みんなが知らないユダヤネットワーク前編

歴史

「東欧系ユダヤ人はドイツ系ユダヤ人とは著しく異なっていた。中産階級化し、宗教的には改革派ユダヤ教を奉じ、英語を取得して急速なアメリカ化を遂げていたドイツ系ユダヤ人はアッパーイーストサイドやアッパーウェストサイドの優雅なアパートメントに住んだ。これに対して、東欧系はイーディッシュ語を話す正統派のユダヤ教徒で、極めて貧しかった。
両者は風俗習慣も異なり、この時期には別々のコミュニティーを形成した。2つの種類のユダヤ人はそれぞれ『アップタウン・ジュー』、『ダウンタウン・ジュー』と呼ばれるようになった。」
東欧ユダヤ人は、ドイツ系ユダヤ人のような国際的な金融コネクションを持ち合わせていなかったため、ドイツ系ユダヤ人のような投資銀行業界へ進出することができなかった。また、既存の主要産業は古くからワスプに支配されていて、東欧ユダヤ人の参入は非常に困難な状態であった。
結局、東欧ユダヤ人の多くは、当時の経済の本流から外れた周辺的かつ未成熟な産業分野に進出していった。エリート白人が就きたがらない「格下の仕事」とみなされた産業にも積極的に進出していった。
零細な廃品回収業から発展した産業廃棄物処理産業は、1929年に3億ドル産業に成長し、東欧ユダヤ人はこれをほぼ支配した。またクズ鉄産業は5億ドル産業へと成長し、東欧ユダヤ人はその90%を支配した。
 
1934年度のアメリカ国内第3位のメーカー「シーグラム社」(ブロンフマン家所有)をはじめ、大手メーカーの約半分はユダヤ系企業であった。被服産業は、東欧ユダヤ人がこれをほぼ独占した形となった。1930年代には紳士服の85%、婦人服の95%、毛皮製品の95%をユダヤ人企業が生産した。宝石産業については、東欧系ユダヤ人にとり、被服産業に次ぐ重要な産業であった。
●また、家内工業から出発した「軽工業」(家具、靴、化粧品など)にも多くの東欧ユダヤ人が進出した。
家具製造は、ユダヤ人は業界シェアの50%を占めた。靴産業は、第二次世界大戦前の業界シェアの40%を支配した。
●化粧品では、20世紀中頃に全米の三大化粧品メーカーの地位にあった「マックス・ファクター」(1909年設立)、「ヘレナ・ルビンシュタイン」(1928年設立)、「レブロン」(1932年設立)はいずれも東欧ユダヤ移民が設立した企業である。
1946年に誕生した「エスティ・ローダー社」は、現在、全米のデパートにおける化粧品市場の実に45%を掌握し、世界118ヶ国でその製品を販売するグローバル企業である

映画

文学・美術・音楽・演劇などの芸術分野では、古くからそれぞれの民族の伝統があって、国際的な活動・評価がなされる近代以降でも、ユダヤ人がその芸術家として華々しく登場することがあっても、いわばそれぞれの歴史の中途からであった。だが、「映画」という分野は、最初の頃から東欧ユダヤ人の参画をもってスタートした。
初期の映画産業は、貧しく、無学な労働者層を観客とするもので、一般には「低級な娯楽」とみなされていた。そのため、当時、この未成熟産業が大方の予想を裏切って主要産業へと急成長することを予測しえた者は極めて少なかった。


ロシア生まれのユダヤ人ルイス・B・メイヤーは、アメリカに渡ってクズ屋からスタート、ついに最大の映画会社「MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)」を創立した。1927年に、彼の呼びかけで「アカデミー協会」(正式名称=映画芸術科学アカデミー協会)が設立され、1929年にアカデミー賞の授与がスタートした。アカデミー賞のトロフィー(オスカーの黄金像)は「MGM」の美術監督にデザインさせた。


ハンガリー生まれのユダヤ人ウィリアム・フォックスは、ソーダ水とサンドウィッチを売り歩く最底辺から身を起こし、被服製造業者を経て、最終的に「20世紀フォックス」を創立して映画王となった。彼はユダヤ教信仰を強制する父親を憎み、父親の葬儀の席でその棺につばをはいた。


 ポーランド生まれのユダヤ人ベンジャミン・ワーナーは、まずボルティモアで靴の修理屋を始め、馬車に安雑貨を積んで行商した。彼の息子たちが、自分たちの稼ぎをためこみ、映写機を購入、映画上映の行商を開始、最終的に映画会社「ワーナー・ブラザーズ」を創立した。


同じくハンガリー生まれのユダヤ人アドルフ・ズーカーは、わずか40ドルの所持金を手にアメリカへ渡り、毛皮卸売商で儲けた20万ドルを元手に映画製作へ乗り出し、映画会社「パラマウント社」を創立した。


被服製造業者経て、「ユニバーサル映画」を創立したカール・レムリもユダヤ人である。警官の制服を専門とする洋品店の家庭で育ち、「コロンビア映画」を創立したハリー・コーンもユダヤ人である。(父親はドイツ出身、母親はロシア出身のユダヤ移民)。


8大メジャーのうちわずかにひとつ、「RKO」だけが、ずっとあとの1929年にユダヤ人の力を借りずに設立されたものである。


 ジョージ・ワシントン大学の政治学助教授ロバート・リクターが発表した調査結果によれば、1965年から1982年の間に大手映画会社の中で働いていたプロデューサー、ライター、ディレクターの実に62%が「ユダヤ教を宗教とする家庭で、ユダヤ人として育てられた人物」であることが明らかにされている。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』のオーナーであるピーター・カーン
 『ワシントン・ポスト』や『ニューズウィーク』のオーナーであるキャサリン・グラハム。「メディアの女王」と呼ばれている。
アメリカの新聞王ヨセフ・ピュリッツァー
CNNの創設者であるテッド・ターナー
「オラクル社」を創業したラリー・エリソン
「デル社」を創業したマイケル・デル
「コンパック社」を創業したベンジャミン・ローゼン
「インテル社」の創業者アンドリュー・グローブ)
「マイクロソフト社」のスチーブン・バルマー
「ギャップ」を創業したユダヤ人、ドナルド・フィッシャー
リーヴァイ・ストロース。ジーンズを発明し、世界で最初のジーンズ製造会社「リーヴァイス社」を創業した。
ラルフ・ローレン 
「ダンキン・ドーナツ」を創業したウィリアム・ローゼンバーグ
「スターバックス社」を育てたハワード・シュルツ
「バービー人形」の生みの親ルース・ハンドラー

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