述の『安心・安全欲求』『所属欲求』『承認欲求』が満たされていることが重要といえます。言い換えると【安心・安全欲求】『人間関係の構築=信頼できる人、理解者がそばにいること』→【所属欲求】『人間関係の中に自分がいると感じること+そこで行うことがある』→【承認欲求】『集団の中で認められること+役割がある』、各欲求を満たすことで認知症の方が落ち着いて生活できるポイントとなります。
 お気づきかと思いますが、心理学者マズローの欲求段階説なんです。これに当てはまらないこともありますが引き出しのひとつとして使ってみてはいかがでしょうか?非常に効果的ですよ。瞬間の対応だけでは解決にならないことが多いんです。

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