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20日目:ウォーキングという名の山登り〜廃集落と遺産を歩く〜【東之川・西之川編】

1月6日水曜日。

新年一発目の大保木公民館の行事へ参加。

今日は年に何度かあるウォーキングの日。
大保木の方と一緒に大保木を巡ることができる日です。
今回のまとめは大保木ファン必見かもです。

歩くのは大保木の中でも外れに位置する、東之川と西之川という二つの地域です。
もともとはそれぞれ村だったのだけども、合併して大保木村に、そして大保木村がさらに合併して西条市になり、そこの大保木地区となりました。

どちらの地域も、お隣の県、高知県に接しています。
それくらい大保木は愛媛県の山の中なのです。

公民館から参加者同士、車を乗り合わせて出発地点の西之川で再度集合。

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皆さん、防寒対策ばっちりですね。
本日、ウォーキングでガイドを務めてくださるのは、紫色のコートを着ている西之川出身のお方です。

さあ、まずは大宮神社から参りましょう。

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…て、寒い…。晴れているけれど、だいぶ寒い。
ここは公民館よりさらに上に上がったところにあります。公民館の標高はだいたい200m弱で、西之川は430mほど。そりゃ、気温も違いますよね…。
ウィンドブレーカーを上下で着ていても動いていないと寒さが凍みます。

今年一年の健康を願って手を合わせます。
無事に戻ってこられますように…。
(どんな所まで行く気だよ、と言われそうだし、この時は私もなんとなく言ってたけど、歩いてみたら、あながちこの願いは間違いではなかったことに気づく…)

近くには西之川の集会所があります。

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ここはもともと高宮小学校だったところです。
大保木のキャンプ場石鎚ふれあいの里は以前高嶺小学校のあった場所ですが、その分校として設置された学校。
そこが廃校後に西条少年自然の家になり、そのあとに西之川の集会所として現在は残っているわけです。

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看板の間取り図でいうと、集会所は『石鎚の間』という部屋にあたります。
今はもう、その隣のトイレとグラウンドのみで、それ以外は跡形もなく無くなりました。

(噂によると、以前あった自然の家は…夜に出るらしいです。聞いた話であって今はもう無き施設なのでおばけの確認はできませんが)

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山にうっすらとロープがかかっているのが見えるでしょうか。あのロープウェイで成就社(写真で見えてる頂上)まで行き、そこから歩けば石鎚山の頂上まで行けます。
こんなにくっきりと山が見える天気、いいな。寒いけど。

さあ、本日はここから東之川まで2.5㎞歩きます。東之川は西之川よりももっと上に位置しています。もちろん、坂道。

進んでいくと、すごい山崩れの起きている箇所が。

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平成24年頃、土砂災害が起き、さっきの看板の『市道東之川線』の一部が埋まり、通れなくなったために、西之川から東之川まで行けなくなってしまいました。

私は新しくできた道路から、この台風の爪痕を見ているわけです。

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この土砂をどかすよりも、新しく道を作る方が早かったのだそう。
幸い、生き埋めになったような人はいなかったとのことでよかったです。

道を進むと、脇に草ボーボーのところが。

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ここは春になると木苺がたくさんなるそう。
(食べにこよう…)

あら、お隣を歩く大保木住民の持つステッキ、いいなぁ。

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「これがあったら、杖にもなるし、枯れ葉もかき分けられるから便利じゃよ」

こういうのはそこら辺に落ちてる枝なのだけど、自然のものでも太さもあって丈夫なのだそう。見ると、他にもちらほらと木のステッキをついている方が。
こういう山道で、しかも年配になるとあった方が便利かもしれない。

日が差してきて、少し暖かい中をどんどんと進みます。

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これ、見てみ。
ある方に言われてすぐわきを見ると何やら掘ったような跡が。
「イノシシが掘ったんよ」

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え、イノシシ!? そうなんだ! ていうか、なんでわかるんですか!

匂いでわかる、と言ってその方は笑っていたけれど、実際に掘り方でわかるそう。
大保木はイノシシがたくさんいる。
まあ、日本の山の中にある田舎っていうのはだいたいイノシシがうじゃうじゃ住んでいたりする。

聞くとイノシシはミミズを食べるが、それを掘りに来た跡なのだとのこと。へえ。また一つ学びました。

まずは東之川の神社をお参りしに行きますが、みんなが道路を進むのを横目に、一部の方々は山道を入っていきます。どうやらこちらへ進む方がちょっと近道らしいです。
私もついていきます。

確かにこれは、なかなかに細くて足場もよくなくて、あまりお勧めできる道ではありませんね。倒木が何本かあるので、くぐったりまたいだりしながら進みます。

やがて赤い橋の前に出ました。

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ここから先が神社へと続いているそう。

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高智八幡神社(こうちはちまんじんじゃ)です。

最初に行った大宮神社は西之川の氏神様を祀っていますが、こちらは東之川の氏神様を祀っています。
両神社ともに6月と10月に春祭りと秋祭りがそれぞれ開催されるとのことで、地元の方や地元を離れている出身者の方々諸とも帰ってくるのだとか。

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『金百円』て書いてあるけど、今の100円では建たないのだろうなあなんて、当然のことを思いながら来た道を戻り、少し先の空き地で一休み。

コーヒーを飲みながら、大保木の方が用意してくださったゆで卵とりんごを食べて一服。
屋外の行事活動の休憩のおやつにゆで卵が出ることは、わりとある。
でも、タンパク質も取れるし腹持ちするし、一度にたくさん作れるという利点もあるからいいかもしれない。

また道をずんずん進むと、左手に空き家が見えてきました。
東之川は最初に紹介した崖崩れが起きたのを機に最後の一組が出て廃集落となってしまいました。この辺りにある家はもうすべてが空き家です。

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外観はまだ家の形をはっきりと留めていて、中に入れそうな。
そばにはお堂やお墓もありました。

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お墓はけっこう綺麗なものもあるし、花もしっかりしたものが多いから、きっとお参りに来ている人はいるんだろうなあ。

こんな山の中まで来るのは大変だけども、ご先祖様がいるから、と言って、ここまで来ているのだろう。やっぱり来てもらえなくなったらご先祖様だって悲しい。
お墓の管理をするのは物理的にも気持ち的にも大変だよね…。

さらに進むと、瓶ヶ森(かめがもり)登山口が。

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58㎞…ではなく、5.8㎞です。点が見えてなかった。(汗
ここからだと道は険しいそうです。

左手には『ようこそ浩次の山小屋へ』という看板の書かれた家が。

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今は大保木の中奥という地域辺りにお住まいの方が建てた別荘だそうです。
浩次というのは次男の名前らしいですが、ここに来た誰もが気軽に集える場所として機能していたとのこと。
一昔前までは人の出入りもあったようですが、今ではほとんど手付かずな状態に。
畑もそのままです。

薪の積まれたお家も。薪ストーブか薪で沸かすお風呂かに使っていたのではと思われます。

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すぐわきに水の流れを操るハンドルやら機械がありました。
聞くと、この場所で水を兎之山(とのやま)の方まで流しているのだとのこと。

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兎之山は、大保木の中でも街寄りにある地域です。すごいところから水を通してるな。
山へ、もう片方は街へ伸びていく水のパイプを見て驚く。
ふれあいの里の面する山にも、このパイプが通っているという。

さらにいくと、水車がありました。
昔はここでよく子供たちが遊んでいたらしいです。

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至る所に空き家があって、人が住んでいた気配を感じます。

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いよいよ、東之川の名所『おたるの滝』へと向かいます。
おたるの滝は西条市名水・名木の50選に選ばれています。

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細い道を進んでどんどん山の中へ。

広い空間に出ると、目に飛び込んできたのは大きなお家、の柱。

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いつから空き家になったのだろう。

外壁はもう大方ないとはいえ、ここまで雨嵐にも負けず、柱はまだその場所に踏みとどまるようにしてその原型を保っている。

すごい丈夫な柱だ。近づいてみて軽く触ってみたけれど、まだまだしっかりしていた。

これ、一本でも柱が倒れたら…
あっという間に倒壊するのだろう。

そうしてまた足場の悪い中階段を登り進むと…

出ました、おたるの滝。

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あれ、思っていたほど水がない。(率直な感想)
もっと、だあーっと流れてくるのを想像していたけれども、全然違った。
とても穏やかな滝。

滝にしては柔らかい線を描きながら、崖の断面をさらさらと流れています。
雨が降ったら水量は増えるが、基本的には年中だいたいこのくらいの水量なんだとのこと。

横から飛び出してる木が、撮影を妨げますが(どこから撮ろうとしても道のある所からだと限界がある)、まあこれも滝の光景の一つとしましょう。滝の上に神々を祀り、村の人たちにとっては神聖な場所だったようです。


崖に身体を沿うようにして、ほそーい道を通っていったり、途中石段がガタガタ揺れるところがあったり、茂みだらけで足場がなかったりで、杖をつきながらでも歩きにくい箇所が。

あの…一緒に歩いているのは、ほぼ70代、80代です。
…すごい、体力。そしてしっかりした足腰ですな…。

途中、すぐ近くの家を通り過ぎた際、ガイドの方が
「この家の人は、月に半分くらい、片付けに来ている人がいるよ」と。

え、この辺りにまだ人が日常的に出入りしてる家があるの…!?

だって周りはこんなお家ばかり。

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その家はきちんと住める家の形をしていたけれど、(住める家の形…)
人の姿を見ることがあるんだなあと驚いた。しかもけっこうな頻度。
ガイドさんによれば、街からやってきて玄関でラジオを流しながら家の中でごそごそしているのだとのこと。

どんどんどんどん山の中へ行く一行。
あの…道がないようですが…

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道はあるものじゃない、作るものだ、とでもいうのでしょうか。
ざくざくと森林を横切ります。

さらに山奥へ歩みを進めると、『まことのみち』の祭殿が石段の先に見えました。

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まことのみち、というのは古くから伝わる神道の教えを基本とする宗教の一つです。
毎年一回、この辺りで行事があり、何名かはここまで訪れるとのこと。


この辺りの家が建っているところの土台は、だいたい石が積み重ねられてできています。

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平たい石がぎゅっと隙間なく詰まって、がっちりとした土台を作っています。
時代を考えると、きっとこれは全部手作業でできたものだろうなあ。

東之川はまた一段と寒いなと思っていたら、なんと西之川から標高が200mも上がっていました。そりゃあ寒いわ。

散策後、山を下り、私はまたショートカットして西之川まで戻ってきました。

あ、そうそう、西之川と言えば、こちら…

大宮橋です。

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以前は修復工事についてまとめたけれど(以下記事)、橋の写真があんまりなかったので、撮れてよかったです。

今日は寒くともとっても天気に恵まれました。
大保木の人の話を聞きながら、現地を歩いて回れるなんて、こんなありがたい機会はなかなかありません。
すごくいい一日だったなあ。また参加します。

ただのウォーキングっていうより、もはや山登りに近かったような…

西之川には素敵な駐車場もあるので、ぜひ、使ってみてくださいな。
大保木の人が手掛けた文字の置物等々あって、可愛いです。

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以上、今日の大保木でした!
自分の山好きを改めて実感した人より。


広報活動や事業づくりなど、これからの大保木を盛り上げるために使っていきます。