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競争の激しい日本の雇用市場でトップエンジニアを採用するには?

東京でエンジニアを採用するのは簡単ではありません。

IT業界の求人倍率は1.5~3倍と言われていますが、この1年間は国境が閉鎖されていたため、企業はオープンポジションを埋めるため、ほぼ全ての採用を国内市場に頼らざるを得ませんでした。

こういった状況から、ITエンジニアの需要は益々高くなっており、いかにして優秀なエンジニアを確保するかが、企業の経営課題となっています。
この問題に答えるために、本日はエリック・ターナー氏をお招きして対談させていただきたいと思います。

エリック・ターナー氏は、最先端IT企業に特化したグローバルIT人材の採用プラットフォーム「Japan Dev」のCEOです。ターナー氏は、日本のユニコーンのひとつであるメルカリでエンジニアマネージャーとして働きながら、Japan Devを運営してきました。自らがエンジニアでありEMとしてエンジニア採用をしてきた経験を活かし、自分と同じようなグローバルエンジニアが日本で働くことをもっと楽しめるようにしたいという思いから、メルカリを退職し、Japan Dev株式会社を設立。フルタイムの起業家となりました。

Japan Devについて

まず初めに、フルタイムの起業家になられたこと、おめでとうございます。
よろしければ、Japan Devのビジョンを教えてていただけますか。

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私が、エンジニアとして働いたことのある国は、実は日本だけです。4社のスタートアップ企業で働きました。キャリアアップのため転職は常に意識しており、最先端のIT企業リサーチは趣味でもありました。しかし、外国人である私に合う、グローバルなマインドを持つ企業をみつけることはとても困難でした。

そういった自分自身の日本での転職経験から、自分と同じようにグローバルなバックグラウンドを持つエンジニアが同じような課題を感じていることに気がつきました。

日本で働きたいけれど、働く環境には妥協したくないという人に、もっと多くの選択肢を与えたい。

日本には想像以上にモダンで働きやすいIT企業があることを、もっとわかりやすく世界中で活躍するエンジニアたちに伝えたい。

これが、私がJapan Devを通じて実現したいと考えていることです。

私はRedditのような掲示板サイトで、日本の労働環境が悲惨であることを嘆く、多くの書き込みを読んだことがあります。そういったSNSでは、「日本のエンジニアは低賃金で残業しなければならないから、日本で働くのは辞めたほうがいい」という声が多いようです。私は嘘をつくつもりはありませんが、この意見は必ずしも正しいとは思いません。一部のSIerや古い考え方の企業で働くエンジニアは、残念ながら今でも、そのいった辛い働き方をしているかもしれません。しかし一方で、ソフトウェア技術を重視し、IT人材に投資するという考えをもつ最先端のIT企業は確実に増えており、日本のIT業界には間違いなく、新しい波が来ていると感じています。

私の使命は、日本にあるソフトウェアを重視する、働きやすいIT企業の存在を世界に向けて発信し続け、日本でポジティブな就業経験を得られる良い選択肢を、できる限り多くのエンジニアに提供することだと考えています。世界で活躍するトップクラスのエンジニアが、日本で働くことを選択肢の一つとして自然に考えられるような環境を生み出すことを目指しています。

素晴らしいですね!では、サイトへの掲載にあたり、企業の審査などされているのでしょうか。

はい、もちろん行っています。ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みや、法定労働時間を遵守しているか、柔軟な働き方が可能かどうか、最低給与などを体系的に企業に尋ねています。私たちは、年収400万円以下の求人は掲載しません。これは、ソフトウェア技術を重視するモダンなIT企業だけで考えた場合、最低賃金の基準となるためです。

このように掲載する企業を厳選することで、Japan Devのユーザーは自社サービスを開発する企業や最新のITコンサルティング企業などモダンなIT企業の情報だけを効率的に得ることができます。そして、求人に応募する前に、その働き方をイメージできるような網羅的なデータを確認することができます。例えば、チームの多様性、技術スタック、年間の休暇日数、働き方やリモート条件など、基本的にグローバルエンジニアが会社を選ぶ際、特に重視する点をわかりやすく可視化しています。

こういった働き方に関する条件は、国籍に関わらず、優秀なエンジニアであれば誰でも重視しますので、サービス自体は特に外国人エンジニアのみをターゲットにしているわけではなく、グローバルなマインドを持つすべてのエンジニア、デザイナー、PM等のIT専門職に向けた情報発信を心がけています。

特に日本には、多様性を尊重するモダンなIT企業に特化した情報を網羅的に紹介するサイトが少ないこともあり、非常に多くの方々にご利用いただいています。現在、多国籍なバックグランドのあるユーザーは約7割以上を占めています。グローバルな環境で働くことを希望する日本人ユーザーも増えてきています。英語での情報発信がメインなこともあり、海外へのリーチもかなり良好ですが、今はまだベストな時期ではありませんね...

企業にとってのメリットは?なぜ、従来の人材紹介会社ではなく、Japan Devが選ばれるのか?

それは会社によりますが、特に小規模なスタートアップ企業にとっては、企業名を知ってもらうため効率的な方法となると思います。また、私はエンジニアマネージャーとしてエンジニアを面接、採用した経験が多くありますので、採用コンサルティングや、優秀なエンジニアを惹きつけるための文章作成などサポートすることができます。

"私たちの一律な手数料の料金体系は、高額な給与を支払う企業の負担とならないよう設定されています。"

Japan Devのもう一つの大きな利点は、料金体系です。日本の人材紹介会社の多くは、候補者の給与水準に比例した仲介料を設定していますが、特にエンジニアの給与の上昇や転職の増加に伴い、この仲介料は企業にとって大変高額なものとなっています。そこで私たちは、採用が決まった時点で、パーセンテージではなく一律の料金を設定することにしました。求人の掲載自体にリスクは一切なく、採用成功時にも高額な料金がかからないため、スタートアップ企業でも利用しやすく、持続可能な方法だと思います。何より、優秀なエンジニアを採用するため、高額な年収を支払う企業の負担となることもありません。

優秀な人材を採用するには:透明性が重要!

さて、本日の本題に入りますが…企業の魅力を高めるために、普段からどのようなことを意識されていますか?

優秀なエンジニア、特に海外のエンジニアにアプローチをする場合。
まだ実践していないのであれば今からでも改善できる5つのポイントがあると思います。

・給与水準
・多様性
・コード品質/技術的挑戦
・柔軟性
・休暇 🌴🏖

しかし、結局のところ、最初から最後までの採用プロセスで最も重要な要素は「透明性」だと思います。例えば、面接の流れを詳細に説明することはとても重要です。応募者に実際働いている社員と話してもらい、職場環境を体験してもらうのも良いと思います。自社のスタックや技術的な課題についても明確にしておきましょう。要するに、会社で起こっていることをすべてオープンにすればするほど、優秀なエンジニアを採用できる可能性が高くなります。

"トップエンジニアに必要以上の手間をかけさせない"

また、具体的にどのような行動をとれば、他社と差をつけることができるのかを考えてみましょう。

 ・オープンソース:ライブラリやgemを提供する企業であることは非常に重要です。

クックパッドがその良い例です。彼らが最初のオープンソースコードを公開したとき、誰もがクックパッドで働きたいと思いました。

採用プロセスを柔軟にする:基本的には、候補者に合わせてプロセスを調整する必要があります。持ち帰りのプロジェクトは、ジュニアレベルの人にはいいかもしれませんが、業界で超売り手市場のシニアエンジニアは課題に8時間も費やしたくないと思っていることが多いです。

テックブログ :オープンソースと同様に、技術への関心の高さを示しています。また、どのようなプロジェクトに携わることになるのかを具体的に示すことで、候補者に安心感を与えることができます。

今ではほとんどの企業が、かなり詳細な「採用」ページを用意していると聞きますが、その点はどのようにお考えでしょうか。

とても良い試みだと思います!しかし採用ページは日本語がメインであったり、PRも日本人向けであることが多く、多国籍エンジニアにはその企業が本当に自分に合うか、働きやすいのか判断しづらいことが多々あります。
そういった課題を解決し、本当に働きやすい、モダンなIT企業を見つけるきっかけを提供することがJapan Devの使命だと考えています。

それではここで、グローバルIT人材にアピールするために企業側ができる簡単な改善点をいくつか挙げてみましょう。

例えば、年間休暇を10日から15日に変更するだけでも、大きな違いがありますし、企業のコストもそれほどかかりません。また、労働時間については、企業が自らイメージを落としている可能性があります。例えば、フレックス制度を提唱しているにも関わらず、求人に記載している勤務時間は10時から午後7時までとなっているとします。すると、ほとんどの応募者はこの「午後7時」に目がいってしまい、柔軟性がない勤務体系であるという印象が強くなり、ネガティブなイメージを持ってしまいます。その結果、多くの優秀なエンジニアを遠ざけてしまうことに繋がります。

"最初から最後までの採用プロセスで最も重要な要素は「透明性」"

多くの企業が、手っ取り早く、不透明な採用活動を行っています。
多くの求人や採用ページには給与や働き方についての十分な説明がなく、要件のみ書かれています。これはまさに、優秀なエンジニアが集まりにくい求人のいい例です。未来の社員を大切にするなら、彼らを尊重し、あなたの会社で働くことの意味を明確に描くことに時間をかけるべきです。Japan Devの強みの一つは、企業のビジョンや働き方をわかりやすく可視化し、その企業で働きたいと思えるようなきっかけをより多くの優秀なエンジニアに与えることです。

恐らくこれらを公言するのは得策ではないかもしれませんが...社員のリファラル制度に対するスタンスはどうでしょうか。

私はジョブボードを運営していますが、その私でさえ、リファラル採用はベストな方法であることを認めざるを得ません。その理由はいくつかありますが、まず第一に、採用企業が企業として職場環境について語るよりも、現場の社員の声のほうがより「本物」に聞こえるでしょう。第二に、たとえ社員に紹介料を支払ったとしても、人材紹介会社が請求する金額よりも安いということです。最後に、お金をかけて社員を大切にすることで、その社員が口コミで良い評判を広げ、結果的に採用費を節約できるという「好循環」を生み出す効果があります。

Japan Devでは、この社員によるリファラル制度にできるだけ近づけるようにしています。企業が紹介手数料を支払う金額に近い、手頃な定額料金を設定しています。そうすることで、企業は、継続的に採用活動を続けることができると考えています。

日本の状況日本のテック業界の魅力とは?

世界のITデスティネーションマップの中で、日本企業はどのような存在を目指せばよいでしょうか。 

私の目標は、日本を世界一のテック大国することです。しかし、それはまだ実現されていません。優秀な人材を集めるという点では、世界で戦える企業の数はまだ少ないと思います。そうは言っても、私は楽観的に捉えています。ベンチャー企業の資金調達額は急速に増加しており、世界的に競争力のあるハイテク企業が続々と登場しています。私が勤めていたメルカリはその代表的な例です。メルカリは、「モダンでグローバル」なやり方で大成功を収めることが可能であることを示し、今では多くの企業がこのモデルを採用しています。

"目標は日本を世界一のソフトウェア大国にすること"

日本がアメリカなどに比べて優秀なIT人材が集まりにくい理由の一つは、給与水準がまだ低いことだと考えています。私はこれまで、Japan Devやブログを通じて、グローバル水準の給与を支払っている素晴らしい企業があることを紹介してきました。Open Salaryのように、この問題を解決しようとする新しい取り組みも増えてきています。また、グローバル基準の給与体系があり、世界トップクラスのエンジニアを採用するIT企業も増えてきています。しかし、全体的なエンジニアの年収はまだまだ上昇の余地があると考えています。

日本はアメリカなどに比べて、IT企業の数が少ないと思いますが、逆に言うと日本のIT業界自体に大きな成長の余地があると考えています。グローバル人材が活躍しやすいモダンなIT企業が、メルカリのように「モダンでグローバル」な方法で成功するような事例が増えれば、エンジニアの年収も自然と上昇してくと信じています。そうすれば、世界的に活躍する優秀なエンジニアが日本で働く機会が増え、日本企業の世界的競争力が高まり、グローバル市場でも成功を収めることができる、そんな好循環ができれば良いと願っています。

世界的なパンデミックや国境の閉鎖は言うまでもなく悪い影響がありますね...。

そうですね。しかし、現在すでに日本にいる人にとっては、とてもラッキーだと思います。日本にいるエンジニアは「今」とても選択の幅が増えています。今までは多くの企業が海外から人材を呼び込もうとしていましたが、それが当面できなくなったことで、日本在住エンジニアにとっての国内転職市場はコロナ禍以前よりもさらに有利になったと言えるでしょう。現在、エンジニアとして働いていて、より良い環境で、新たな挑戦をしたいと考えている人は、今がチャンスだと思います!

エリックさん、貴重なお時間とご意見をありがとうございました。
そしてJapan Devでのますますの活躍、楽しみにしています!

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