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寝たきりの利用者さまの最後の望みを叶えた話。

半年程前のお話になりますが、民間救急のお仕事において、ある病院のスタッフさまからこんなお問い合わせを頂きました。

「寝たきりの利用者さまが自宅に一時的に帰りたいとのご希望です。利用者さまには、酸素と吸引が必要とされる為に看護師さんを添乗していただき、自宅へ滞在中も付き添って頂きたいのですが対応可能ですか?」

ご希望の日程や時間帯などにも問題が無く、帰宅当日を迎えました。

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当日は土砂降りとまではいかないが結構な雨でした。まだ50代の利用者さまが自宅に帰りたいという思いは何なのだろうか。自宅でホッとしたいのか、などと思いつつ…

ご自宅はそれは大きな旧家。間違いなくこの様や昔の日本家屋は玄関の段差があり、寝たきりの利用者さまをお部屋までお連れするのは資機材を使用しつつ酸素などがあるので頭の中にしっかりとお部屋までお連れする為の段取りを即座に考えなければと思ってました。

自宅へと辿り着き、まず私はエンジンをつけたまま先に降りて自宅のお連れしたい部屋をご家族さまに確認する事にしました。すると驚く事が。

私の予想通り玄関は段差が1m位ある昔からのものでした。しかし奥の方を眺めると大工さんが作った様なしっかりとしたスロープが付いておりました。これならば利用者さまをストレッチャー(簡易ヘッド)から下ろす事なくスロープにてお家へ上がる事が出来る!

この日は私と他の介護士、看護師の3名にて対応していましたので私達介護士がストレッチャーをお部屋まで移動させます。看護師はその間も酸素の量や利用者さまのご様子を観察します。

そこでまた驚きの光景が。障子を開けて奥の部屋に行くと、もう90歳くらいになるご高齢の男性がベッドに横たわっておいででした。

ここでご家族さまより今回の移動サポートの目的を知る事になったのですが、実はこの方は利用者さまのお父さま。余命幾ばくもない為に最後に家族で団欒したいとの事で介護タクシーなどを探して遂に私たち民間救急にたどり着いてくれたご様子でした。

利用者さまとお父さまのベッドを横付けすると親子の会話が。お父さまは耳が遠い様で何かを伝える為に利用者さまは大きな白紙に言葉を書いて色々とお伝えしておいででした。ご自身の容態も決して良くは無い筈なのにこうしてお父さまと会話するご様子には心打たれるものがありました。

こうして無事に家族団欒のひとときを過ごしてまた病院へとお連れした私たち。私達もこの様なシーンに必要とされた事はとてもありがたく、嬉しく思いました。後日談ですが、自宅にて横たわっていたお父さまはこの数日後にお亡くなりになった事をご家族さまより教えて頂く事が出来ました。

お父さまがお亡くなりになった事は事実として辛い事だとは思いましたが、ご家族さまより、

「あの時こうして連れてきてくださり本当に感謝しております。父との大切な時間を過ごす事ができて良かったと〇〇(利用者さま)が言ってました。」

いつもなんですがこの仕事に私達も何か救われた様な気持ちになる事が出来ました。これからも患者さまの移動サポートにより、移動困難な方への外出を応援したいと思います。

その時の記事も公式サイトへ掲載させて頂いております。↓




もしもよろしければ皆さまのサポートを頂けたらとてもありがたいです。