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あっけない別れだった/青春物語18

相変わらず二人は黙っていた。
もうすぐ私の家だった。
カーラジオのDJは次の曲は[秋の気配]だと言った。

あれが あなたの好きな場所
港が見下ろせる こだかい公園

こんなことは 今までなかった
ぼくが あなたから離れていく
ぼくが あなたから離れていく
   小田和正 作詞・作曲

曲が終わると彼はカチッとラジオを消した。
「まだいいかな?話があるんだ」
「うん、なに?」
彼は少し先の小さな公園で車を止めた。

「ずっと聞こうと思っていたんだけど…俺たちの関係のこと…」
「関係って?」
「俺のこと、どう思っているの?友達?」
「友達って言うか…今一番信頼できる人だよ」
「知り合って1年になるけど平行線のままだよね」
「1年って言っても月に数回しか会えなかったじゃん。電話もできないし」
「いつも言ってるけど夜勤明けても次の日が休みとは限らないんだ。そしたら市内に帰ってる暇ないし」
「でも電話ぐらいできるでしょ」
「じゃあキミが職場のほうに来てくれればいいのに。最初の頃はよく来てくれただろ」
「だって私もコンピューター化で残業や休日出勤が続いていたんだもん!」
私は少し興奮した声で言った。

「俺、無理したくないんだよ!キミにも無理させたくないし!」
彼も少し声を荒げた。

「じゃあどうすればいいの?電話すらままならないのに。ずっと平行線に決まってるじゃない」
「俺もう曖昧な付き合いはイヤなんだ。友達のつもりならはっきり線引きしたいんだ」
「友達なら付き合えないってこと?恋人じゃないと付き合わないってこと?」
「まぁそう言うことかな…」

長い沈黙のあと、私は言った。
「じゃあいいよ。健太郎先輩のことは友達だと思っているから」
「わかった。俺は友達なんだね?」
「うん」
その言葉を聞いた彼はエンジンをかけた。

私の家を少し通り越して彼は中から助手席のドアに手をやった。
さぁ降りてと言わんばかりに。
「ありがとう。じゃあ…」
「じゃあな」

その夜が最後だった。
あっけない別れだった。
幼い恋だった。


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