biniyaminit (Mika Levy-Yamamori / 山森みか)
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シモン・ペレスの葬儀雑感(2016年9月30日記)
イスラエルの元首相、元大統領、ノーベル平和賞受賞者であるシモン・ペレスが93歳で亡くなり、今日(2016年9月30日)エルサレムで葬儀が行われた。米国からはオバマ現大統領、クリントン(夫)など、英国はチャールズ皇太子、パレスチナからアッバス議長、フランスのオランド大統領など各国首脳が参列。一方でハマスはペレスの死を喜び、イスラエルに対する攻撃を呼び掛けているためもあって、エルサレムは今なお厳戒体制
もっとみる距離感について(2015年9月1日記)
先日(つまり2015年の夏)は、スペインだかの音楽祭に、アメリカのユダヤ人の歌手が、パレスチナ国家設立を支持していないという理由で出演を断られていた。そういうことはアカデミズムの世界でもよくあって、欧州ではイスラエル人研究者の国際学会ボイコットが叫ばれることがよくある。アカデミズムと政治を混同するのは、気持ちは分かるが、少なくともアカデミズムにとっての結果は不毛だと思うが、それは置いておいても、そ
もっとみるシュロモ―・サンド『ユダヤ人の起源』書評への自己コメント(2015年9月14日記)
以前書いたサンドの書評を読み直して、感じたことをだらだらと。
最も幸福な書評の書き方は、自分が読んで感銘を受けた本を紹介するものだろう。あんまり絶賛調だと提灯持ちみたいに受け取られかねないし、少しは批判点あるいは将来への期待を交えると、評者がよりインテリっぽく見えるから、なおよし、みたいな。いわゆる、ホメつつケナし、ケナしつつホメる、というテクニック。さらにこじらせると、インテリっぽく見せるのも
過去メモ「ラビン暗殺20年」(2015年10月25日記)
イツハク・ラビンがテルアビブでの平和大会出席直後、極右ユダヤ青年に暗殺されて、20年が経つ。西暦では1995年11月4日だが、ユダヤ暦では今年は今日に当たる。
もうそんなことを言っても若い人たちは記憶にないのだろうけれど、1993年のオスロ合意後、イスラエルの人々は本当に希望に溢れていた。だれもが平和の夢を見ていた。1995年のラビン暗殺はショックだったけれど、2000年の第二次インティファーダ
「ユダヤ人」をめぐる議論と相対化の試み ――いまイスラエルで語られていること
山森みか
初出『福音と世界』2017年11月号
イスラエル国のいま
私がイスラエル(以下イスラエルとは現在のイスラエル国を指す)に住み始めてから約二五年経つが、その間にイスラエルと日本の関係は大きく変化した。イスラエルの若者にとってバブル期の日本はお金を稼ぎに行く場所であり、安全で豊かな国であった。しかし二〇一四年の日本の一人当たり名目国内総生産(GDP)は経済協力開発機構(OECD)に加
『ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか』シュロモー・サンド(高橋武智=監訳、佐々木康之・木村高子=訳、浩気社、二〇一〇年)
評者:山森みか
初出『福音と世界』2011年4月号、新教出版社
本書の原著はヘブライ語で、2008年に出版されるや19週に亘ってイスラエルのベストセラーリストに名を連ねた。著者サンドはテルアビブ大学教授、専門は現代ヨーロッパ史、特にフランス思想史である。だがここでは古代史から遺伝学にまで至るまで様々な分野の文献が引用され、ネイションとしてのユダヤ人がいかに創作されてきたかが述べられる。
ま
政党メレツの思い出
イスラエルの政党メレツが最低得票率に達しないらしいことが明らかになった日に
2015年12月5日<記>
今年は冬になってもなかなか気温が10度以下には下がらなかったが、今年初めて冷え込んで、うちでもストーブを点けた昨夜遅く、前のメレツ党首、イスラエル政治の良心であったヨッシー・サリッドが、心臓発作で亡くなった。75歳。先週も元気でラジオ番組で語っていたのに。
http://www.haaretz
イスラエルのドラマ「Fauda」を見た(2)
「Fauda」とはアラビア語で「混乱」の意味で、ネットフリックスで配信されているイスラエルが制作したドラマである。私は2018年にシーズン2までの感想を書いたが、今はシーズン4の撮影が行われているらしい。物語は、イスラエルの特殊部隊でアラビア語を話すチームがパレスチナに潜入し、そこで知り合った人々と様々な関係を結ぶというものである。
それまでは「敵」としか認識していなかった人々も自分たちと同じ
イスラエル・ワクチン接種プロジェクト(2)
私個人としては1月1日の朝始まった新型コロナワクチン接種プロジェクト、ちょうど3週間後の1月22日、2度目の接種に行き、無事プロジェクトが完了。
前回予約したナザレのクリニックは家からちょっと遠いので、どうしようと思ってネット予約を見てみたら、システムはサクサク動き、ずいぶんたくさんの箇所で予約ができるようになっている。それで家から比較的近いクリニックに予約を変更。
もう対象者は60歳以上だけ
イスラエル・ワクチン接種プロジェクト(1)
昨年(2020年)12月19日の安息日明けに、ネタニヤフ首相とその配下(?)のエデルシュタイン保健相がファイザー社から買い付けたワクチン接種第一、第二号になるのを生中継で見た。ネタニヤフに注射したのは病院長だかの男性で、保健相は女性看護師。そういうところでさえ「ボスは俺」感を出していくネタニヤフなのであった。
その翌日から、まずは医療関係者、そして60歳以上、慢性的な疾患があるリスクグループへの
イスラエルのリアリティ・ショウ番組(その1)
イスラエルのテレビ番組にシェフ・ゲームというのがある。今季見始めたのは、旧知のレナン・ブルーメンライヒ・古俣氏(父イスラエル人、母日本人)がオーディションに合格して参加者となったので見始めた。しかし見ているうちに、この番組はイスラエル社会における行動規範を実によく映し出していると思うようになった。そのいくつかをメモしておきたい。
1)チーム戦と個人戦
これは数千名の応募者(素人とプロが混在)がま
古代イスラエルにおけるレビびと像「結語」
なんだか「はじめに」だけ公開するのも…というナゾの何かに駆られたので「結語」も公開。これはシャープのワープロ「書院」で書いていたから、テキスト原稿が残っておらず、OCRにかけました。註の叙述とか、今読むと時代を感じるなあ。
『古代イスラエルにおけるレビびと像』ICU比較文化叢書3、山森みか、1996年。
Copyright ©1996 Mika Levy-Yamamori 1996
結語 レビ
古代イスラエルにおけるレビびと像「はじめに」
最近報道されている日本における一連の令和への移行への行事を見ていて、自分がずっと抱いてきた関心を改めて明確にしておいたほうがいいという気がしたので、今さらですが私の博士論文の「はじめに」をここに公開しておきます。
はじめに
本書は、1995年3月国際基督教大学大学院比較文化研究科に提出した博士論文、「古代イスラエルにおけるレビびと像」の全文である。この論文により、 筆者は同年6月に博士(学術)
Netta@Eurovision2018
毎年欧州を中心に根強い人気を集めているユーロビジョンというけっこうローカルな歌のコンテスト、優勝国が持ち回りでホストになるのだが、今年はリスボンで行われ、前評判通りイスラエルのネッタ・バルジライが歌う”Toy"が優勝した。
国ごとに代表を送り込むという素朴なナショナリズム高揚番組というのはそのとおりなのだが、国柄というか今げんざいのその国の文化背景がうかがい知れるので、けっこうおもしろい。かのひろ
靴の器@ネタニヤフ首相官邸
この連休中に中東を駆け足で訪問した安倍首相夫妻との夕食会で、イスラエルのネタニヤフ首相官邸で供された靴の器が、イスラエルのSNSやメディアで炎上している。あまり日本人の生の声が聞こえてこないようなので、私の雑感を記しておきたい。
靴を、しかも畳の上に置いた靴を、日本からの重要なゲストとの夕食のテーブルに器として供するというのは、まあだれが見てもリスキーというか、悪趣味と取る人が出てくるのは確実だ
イスラエルのドラマ「Fauda」を見た
最近シーズン2のテレビ放映がが終わったイスラエルのドラマ「Fauda」について、多くの人が周囲で見ているし、メモしておきたい。私がこのドラマを遅ればせながら見始めたのは、昨年(2017年)大晦日に二期の放映が始まった後、それまではアラビア語を聞くと身構えていたイスラエルのフツウのティーンエージャーが、このドラマのおかげでアラビア語はかっこいいと思い始めたというウワサを聞いたからだ。実際このドラマで
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